ドラリア20~身勝手な自己投影~
突然ですが。ジャンルとは何でしょう?例えばこの小説。ラブコメに分類させていますがそんな気は微塵も感じません。僕の書こうと思う小説はどうしてもジャンル分けに迷います。なぜならそのジャンルに収める気が無いからです。ジャンル分けて小説なんて書くと内容なんてそりゃー被りますよ。なら何なのか?コメディと言えばしっくり来るのでしょうがそこにも収めたくない。回答は有りません。もしかしたらこの後ラブコメになるかもしれない。一つ言えるのは僕はラブコメが好きな人に面白いと思って貰える様に書こうとしているということです。
この前書きに納得出来る方は是非読んで下さい。お願いします。
「ごめん、駄目だったよ、あんなに格好付けたのにね」
がっくり肩を落とした久山はため息をついた。
「いや、いやランナー進めたし久山君はきっちり仕事をしてくれたよ」
清水が慌ててフォローを入れる。
「そうだなあ、清水は次三振したら全打席でだぞ」
「匠君さー、それは言わないお約束でしょー」
清水は弱々しい声を上げる。
「泥臭くてもいいから当てていけ」
「出来たらやってるさー」
「何だお前。泥臭い佐伯を馬鹿にしてんのか」
「おい、ちょっと待て」
テンポの良く言葉が飛び交う。
「いいよ。泥臭いなんてよく分からないけど塁に出て見せるよ」
-3分後-
「清水やりやがったなあ」
「あー、そうだな」
「まさかなあー」
「さすがに読めなかったー」
振り逃げとは
「あれは清水先輩の取り巻きが見たらショックなんじゃないですか?」
テニス部の部室からカバンを取って来たばかりの四十谷は何となく思った事を口にした。
「いや、恐らくヘッドスライディングの写真は高値で取り引きされるぞ」
不意を突かれたので珍しく素で笑っているのかと思ったがカメラを構えてきっちりフレームに写真を収めていたのでそうではないらしい。
「へぇー」
四十谷は相づちを打ちながら嫌悪感を隠す気もなく露にする。
「お前清水の経済効果分かって無いだろ。個別に売るもよし。一年生から三年生まで撮り貯めて清水アルバムを作るもよし。そこに石川のイラストを加えたら」
「あー、もういいです。突っ込んですみませんでし....」
ふと、目線を変えるとそこで後ろ側のベンチの隅に溶け込むように座り込んでいる者が一人いる。
「何やってんの....塩山」
「......」
「まさか緊張してんの?」
「だって、明らかに重要な局面だから」
「だから?」
「....たくない」
塩山はうつむいたまま小さく口を動かした。
「間違えたくない」
もう一度、今度はこっちを向いてはっきり言った。
「やっぱり似てないな」
四十谷は落ちていたバットを拾い上げた。
「僕は人に迷惑を掛けられたくなくて距離をとった。そして糸田に出会うまで何の気兼ねも無くに快適に過ごしていた。だがお前は違う」
「違わない」
塩山は今までの発言を否定してまで否定した。
「お前は迷惑を掛けたく無くて距離をとった。そして気楽をどこか悲しんでいた。違うか?」
「違っ」
四十谷は何も言わずに塩山にバットを突き付けた。
「お前に誰も期待何かしてない。それくらいでバットぶん回してろよ。そうでないと当たるもんも当たんねーよ初心者さん」
塩山はため息を一つついて雑にバットを奪った。
「少し経験があるからって調子に乗らないでくれます?今度ピアノ演奏見せびらかしますよ」
塩山がいつもの調子に戻った。それを見て四十谷もまた、いつもの調子を取り戻した。
「へー、それは楽しみですね」
さすがにピアノが弾ける事は黙っておこう。
「話は終わったか」
ふと振り返ると糸田が後ろで顔を覗かせていた。
「盗み聞きとはあなたらしいですね」
塩山はそっぽを向いて糸田の前を通り過ぎる。
「いや、待った待った。やる気満々の所悪いんだけど」
糸田は両手で丁寧に優しくバットを奪い取る。
「代打のお知らせでーす」
「「は?」」




