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ジンの吟遊旅行記   作者: くーじゃん
第三章 銀狼の若姫
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14 適合者の戦い

 再びナイフを構え臨戦態勢をとったリコにゴードンもまた手にした大槌を構える。


「さぁそろそろ遊びも終わりにしようか」


 ゴードンの一言と共に大槌は共鳴音を響かせ、そして大槌の中心に刻まれた三枚の羽はその力を得た様に回転を始めた。その速度はどんどん早くなり辺りの風を巻き込むように轟音を響かせていく。


「お、おさぁ待っくれまだ俺達がここにいる!」


 その瞬間に二人の戦いを見ていた手下たちの態度が一変した。まるで何かにおびえるように。そしてゴードンが何一つ表情を変えないのを見ると一斉に逃げ出した。

 その異様な光景にリコも警戒を深めた。理解できない事ならばフェンリスの横でいくらでも見てきた。それ故に必要以上に恐怖は感じない。どんな攻撃を仕掛けてこようとそれに対処するだけの経験を積んできたのだから。


「行くぞ。この一撃で死んでくれるなよ?」


 それだけつぶやくとゴードンは振りかぶった大槌を地面へ叩き付ける。ゴードンの怪力によって抉られた地面は大小さまざまな礫となり浮き上がる。


「吹き飛ばせ〝爆風打バースト″」


 ゴードンは大槌を横に傾かせリコがいる方向へ向け一気に振り抜く間際、ゴードンはそうつぶやいた。そしてその瞬間風は止み大槌は貯め込んだ風を暴発させた。

 ゴードンの力を持ってしてもただ地面を抉り、礫を飛ばしてもそれは目くらまし程度にしかならない。だがゴードンの持つ結晶機【豪風大槌ストーム・ハンマー】と組み合わせれば礫は、死をまき散らす弾丸となりえた。  

 自らに襲い掛かる無数の礫を前にリコは、全力で横にとんだ。礫は広範囲に飛んではいるが致命傷になりそうなのは大きな物だけ。ならばその範囲から逃げればいい。

 あれだけの大ぶりの後ならば隙も生まれる。飛びかかる礫を防ぎ切り、全力でゴードンへと地面を蹴ろうとした瞬間後方から悲鳴が上がるのが聞こえた。


 その先を見ると先ほどの礫はデレク達がいた場所へと降り注いでいた。リコ達適合者ならば対応できる礫もその一つ一つが彼らにとって脅威となる。


「貴様、お前の仲間もいるだろうが!」


 激高するリコを前にしてもゴ-ドンの表情は変わらない。


「このぐらいで死ぬような奴は死んで当然だろうが。


 おら、次行くぞ!」


 そして無差別の攻撃は次々と繰り出される。飛び交う礫に家々は破壊され、その先にいた人々を襲う。怪我を負い動けないデレク親子に礫が襲い掛かるのは時間の問題だった。


「なら、これで決める!」


 リコは姿勢を低くとる。まるで獲物を狙う獣の様に。そして全力を以て地面を蹴った。その姿をゴードンは悠然と構えて見つめていた。その彼が速度は今まで見たどんな獣魔よりも早く鋭い。さらにリコが一歩踏み込むごとにその速度は増してゆく。

 縦横無尽に飛び回りゴードンの視線が完全に外れた時、最後の攻撃をリコは仕掛けた。死角からの攻撃にはどんな相手だろうと防ぐことは出来ないはずだった。


「これで終わりだ。砕け〝旋風砕(トルネ―ド)″」


 だがそれをほくそ笑むように、ゴードンは結晶機を短く持ち自分の真下へと突き刺す。


 何か来る、そう直感するがすでにリコは止まれなかった。すでに体は宙を浮きゴードンンの首をめがけて飛んでいる。


 あと少しでその刃が届く、だがその瞬間リコの体は無数の礫に巻き込まれた。


 その攻撃の正体はゴードンを中心とした風の竜巻であった。三角錐型の打撃面に刻まれた窪みから噴き出された風は螺旋を描きその周囲の地面を抉りとった。

 それはゴードン自身をも傷つける攻撃であったが、その威力は絶大であった。なぜならリコの最大の武器である速さを奪って見せたのだから。

 

空中で礫を避けることなどできるはずもなく、無数の礫を体中に受けリコの動きは停止する。


「こ、のお!」


 それでも自らに迫る礫を無視してナイフを投げる。すでに体は豪風と礫によって奴から吹き飛ばされ真っ白だった体には無数の傷が刻まれた。


 それでもその場所に奴はいるはずなのだ。だが


「残念、俺はここだ」


 その声はリコの頭上からかけられた。反射的にその声を見上げるとそこには鉄塊を振りかぶるゴードンの姿があった。


 竜巻により砂煙で何も見えなくなった地面と違いそこは全てが見渡せる唯一の場所。そして【豪風大槌(ストーム・ハンマー)】は今一度共鳴音を響かせる。


「轟け、〝風旋加速ブースト″」


 そして結晶機【豪風大槌ストーム・ハンマー】は轟音と共に風を吹き出しその身を加速させる。その一撃は空中で身動きの取れぬリコへと一直線に向かっていった。


「くそぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


 リコの叫びが森に鳴り渡る。それでも鉄塊の一撃は止まることなく、その華奢なからだへと叩き込まれた。


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