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方法49-4︰使い魔学会へようこそ!(適材適所を心がけて)

 抜けた先は長くて急な坂の上だった。坂を下りて少し行った先に、鉄柵で囲まれた広い敷地が見える。

 敷地内には木や石、レンガでできた大小様々な建物が建っている。それらは複雑に繋がってるみたいで、かなりゴチャっとした印象だ。

 おまけにどれも荒れ果てていて、場所によっては壁や屋根が崩れてたりもする。なんていうか、廃墟の塊だ。門も片方が外れてなくなってる。


 さらに──。


「あの。ホントにあれ使い魔ですか? なんか魔獣と悪魔の群れにしか見えないんですけど」


 そう。敷地のいたるところを不気味な外見のクリーチャーがうろついてる。遠目に見ただけでも、かなりの数で、どれも凶悪そうだ。


「猫とネズミとカラスのふれあい動物園じゃなかったんですか? あれ、どう見てもサロエの不思議なダンジョンに居そうなのばっかなんですけど?」


 他の三人は気まずそうに視線を交わす。


「とりあえず伏せてください。向こうから見られるかもしれません」


 メフメトに言われ、ワタシたちはその場に身を伏せる。


「で?」

「いや、な。アガネア。違うんだ。あたしらは誰もおまえを騙そうとしたわけじゃない。本当に使い魔ってのは普通は話してたとおりのもので、まさかあんなのが出てくるとは思ってなかったんだ。なあ?」


 ベルトラさんに同意を求められ、メフメトとサロエが首を縦に振る。

 そのとき、すぐそばからさっき司会をしてた悪魔の声が聞こえた。


「どうです? 驚いたでしょう?」


 ワタシたちは声の主を探して、あたりを見回した。


「私は会場にいますよ。音声だけ飛ばしてるんです。そちらの光景はいま、こちらの壁面に映し出されています。ライブ中継ですね。いちおうルールを守っているか見ているというわけです」


 なるほど。つまりこれワタシたちのための余興のつもりなんだろうけど、向こうにとっても楽しい見世物ってわけか。


「ちなみに、あそこにいるのは我々が作り上げた使い魔の中でも戦闘用に特化したものたちです。飛ぶものは放っていませんが、かなり倒しがいがあるはずですよ」


 なにが謎解きメインだ。ガッツリ脳筋バトルじゃん。もしくはホラーFPS。


「申し遅れましたが、今回のチャレンジは記録に残させていただきます。開発した使い魔たちの戦闘データが欲しいので。ですから、遠慮なくやっていただいて結構です」


 それだけ告げると、悪魔の声はしなくなった。


「だ、そうだけど、どうすんの? メフメトとベルトラさんで無双でもする?」

「無双、と言いますと?」

「二人で中の使い魔を全滅させてから、ワタシたちが後を追う」

「それは危険です。討ち漏らしにお二人が襲われれば応戦して失格になります。それに私とベルトラさんの二人で、能力も不明な使い魔をあれだけの数相手にするとなると……」

「見えないところにどれだけ隠れてるかも判らないしな」


 爽快感ゼロなことを言う二人。ここは正面から突っ込んでってエクストラゲージ溜めたり 60Hit Combo をキメたりするところなんじゃないの?


「なるべく戦闘は避けて、探索を優先しましょう。私の指示に従っていただければ、そう簡単に見つかりはしないはずです」


 こうしてワタシたちは道を外れて木立に隠れながら門まで近づき、壊れた方から敷地内へと入っていった。



 それからしばらくして。


「おかしいですね」


 部屋へ入ってきた人型クリーチャーの首をはねたメフメトがつぶやく。殺された使い魔は一瞬の後、赤黒い霧になって消えた。


 ひとまずワタシたちは近くにあった木造の建物内を探索してる。基本はメフメトが索敵して、安全なら前進して鍵のかかってない部屋の中へ。敵がいるならメフメトとベルトラさんで排除。

 ベルトラさんは両手持ちのスレッジハンマーを、メフメトは片手に一本ずつナタを装備してる。どちらも拾ったものだ。

 ほとんど物音を立てず使い魔を倒していく二人の姿はかなり頼もしく見えた。


「おかしいって、ハンドガンの弾も本体も出てこないこと?」

「いえ、そうではありません。部屋へ押し入ってくる使い魔がみょうに多いんです。それに、外の使い魔がこちらへ集まってきているような」


 メフメトは窓の外に目を向けた。


「使い魔は主人の指示に従います。そして主人はみな会場で私たちの居場所を把握しています。まさかとは思いますがこちらの居場所へ使い魔を誘導している、といったことが」

「それはありません」


 司会の悪魔の声がした。


「それではゲームとしての面白さが損なわれますから」

「では、これは?」

「──それは、知っていても教えられません」


 声はまた沈黙した。

「とにかく、とっととここの探索を終えよう」


 メフメトに代わって入り口を警戒してるベルトラさんが言った。

 メフメトはさすがに元盗賊だけあって、手早く静かに部屋の中を調べていく。


「おや? これは」


 引き出しの中から地図が出てきた。この建物と周辺しか描かれてない。


「どうやら地図は複数あるようですね」


 メフメトはサロエに地図を渡した。


「案内をお願いします」

「へ? ああ、はい。えーと、ここが入り口だから……」


 慌てながら地図を調べるサロエ。


「ワタシも手伝うよ」


 地図を見ながら建物の中を調べて回る。使い魔から隠れながら、それでもなぜか発見されながら。

 けっきょく、地図の他は何も見つからなかった。ワタシたちは外へ出る。

次回、方法49-5︰使い魔学会へようこそ!(適材適所を心がけて)

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