方法47-4︰パーティーからの推理コンボ(無謀な勝負は避けましょう)
「逆って、何が逆なの?」
「足りない頭で一生懸命考えて、自信満々でみごと玉砕したあなたにも解るように話してあげるから、ちょっと待って」
ほほう。ひさびさの毒舌。そういうの待ってたよ!
「ダンタリオンは異常に鋭い観察力なんて持ってない。髪と爪の変化からあなたが人間だって見抜いたわけじゃない。それはデッチあげの理由で、本当は最初からあなたが人間だって知ってたとしたら?」
ベルトラさんがハッとした表情を浮かべる。
「なるほど! それならいろいろ説明がつきますね!」
いやそのリアクション、ワタシのときにしてほしかった。
「もちろん証明はできないけれど、そう考えれば全体像を描けるわ」
「ちょっ、それ、どういうこと?」
ヘゲちゃんは珍しくポンコツにならずに説明してくれた。たぶん一気に直感したことを、ヘゲちゃん自身もその場で整理しながらゆっくり話してくれたからだと思う。
かなり長い話だったから途中で馬車が到着して、家の中で続きを聞くことになった。
そもそもの出発点として、ダンタリオンが最初からワタシを人間だって知ってたとしたらどうか? なぜ知ってるのかって疑問が湧く。
これまでの話を総合すると、ワタシはタニアが集めた研究者によって人界から魂を召喚されたらしい。だからタニアなら最初から知ってて当然。
そして、タニアの他にそれを知ってるはずの存在がいる。タニアを支援してる組織だ。そもそもその組織がタニアに命じてやらせてたことかもしれない。
じゃあ、この組織がダンタリオンだったら? それならダンタリオンもまた、ワタシが人間だって知ってたことになる。
ヨーミギの話や、タニアがここでのワタシたちを詳しく把握してたことから、組織のメンバーはそこそこの規模に見える。
そのくせその正体というか、存在自体がどこにも漏れてないし、知られてない。
この組織がイコールでダンタリオンなら?
ダンタリオンは別人として暮らしてる“隠れ”も入れるとかなりの数がいるっぽい。つまりあちこちに潜り込ませることができるし、連携はスムーズだし、絶対に裏切りもない。
それに、数が多ければ全員の総資産を合わせるとかなりの額になるだろう。しかもそれを自由に使える。何人もの研究者を囲ったり、秘密プラントを建造したり、大勢の傭兵を雇ったりすることも可能だ。
ダンタリオンはタニアを使ってワタシを手に入れようとする一方、自分たちもケムシャっていう隠れを使って、ワタシを確保しようとした。
考えてみれば大娯楽祭のときのソウルコレクター襲来もタニアのシナリオどおりなら、ヘゲちゃんは無力化され、アシェトは戦うために飛び出し、仙女園でワタシの護りは手薄になるはずだった。
タニアはライバル店打倒と魂の気配のお披露目に加えて、そこでダンタリオンからの指示を遂行するつもりだったんじゃないだろうか。
ケムシャの方も、もしワタシを入会させていれば講演会だの地方イベントだの、いろいろ機会を作ってワタシを確保するチャンスが狙える。
そうまでして手に入れようとしてるのがワタシの魂。どうやってかダンタリオンたちによってあり得ない質とサイズにされた魂だ。
それはダンタリオンに力をもたらす。魂が禁止された今の魔界でなくても、莫大な投資に見合うだけの力を。
「でも、どうやって? 魂って使えば見つかっちゃうんじゃないの?」
「おそらくソウルシーラーで覆った部屋にあなたとダンタリオンの一人が入って契約。そのダンタリオンは部屋から永久に出ない。実際にはどうなるか知らないけれど、体が複数あっても同じダンタリオンなんだから、なんらかの形で強化作用は得られるはずよ。それも、ダンタリオンにとって悪くない形で。でなければ、最初からやらないはずだもの」
なるほど。確かにスッキリと全体が見渡せるような話だ。それでも長いけど、これまでの断片的なアレコレをひとつに上手く吸収できる。
「あとはタニアを締め上げて答え合わせをすればいいのだけど……」
「それが難しいよね。しかもヘゲちゃんの推理が当たってたら、やっぱりワタシはダンタリオンとタニアの両方から狙われなくちゃならないわけで」
「それは今までもそうだろう。そして向こうは失敗してきた。これからもあたしたちが護ってやるから、心配するな。ですよね? ヘゲさん」
「……ええ、そうね」
なんか歯切れが悪い。
「どうしたの?」
「いえ。どうすればダンタリオンを根絶できるのかと思って。多少殺したくらいじゃ諦めないだろうし」
とりあえずワタシは途中で寝落ちしたサロエを優しくそっと起こした。
ホントはグーパンで殴ってやりたいとこだけど、また寝ぼけてポケットディメンションに送られると困るから。
次回、方法48-1︰裸族の天使(仲間の目は気にして)




