ドラリア2~ドライな少年~
こんにちは!
今回は主人公登場!という所です。
まぁ!を付ける程のインパクトのある登場ではありませんが...。
主人公は四十谷と書いてアイタ二とややこしい苗字ですがご容赦下さい。自分の中で四十谷は何でも出来るのに何も上手くいかないやつにしていくつもりです。
ジャンルは恋愛に分類させていますがしばらくはコメディ色強めの提供でお送りさせて頂きます。
朝4時半。いつもの時間に目を覚ます。僕の名前は四十谷文理。今日から高校生だ。
とは言っても別に高校に何か期待しているわけではない。そもそも自分が首席な時点で高校選びを失敗したと言ってもいいだろう。医者の父と作家の母を持つ僕は両親から文理両道になって欲しいという謎の四字熟語により文理という名を付けられその名前のせいでという訳ではないが中学の時猛勉強をして名前にある程度は、ふさわしい学力を手にした。
寒総第一高校は県内でも有数の進学校と聞いていたの。しかし、自分が首席とはたかが知れている。面倒な挨拶を避ける為に入試問題をわざわざ一問間違えたというのに。
まだ日は昇っておらず小鳥の囀りのみが微かに聞こえてくる。文理は、ノートパソコンを机の上で起動させ原稿用紙を広げる。
中学二年の冬頃だったろうか。突然母が、家を出て行った。昔から不可解な行動が目立つ母だったがこれは計算高い父も予測出来ていなかったようで狼狽していたのを覚えている。
机の上に手紙があった。
(見聞を広める為に旅に出ます。ご飯は母さんの本棚にあるレシピ本あげるから父さんの分も作ってあげなさい。後、私の長編小説まだ途中だから盛り上げながらも完結させないように粘って下さい。あなたなら出来るはずです。)
といったものだった。常識が欠如していると言われても仕方ない母親だ。しかしこの母親に育てられている僕もまた、非常識なのだろう。手紙を呼んで一旦は頭を抱えたが、次の日にはすんなり現実を受け入れた。以来、この時間に起きて母の作風で小説を書き、二人分の食事を作っている。
一時間近くかけて小説を書き進めた。時刻は5時半を回っていた。文理は二階の自分の部屋から一階のリビングに向かい朝食の支度を始めるすでに父は起床済みで患者のカルテを真剣に見つめてている。
レシピを見ずに朝食を作っていく。元々飽き性な性格もありわざわざ自分で母親の味を再現する気など毛頭ないのだ。さらに言えば父も僕も栄養バランスさえ良ければ文句は言わない。
出来た朝食を父と無言で食べた後に改めて弁当作りを始める。それが終わると母の棚にある大量の本を読み漁る。日によっては父の棚にある大量の医学書や論文を読むこともある。そしてなんだかんだで時刻は七時前になる。
僕はテレビを付ける。朝のニュース番組のオマケコーナーの占いをみるためだ。なぜそんなものをみるかというと。占いの作成者が母でこの占いで自分にメッセージを送ってくるのである。つまり母は、息子への伝達手段にテレビを経由させるとんでもない人なのだ。なぜ電話をしないかと言うと、母は携帯や財布などほとんど何も持たず家を出たのだ。一度だけ公衆電話から掛けてきたのだがその時父が公衆電話を逆探知して大学の同僚に呼び掛け母を捜索する事態になったからである。つまり父もとんでもない人なのだ。
ともかくその一度きりの電話で、母は自分が作っている占いを欠かさず見ろと言ったのであった。それからというもの四十谷は仕方なくテレビのスイッチを入れるのだった。
耳障りな音楽が流れ占いが始まった。文理は着替えながらもテレビに目を向ける。
「今日最も良い運勢なのは天秤座のあなた。新しい出会いに恵まれるでしょう。ラッキーアイテムはピンクのマフラーです」
「は?」
僕はテレビの向こう側で母のメッセージを伝えたアナウンサーに理不尽にもそう言った。
今日は、入学式で季節は言わずとも春にも関わらずしかも僕が付けるはずもないピンクのマフラー。流石に理解不能だった。
無視してやろうかとも思ったが、万が一ピンクのマフラーがあればと思わされるのが一番悔しいものだ。
僕は、母の部屋のドアを開けた。母の部屋は、僕が、荒らしたところ以外、母が出た日のままになっている。僕が、持ってないとなると大抵の場合、母の指定するラッキーアイテムは彼女の部屋の中にあるのだ。あの人は何かにつけて刺激が足りないとか想像力をかきたてないととかで、世界各地のアレコレを集め、世界観の滅茶苦茶な部屋が完成していた。僕はモアイ像のレプリカに巻かれていたピンクのマフラーを剥ぎ取り、部屋を後にした。
カバンを担ぎ玄関で靴を履くために座り込む。外から冷たい空気が流れてくる。今日は案外寒いのかもしれない。しかし靴紐を固く結び文理は誓うのだった。
絶対に使わずに帰って心の中で母に文句を言ってやろう...と。




