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チートも無双もないけれど。魔界で死なないためのn個の方法  作者: ナカネグロ
第1部:新生活応援フェアってないの?
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方法13-2:粘液とワタシ(実験には協力しましょう)

 ワタシとベルトラさんが質問を繰り返し、出てきた答えをあれこれ推測して、お互いの知識も足していく。

 ようやく正解らしきものにたどり着く頃には、知力を振り絞りすぎて二人ともぐったりしていた。


 どうやらワタシの魂からは、通常だとありえないくらいケタ外れのエネルギーを引き出すことができるらしい。それこそミュルス=オルガン全体のエネルギーを余裕で何百年もまかなえるくらいの。


 そんな規格外の魂をラズロフのツノが本当に隠しきれるのか? 性能限界超えて何かが漏れてるんじゃないか? ギアの会のメンバーはその何かに魅了されてるんじゃないか?


 実際、ギアの会のメンバーは全員、魂を察知する能力、“魂の感受性”が飛び抜けて高いことが判っているという。

 偶然とは思えない。やはりツノは魂を隠しきれていないのかもしれない……。

 そこで今回、わりと無害かつ魔獣の中ではトップクラスに魂の感受性が高く、猫にとってのマタタビみたいに魂を好むサンビナで検証実験をしてみることになった。


 もろもろ省略して、超要約するとそんなところ。実際にはこの数倍の情報量があった。

 うーん。確かにこれ、ヘゲちゃんじゃなくてもアドリブで解りやすく整理して話すのは難しい。


 異世界転生モノでチートなスキルとかスペック、アイテムを持ってるなんて話はあるけど、まさか自分自身がチートアイテムとか。

 おまけにこのチートアイテム、自分じゃ使えないし悪魔が使うにはワタシが死なないとだし、今の環境で使えば重犯罪者として処分されるシロモノ。アイテム情報っぽくするとこんな感じ。


------

アイテム名:アガネアの魂

装備可能クラス:全悪魔

入手条件:殺してでも奪い取る

効果:能力に10n乗の補正(n>=10)。入手時ならびに利用時に悪魔の警察と天使からなる大軍団と強制戦闘イベント発生


“魂が禁じられた魔界でこれを入手するリスクは理解していたつもりだった。しかし、充分ではなかったらしい。見よ、空を埋めつくす天使の大軍を。先導を務める悪魔の警官隊は目前に迫っている。”

------


 ……まったく役に立たない。これがソシャゲのZレアなら運営は詫び石を配るべき事案だ。


 ツノつけてるのに正体バレするかもしれないってのも不安だ。まだそうと決まったわけじゃないけど、だからなおさら怖い。


 でも、知らない方が幸せだったとは思わない。ヘゲちゃんやアシェトがワタシのことをあれこれ考えて、対応しようとしてくれてることが解るし、何を考えてるのか見えないよりはずっとスッキリする。

 それにこんなヤバい話なら、先に知って心の準備ができてた方がいい。


「そろそろ行きましょ。ああ、洞窟の中は滑りやすくなってるハズだから、くれぐれもアガネアは転んで頭打ったりしないようにね。あと、絶対にサンビナを傷つけないでちょうだい。私とベルトラは襲われても平気だけど、数が多いからあなたまで守りきれるとは限らないから」


 ワタシたちはヘゲちゃんを先頭にたいまつ代わりの輝く魔石を持って洞窟を進んでいった。奥へ行くにつれて、悪臭が強くなる。

 そして、狭い道の先のひらけた空間にサンビナの群れがいた。

 どれくらい居るんだろ。奥の方は暗くなってて見えないけど、100は超えるんじゃないか。


 サンビナは話のとおり、手足の細長い小熊みたいな体にカエルとよく似た顔をしていた。そのサンビナたちが一斉にこちらを見ると──。


「うわっ!?」


いきなり一匹がワタシの脚にしがみついた。続いて二匹目、三匹目。たちまちバランスを崩して尻もちをつく。


「くあっ!」


尾てい骨打った。そうしてる間もしがみついてくるサンビナの数はどんどん増え、すぐにワタシは埋もれてしまった。


 おまけにサンビナたちは長い舌でワタシのことをベロベロ舐めまわす。ベトベトしたヨダレが手を、脚を、顔を、ひゃんっ、そんなとこまで!? とにかくあっという間に全身ネトネトにされてしまった。ヘゲちゃんの言ってたヒドい目ってのはこのことか。


 というか、重っ。これ、ちょ、マズい。なんか骨がミシミシ言ってないか!? 動けな、圧死するイタタタタタ。


「ヘゲさん! 本当にもうどうにかしないと潰れて死にます! 検証は充分でしょう。あたしにも棒を」


 ベルトラさんの焦った声。


 カンカンカカンカンカンカカッカッ。


 硬い木の棒を打ち鳴らす、高い音が響いた。かなり大きい音だ。微妙にいい感じでリズム刻んでるのがイラッとくる。

 と、少しだけ重さが減った。こうかはばつぐんだ! 見えないけどサンビナたちの逃げていく気配。けど……。


 バカな! 耐えてる、だと? よっぽど音が不快なのか、全身をブルブル震わせながら、それでもワタシから離れようとしないサンビナたち。

 なんかヨダレとは明らかに違う、熱い液体がじんわりとしみてきたんだけど、これ、ワタシのじゃないよね? ──げぇっ! こいつら失禁してる!? いやワタシそんなのしたことないけどね!?


 どんだけねばるんだよ。


 うーあー、もうサイアク。もーイヤだ。おまけにこのニオイ。あ、なんか意識が遠く……。

次回、方法13-3:粘液とワタシ(実験には協力しましょう)

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