方法54-1︰捕まったりもしてるけど、ワタシは元気です(最後まで諦めない)
「おわーっ!?」
ワタシは猛スピードで宙を舞った。天と地がぐるぐる入れ替わる。
時間としては短いあいだだった。
「おぶっ!」
ワタシはなにかにぶつかった。
「ああ、大丈夫か?」
のぞき込む顔。
「ルシファー様!?」
ワタシは地上高く、宙に浮いたルシファーに抱かれていた。いわゆる姫だっこの体勢だ。
驚いて横を向くと、8階の高さからあまり落ちてない。ヘゲちゃんもベルトラさんも追ってこないみたいで、なんだか妙だ。
ルシファーは天使の翼を生やした完全体の姿だった。見る者を惨めな気分にさせるアレだ。ワタシは自分の着てるドレスがまるで粗末なボロ布でできてるみたいな気になった。
「ああ、似合うぞ。気に入ったか?」
ルシファーに尋ねられてワタシはうなずく。
「それで、あの、ルシファー様はどうしてこんなところに?」
「ああ、そうだな」
ルシファーは翼を広げると向きを変え、飛翔した。城とは逆の方向へ。
「え? あのちょっ、ルシ」
急に全身の自由が奪われた。
「落ちると危ないからな」
その一言がどういうことか、すぐには解らなかった。けど、少し考えてワタシはゾッとした。
ルシファーはワタシが人間だって知ってる。悪魔相手なら落ちると危ないなんて言うはずないから。
ワタシを吹っ飛ばしたのもたぶん間違いなくルシファー。それでワタシをキャッチするために待ってたんだ。
『へいへいよー! ヘゲちゃん! 助け』て! 助け……。
あれ?
「念話か。止めさせてもらったぞ」
前を向いたまま、ルシファーが言う。
「ああ、そうだ。つまりはそういうことだ」
ルシファーは力強く羽ばたいて、スピードを上げた。
次回、番外21-9︰エンド・オブ・ヘゲちゃんの憂鬱