江戸時代
______________________________________________________________________________
闇が開け光の先に抜けたと思ったら目の前には湖があった
「うわっ!」
ドボンッ!!
「落とした先が水辺なのは嬉しいけど。
低い位置から落としてくれるとかもっと他にもあったはずだよね?!」
彼女に会うまでは何故か濡れてなかった洋服が、湖に落ちたせいで濡れてしまった
急いで岸まで泳ぎ、服を絞る
「あれ?、服が着物になってる」
さっきまで、ボロボロになったTシャツにダメージジーンズっぽくなっていたジーパン姿が
紫の着物に灰色の袴、腰に妖との戦いで愛用してた渚月が差さっていた
慌てて腰の刀を外し、懐に入っていた手拭いを固く絞って刀を拭いた、自分の半身になった刀、いつも以上に大切にする。
自分も簡単に拭いて、言霊で服を乾かす。
その後どうしようか迷ったが、仕方ないから取り敢えず麓のほうに見える町に降りることにした
実際に降りてみると、江戸時代のような風景に驚いた
「本当に、出来たんだな。」
時渡りが成功したようなことに、感動に似た感情が溢れた
街中を歩いてみると、意外と活気のある街並みで私の目には眩しかった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「きゃぁぁぁ!」
何となくぼんやり歩いていると、女性の叫び声が街中に響いた
叫び声の聞こえた方向に目を向けると
テンプレみたいに町娘がガラの悪い不逞浪士風の輩に腕を掴まれていた
周りの人たちは見て見ぬ振りをしながらも周りに集まり野次馬と化し人の壁ができており、それが逆に町娘の退路を塞いでいた
ーーほんとにこんな事があるんだな、しかもどこの時代も皆同じ、自分さえよければそれでいい。
周囲の反応に言いようのない不快感が湧き上がってくる。
気付いたら、町娘の手を掴んでいた不逞浪士の手を捻り上げていた
「...しつこい輩は嫌われますよ」
何でこんな事をしたのか自分でも分からなかった
ーー面倒事には首を突っ込まないであの人を探すと誓っていたのに
後悔先に立たず、案の定3人で町娘を囲っていた不逞浪士はこっちに狙いを定めた
「なんだ、坊主。英雄気取りか」
「ガキは黙ってろ」
「俺たちはこの嬢ちゃんに話があんだよ」
ーーこんなのが武士とか言わないでほしいな。夢が壊れるぞ
いかにもバカな三人組で呆れてやる気を失い、バカを放ってこの場を去ろうと町娘の背中を押した
「こんな人達ほっといて退散しましょ。
少し聞きたいことがあるので、家まで送りますよ」
人懐っこい笑みを浮かべて去ろうとするが、後ろから刀を抜く音を聞いて溜息を吐く
「…人の話をきけぇ!」
私は振り向きざま刀を抜き、男の刀を真上に飛ばす
そのまま後ろに回り込みケツに蹴りを入れ、
その後ろにいた男の腹に峰打ちを入れ、
突然の出来事に驚いて固まっているおとこの後ろに回り込み首裏に峰打ちを入れる
「いきなり刀を抜きますか、武士の名折れですね。」
転ばせただけの男に刀を向ける。
わずか数瞬で片が付く
呆気なさに息を吐くと、タイミングよく男の足の間に男の刀が刺さった
「ひぃー!」
男は情けない声を上げながら逃げて行った。
腰抜け過ぎる男たちを見送って女性に向き直る。
「それじゃぁ、行きましょか」
「ちょっと、待ってください。少しお話を聞きかせて頂きたいので」
娘さんの方を向いたとき、肩に誰かの手がかけられた
手の主を見ると浅黄色の羽織を着た集団だった
(新撰組...)
直感でそう思ったが周りの声に耳を澄ませると
壬生浪士組という声が聞こえたのでまだ襲名前ということがわかる
(なら、文久3年あたりかな?)
改めてよく見てみると、私の肩に手を乗せている人はどうやら隊長格らしい、他の人に指示を出している
「...何の御用ですか?」
にこやかに話しかけてみる
私の肩に手を乗せている男は茶髪で吊り上った目元をしているが常に笑みを湛えているためキツイ印象がない
私の第一印象としては“猫みたいな人”だった
「色々話をしたいからさ、ちょっと本署に来てもらってもいいかな?」
「う~ん。このお嬢さんを家までお送りする約束をしていたんですが...」
お嬢さんの方を向くと大きく首を振って、どうぞというジェスチャーをされた
「…大丈夫みたいですから、着いて行きますよ。
じゃないと後ろにいる人が何かしそうですからね。
僕は、無駄な殺生は嫌いですからね」
笑みを湛えたまま男の人の手を外し、チラリと男の後ろを見やる
「お嬢さん、帰るときは気を付けてね。なるべく一人にならないことをお勧めしますよ、何だったらこの人達に送ってもらったらいかがですか?」
お嬢さんに笑顔を向けて浅黄色の集団に顔を向ける。
見目の良い男の人が1人のこり、私は彼らに着いて行った
懐かしい気配を感じた気がする…そう思いながら