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ドラリア9~黒髪ロングな彼女~

図書室にいるのはあくまでも消去法の結果だ。教室は五時には閉まるし、そもそも一人でいる所に誰かが入ってくるとそこそこ気まずい。家に帰っても特にやることはない。で、残ったのは図書室というわけだ。しかし好きな場所はどこですか?と聞かれると間違いなく図書室と言うだろうから本当は図書室が好きなのかもしれない。学校で最も通いづらい別棟の四階の隅に建てられているのも使用者数が減るのでありがたい。一番奥のテーブルの窓際の席が好きだ。風が心地良い。上から点くらいの大きさの人間を見るのも好きだ。自分と一切関係が無い人を遠くから眺めていると気が楽になる。そして図書室ではお静かにだ。ここにいると基本話掛けられない。今こちらに近づいてくる女以外は。

「玲奈ちゃーん。」

荒木は塩山の隣に座る。

「チッ」

わざとらしく嫌悪感を出してみる。荒木は小さく跳ね上がるが笑顔を作り直す。

「何で舌打ち?」

「いや、チーッスが訛っただけです」

これもまたわかりやすく嘘をついてみる。

「あぁ、そうなんだー。だよねぇー」

いや、私がチーッスとか言うと思っているのだろうか。

「で?何ですか?長話なら室外でに出てお願いします」

「いや、室外というか、校外かな?あれ?でも校内なのかな?」

どこ?おそらく校門より外で学校の所有地。結愛の抽象的な下手くそな説明では要領を得ない。ただわかることは一つある。

「...の?」

「え?」

聞こえなかったのか動揺しているのか。おそらく後者だ。私は念のためもう一度言う。

「誰の差し金なの?」






冷静沈着。思慮深い。寡黙。清楚。そこからは乱雑な字に変わっていた。

「例え上記の条件を満たしていても黒髪ロングの美少女てをなければならない。なるほどねー。もしも性格を矯正された用に慌てて付け足したか。てゆうか荒木と真逆過ぎるだろー」

とは言え丁寧に書かれている所は荒木がくるより前に記入したはずだ。ではなぜこう書いたのか?理由はいくつか思い当たる。自分の長所を書き上げたか。単に隣にいて鬱陶しくない人を想像して書いたか。あるいは...いや、さすがに好きなタイプをそのまま書く程あいつの心は真っ直ぐではない。しかし元気旺盛、短絡的で落ち着きのないショートヘアーの結愛ちゃんには何と声を掛ければいいのやら?そんなどうしようも無さそうな事に特に面白い考えも浮かばないままと向こうから荒木とおそらく人見知りの少女がやってくる。左手に本を持ち右手を荒木に引っ張られて、眼鏡を掛けていて...。

「黒髪ロングの美少女だ」

もちろん本人に聞こえない距離だから言うのだ。まぁ心は全く込めてはいないが。うん、、とっても面白嫌な予感。

「糸田さん。連れて来ました。紹介します。玲奈ちゃんです!」

玲奈...。塩山玲奈四十谷と同じクラスで趣味は読書。

「塩山玲奈さんでいいのかな?」

「何で私の苗字知っているんですか?」

何かどっかで聞いたことあるセリフだな。

「ああ、すまない下の名前で呼んで欲しいタイプかな?」

「チッ」

舌打ち?今、間違いなく舌打ちしたね?俺、人と話す耐性付いてないのにいきなり高等技術使われちゃったよ。

「すみません。玲奈ちゃん人と話すの苦手でチーッスが訛っちゃってー」

荒木がとてつもなく見苦しいフォローを入れる。

いや、訛るわけないだろ?仮にそうだとしてチーッスの方が場面的には絶対おかしいだろ?

「いや、苗字知ってたのは結愛ちゃんから聞いたんだよ」

ここで結愛ちゃんと強引に言っておいて何とか下の名前で呼ぶチャラチャラした奴だと認識させたいところだ。

「うん、そーなんだよ!」

いや違うけどな。このきっぱりとした荒木の物言いは間違い無く苗字を教えたと錯覚している。

「そうですか。それならいいんです。人の個人情報を嗅ぎ回る変態かと思ってしまいすみません」

いや、悪く言うとその通りだからその発言に関して謝って欲しい。

「そんなわけないからいいけどさ。で、話は聞いた?」

「はい。大体は」

少し目線が上なのが気になるがそれなら話は早い。

「で、入部してくれるのかな?」

その言葉に塩山は間髪を開けずに答える。

「条件があります」

嫌な予感がする。雰囲気が四十谷に似ているのは気のせいか?

「ま、まさか三つあるのか?」

「いえ、一つだけです」

その言葉に少し安心する。どこかのあいつよりは常識があるらしい。

「で、何だろ?」

まさか四十谷と同じ事を言うのか?

「あまりバカをいじめないで下さい」

と、塩山は静かにしかし鋭く言い放つ。

「え?あーまぁ善処する」

糸田は少し拍子抜けした。

「ではよろしくお願いします」

糸田が了承すると塩山は声のトーンを戻した。

「じゃあ、結愛ちゃん。部室に案内してあげて」

「え?糸田さんは?」

「俺は今日はもう帰るから皆によろしく」

ここで部室に戻ると塩山には入部資格がないとか四十谷に言われそうだ。俺がいないと文句を言うはけ口が無くなって案外すんなり事が進むだろう。

「でさー玲奈ちゃん。バカって誰のこと?」

「あなたが知る必要はありません」

そう言いながら二人は部室へと向かった。

塩山玲奈か。四十谷のアンケート結果に似ている気もする。少なくとも荒木よりは。それにしても

「伊達メガネ?」

そんなおしゃれさんには見えなかったが。

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