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チートも無双もないけれど。魔界で死なないためのn個の方法  作者: ナカネグロ
第1部:新生活応援フェアってないの?
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方法7-3︰むしろ囲まれる会(設定資料集を読まないなんて、とんでもない)

 さすが何千年も人間を誘惑してきただけのことはあって、悪魔たちはコミュ力が高かった。

 途中からエイモスにさえ好印象を持ったくらいだ。

 なんせ話しながらこっちのリアクションやちょっとした表情、仕草なんかを見て、リアルタイムでどんどんワタシの好みに寄せてくるんだもん。

 ワタシみたいなただの人間はイチコロですよ。ええ。


 悪魔たちからしてもワタシは妙に好印象を抱かせやすいかったみたいで、ヴァシリオスが

「アガネア様は外見だけでなく、どこか人間めいたところがありますな。こりゃ我々が惹きつけられるわけです」

とか言いだしたときはさすがに焦った。


 そんなこんなでワタシはなかなかいい気分になれた。これいいよ。気に入った。定期的にやってほしい。

 やっぱチヤホヤされるのは想像してたとおり最高だわ。

 けどみんな、ときどきワタシの像が持つ短剣にチラチラ視線を送るのだけはやめてもらいたい。


 ただ途中、ロビンが気になることを言っていた。


「仙女園のやつらで、アガネア様のこと“魅了してる”って言ってたのがいましたが、アイツ、素質あるんじゃないでしょうか!」

「素質?」

「はい。ここに居る悪魔は全員、アガネア様の持つ比類ない素晴らしさが“視える”んです! かすかですが確かにあるなにか……なにか素晴らしい予感とでも言いますか。

 うまく言葉にできないんですが。ただ、それが感じ取れない悪魔もいるようで……。

 なので自分らはアガネア様を崇める資格があるんじゃないかと、みんなでそう話し合ったりもしていたんです。もしかしたらアイツもそうなのかもしれない。それを魅了の術と勘違いしただけで」


 話題はそこで変わってしまったんだけど、ワタシはどうにも気になった。

 もしフィナヤーたちがワタシから同じ何かを感じていて、他の悪魔が感じていないんなら、それってどういうことだろう。

 人間だってバレてないんだから、偽装の不備とかじゃないんだろうけど。

 いちおう後でヘゲちゃんに報告しておこう。


「アガネア様にも私たちの展望を聴いていただいたらどうだい?」


 そろそろお開き、というところでメガンがフィナヤーに提案した。


「そうね。アガネア様、どうか私たちの今後についてお聴きください」


 フィナヤーの演説によるとワタシの魅力を感じ取れない悪魔は可哀相であり、感じ取れる悪魔に導かれなければならない。

 感じ取れる悪魔はもはや説明不要でひれ伏すだろう。


 そのため百頭宮を手始めにこの街、地方、最終的には魔界全土にまでメンバーを増やし、古式伝統協会クラスの勢力を目指す。

 そしてあまねく世界にワタシの威光を届け、ワタシは永劫の賛美と崇拝を受けるんだそーだ。

 なぜならワタシはそれにふさわしいから。


「初めてお会いしたとき、私はアガネア様に愛を受け取っていただきたかった。でもそれは間違いでした。

 それはヘゲさんに言われるまでもなく不遜な行為でした。ええ、天使でありながら神に背いたときと同じくらいの。

 そうではなく、私はただひたすらあなた様から恩寵を賜われることを待つしかないんです」


 最後をそう締めくくったフィナヤーの目は完全にイッていた。美人が台無しだ。


 えーと。もしワタシのここでの日々がラノベになるなら、タイトルは“ワタシ異世界に転生してまじめに暮らしてたら狂信者たちに崇められてた件”とかにしてください。


 しかし、ワタシはついにチャンスがきたことを悟った。

 今日の会のひそかなメインミッションを発動するチャンスが!


「今後もメンバーを増やすなら、七使徒ってのは都合が悪くない?」

「ええ。使徒はこの七人だけ。他の視える悪魔は上級会員、見えない悪魔は一般会員にしようかと考えています」

「会の名前はどうするの?」

「それが、なかなかいい名前が決まらないんです」

「そっか。なら」


と、ここで考えるフリをするワタシ。じつは前もって考えておいたんだよ。


「ギアの会、なんてどう?」

「擬人アガネアの会、ですか」

「それもあるし、みんなが目標達成に向けてギアみたいに噛み合えばいいなって」

「なるほど! そういう意味ですか。素晴らしい!!」

「語呂もいい」

「重すぎず、軽すぎないし」

「アガネア様みずから名前をつけていただけるなんて感激です」


 みんな立ち上がって拍手する。よし。これでもう恥ずかしい名乗りは聞かなくて済みそうだ。


 MISSION COMPLETE。


 ワタシはみんなに見送られて部屋を出た。どうせどんな名前でも絶賛採用されたんだろうけど、かなり気分がいい。


 自分の部屋に戻ると、ベルトラさんと……。


「ヘゲちゃん?」

「よお。おかえり。大人気だったじゃないか」

「見てたんですか?」

「ああ。ヘゲと二人で監視してたんだ。万が一に備えてな。にしてもあいつらときたら」


 クックックッとベルトラさんは肩を震わせて笑う。


「あれじゃ練習にならない」

 ヘゲちゃんは不満そうだ。


「まあいいんじゃないですか? まずは成功体験で自信をつけないと」

 ベルトラさんがフォローしてくれる。


 あー。あれを見られてたと思うとなんか恥ずかしいな。


「そうだ。ベルトラさんワタシの寝てる写真、売りましたね?」

「いいじゃないか」

「肖像権。モデル料。お金ください」

「お、おう──。あー。にしてもなんだな。あたしも中見たのは初めてだったけど、すごい部屋だったな。ダメだアイツら。早くなんとかしないとって思ったぞ」

「けど、上手く使えばサポートに役立つと思う。というわけでアガネア、コントロールよろしくね」


 なにその丸投げ。


 いいですよーだ。ギアの会が覇権を握った暁にはヘゲちゃんなんか秘書にして無茶振り放題してやるんだからね! 約束だよ!! がんばれワタシの愉快な仲間たち! ワタシは指一本動かす気ないけど。

次回、方法8-1︰突然ですが、クイズです(質問はよく考えて)

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