表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/37

28 って、何気に俺のアライメントってイービルなんだ!

 ホーリー・サイトは、教会の聖地で、教会領になっている。

 ここでは教会の独占供給品、ジャンプ・クリスタルが発掘されるのだという。

 その為かこの近辺では魔力の濃度が高く、それを利用したマジック・アイテムの作成が細々とだが行われていた。


 シカの肉は、自家消費する分以外はすべて売り払った。

 これだけの肉を卸せば街の住人たちも楽しめるだろう。


 そして宿に泊まる。

 夕食は、ファイヤー・バックのステーキ。

 俺はジンギスカン、焼き肉の方が良かったんだが、やってくれる店が無い。

 仕方なく頼んだメニューだった。


 シカ肉は脂身の少ない赤身、高タンパクで低脂肪な上、鉄分が豊富という特徴を持つ。

 塩、コショウ、ナツメグを振って下ごしらえをした肉にうっすらと小麦粉をまぶし、きっちりと下ごしらえをする。

 それをオリーブオイルを垂らした鉄板の上、目の前で焼いてもらうのだ。


「おいしそう」


 イリィが言うとおり、ジュウッという焼ける音と共に肉とスパイスのいい香りが辺りに漂う。

 そうして肉にこんがりと焼き色が付いていく。

 聴覚と嗅覚、視覚を通して食欲がかきたてられ、自然と口の中に唾液が溜まっていった。

 無言で見入っているアナの瞳もどこか熱っぽい光を宿しているように見える。


 仕上げにブドウから作られるバルサミコ酢を全体にかけてひと煮立ち。

 この臭いががつんと鼻を突き、もうたまらない。

 最後にバルサミコ酢ソースにからめ、付け合わせのキノコ、野菜類と共に皿に盛ってできあがり。


 フォークで押さえ、テーブルナイフを走らせる。

 野生肉ジビエらしい弾力があるが、食べてみれば適度に柔らかく、肉汁がじゅわっと口の中に広がる。


「うん、美味しい肉ね。いかにも野生肉ジビエって感じの肉だわ」


 悪くない。

 シカ肉というと修学旅行で行った北海道で食べたジンギスカンを思い起こす俺だったが、ステーキも悪くない。

 悪くないぞ、シカ肉ステーキ。


 俺に釣られるようにイリィたちも食べ始める。


「甘じょっぱくて美味しい」


 イリィが言っているとおり、バルサミコ酢のほんのり甘酸っぱいコクと野生肉ジビエの風味がからみあい、上手くマッチしている。


野生肉ジビエというと、硬く匂いがきついというイメージがありますが、このお肉は淡泊で、でも少しだけある独特の風味がちょっとクセになるような味わいですね」


 アナがそう言う。


野生肉ジビエが硬いとか匂いがきついとかいう人は、血抜きが悪いとか処理方法に問題がある肉しか食べたことが無いのよ」


 俺は彼女に説明してやる。


「きちんと処理を行ったシカ肉はそれはもう美味しくて、最上級の肉と言われているほどよ」


 日本でも北海道のエゾジカ、それから輸入の鹿肉が手に入ったっけ。

 ジンギスカンなどにして食べるが、これがもう美味いのなんのって。

 まぁ、当たり外れもあって、北海道のビール園で食べたのは美味かったが、名古屋で食べたのは不味かったけど。


 って、言うかビール、いやそれよりもやっぱり白いご飯が欲しい!

 ここに白いご飯があったら最高なのになぁ。

 ……俺ってやっぱり魂が、心の底から日本人なんだな。


 そんなことを思い起こしつつ、俺はアナたちと共にシカ肉のステーキを完食したのだった。




 そして翌朝。


「さて、この街に来た目的を果たしましょうか」

「シカ肉を食べるために来たんじゃないんですか?」


 アナが素でそんなことを言う。

 結構天然さんだよな、彼女。


「そんな訳ないでしょ」


 この街では魔力を付与した武具類を作ることができるのだ。

 ジャンプ・クリスタルが産出されるようにこの土地は魔力の濃度が高く、こういった加工もまた可能らしい。


「みんなの盾に魔術ダメージを軽減する効果を付与してもらいましょう」


 目玉が飛び出るほどの金がかかるが、力の修練場で稼いでいた俺たちには十分ひねり出せる額だった。


「では、これとレジストマジック、魔力ダメージ軽減の加護を付けてある防具を合わせれば完全にダメージをゼロに……」

「できるわけないでしょ」

「ええっ」


 うん、そう思われがちなんだけどね。


「魔力ダメージ軽減の加護は足し算じゃなく掛け算なの。盾でダメージを四分の三にしたものを、鎧で更に四分の三にする計算ね」


 俺の説明に、アナはなるほどと納得した様子だったが、イリィはかえって混乱した様子で首をひねっていた。

 そのため、アナはイリィにも理解させる意味でアバウトな答え方をする。


「つまり、同じ魔力ダメージ軽減の効果を持つ防具を併用しても、思ったより受けるダメージは減らせないということですね」


 そう言ってもいいだろう。


「後はホーン・サークレットに魔属性を付与する加工ね」


 牛の角を使った飾りに螺旋状の加工を施すことで螺旋力と言われる力を付与、防御力を上げるものだ。

 しかし見た目が悪魔の角のようにも見えるような外見になってしまう。

 それゆえか、魔属性が付く。

 【ホーン・サークレット+1(Evil)】だ。


 って、何気に俺のアライメントってイービルなんだ!

 道を渡るおばあさんが居たら謝礼目当てに助けるタイプってやつか!

 いや、確かに俺、悪役令嬢なんだけどさぁ。


「私の分は駄目ですよ」


 天使であるアナには使えなくなってしまうので、俺のものしかこの加工はできなかった。




「さて、力の修練場まで戻って残りのアイテムを回収するわよ」

「えぇっ!」


 アナが顔をしかめる。

 そんなに筋肉ピクピクな悪魔を相手にするのは嫌か。


 俺もだぁ!


「まぁ、そう言わないで。こっちの攻撃力も上がっているから、そう反撃を受けるまでもなく封殺できるはずだから」


 そうなだめ、俺たちは力の修練場へと出発した。




 力の修練場。

 まだ警備システムが生きているコンテナに触れると警報ならぬ召喚の魔法陣が展開し、筋骨隆々とした男の姿を持つ肉体の悪魔たちが三体現れた。


「うっ」


 一目で怯むアナだったが、ぐずぐずしている暇は無いぞ。


「いい加減にしなさい!」


 俺のツッコミのハリセン+1が放つハリセン乱舞が肉体の悪魔をまとめて薙ぎ払う。

 そこに、


「乱れ打ちっ!」


 アナが【口にするのもはばかられるムチ+1】で範囲攻撃を行う。


「倒せた?」


 二体の肉体の悪魔がアナの攻撃を受けくずおれた。


「油断しないで!」

「はっ!?」


 アナの気が緩んだ所に、最後に残った肉体の悪魔が捨て身かと思えるほどの渾身の一撃を叩き込んだ。


「くはっ!?」


 一撃で体力ヒット・ポイントの大半が持って行かれる。

 痛恨の一撃、クリティカル・ヒットというやつだった。

 これだから肉体の悪魔戦は怖いのだ。


氷結弾アイス・ブリット!」


 そこに、イリィの攻撃魔術が叩き込まれ、とうとう肉体の悪魔は全滅したのだった。




「大丈夫、アナ?」

「ええ、軽治癒ライト・ヒーリングを二回ほどかければ問題なく回復します」

「そうね。多少魔力が無駄になっても体力は上限近くまで回復させておかないと、ここでの戦いは危険だわ」


 逆に言えば、体力を上限近くにキープしてさえいれば、まず死ぬことは無いということでもあるが。


「それにしても…… 倒せるものなんですね」


 アナは感慨深げに言う。

 俺はうなずいた。


「武器を強化し、防具を揃え、呪紋を刻み、そしてドーピングアイテムで肉体を強化した。倒せるだけの努力は積み重ねてきたつもりよ」

「その恰好を見ていると到底そうは見えませんがね」


 まぁね。

 見た目は【無課金ユーザー】のアバターそのままに近いものね。


「さぁ、まだ開けていないコンテナは大量にあるわよ」


 こうして俺たちは警備の肉体の悪魔たちを倒しまくる。


「見る見るうちにレベルが上がるわね」


 この力の修練場に来たのは資金調達のためなのだが、同時に強敵である肉体の悪魔を倒すことでレベル上げもできていた。

 戦う内に、アナとイリィの魔力が切れていたが、回復についてはヒーリング・ポーションで肩代わりできるし、最後に止めを刺すだけならイリィも力の杖を振るうことで役目を果たすことができるのだった。

 ブックマーク登録 200件達成、ありがとうございました。

 みなさんに応援頂けましたので、頑張って最新話をアップいたしました。


 ご感想、またはブックマークやこのページ下部にある評価でポイントを付けていただけると幸いです。

 更新は不定期ですが、反響次第で頑張ってペースを上げられるかも。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ