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ジンの吟遊旅行記   作者: くーじゃん
第一章 蝙蝠の守護者
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プロローグ

 悠久の歴史の中で人は神を創造する。それは荒れ狂う自然の猛威であり、誤りを正すための教訓であり、また人の平和を願う心である。

 

 それらは時を超え多くの人に語り継がれる。その豊かなる音楽の調べと共に。



************************************



 見渡す限りの草原の真ん中でその男は馬車の先頭部分にある御座に寝転んでどこまでも広がる青い空を見上げていた。


「おい、駄馬腹減った。なんかとってこいよ」


 荒れ果て、小石が散乱する道を進みながらジンは相棒に話しかける。


「俺にとっての飯ってのはその辺の道草なんだがな。それでもいいならいくらでも生えてるぜ。この草なんて絶品だ」


 その駄馬と呼ばれた馬はにべもなくそう答えた。だがその姿をみて駄馬などという言葉をかけられるのは相棒である彼だけだろう。話しかけられた馬の体高は2メートル近くに達し見るからに強靭な肉体はその馬が素晴らしい名馬である事を証明している。


 またそのつややかな青鹿毛は道行く人を振り向かせるほどの美しさを放っていた。まぁその道行く人とやらがいればの話だが。


「あ、自分だけ飯食いやがって!おれにもよこせ!」


「なにいってやがる。人間は道草なんか食えんよ。というか言ってて空しくないのかそれ?」


 たわいもない会話をしながら一人と一頭はユグドラシル大陸の中ほどにある国ダラスを目指していた。整備も禄にされていない道をガタガタと車輪を鳴らしながら一行は進む。


「全く、頼りがいの無いやつだよ。ダラスまであと3日といった所か。早く温かい飯にありつきてーなー」


 旅の間、干し肉や乾パンの味気のない食事しかしてこなかったのだ。温かいミルクのスープを思い浮かべだらしなく顔をほころばせる。常ならば整っているといえる顔もこうなっては台無しである。


 だが彼の見た目はこの周辺の地方の人々とは異なっていた。白色の肌に、輝くような銀白色の髪、体格も160センチ中盤と小柄である。そしてなによりこの草原をたった一人で馬車を引いていること。それは彼が〝吟遊詩人″である事を示していた。


「それなら少しでもいい飯にありつく為に仕事の準備でもしたらどうだ。声が出なくて一銭も貰えないなんてことは勘弁してくれよ。」


 銀髪の吟遊詩人ジンは相棒である黒馬カーズに対して若干五月蠅そうな顔をした後、それもそうかと考え直す。起き上がり馬車の荷台に移ると、楽器の調整をしながら歌を歌い出した。その音色は車輪の音にまぎれてはいたがそれでも灰色の世界の中で確かに輝いていた。有象無象の観客を魅了しながら一人と一頭はダラスへの道を進んでいった。


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