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君の元へ

私は今、たくさんの仲間の骸の上で戦っている



辺りには腐った匂いと鉄臭い血の匂いが充満し



異臭が漂っている




異臭の匂いに比例し周りの黒い靄が濃くなり



妖の姿を隠していく



ーーあぁ、今日何度目の撤退だろう



持っている刀を握りしめ、撤退の合図に少しずつ後退していく



妖を斬って行くたび靄が発生し、靄が濃くなるたび撤退し、薄くなった所でまた妖が増え振出しに戻る



このままではいけない事は解っている、自分にもっと力があれば、もっと技術があれば



ーー本当にこのままでいいのか?

私にはこの状況を覆すだけの力があるんじゃないのか



周りが撤退していく中一人立ち止まる



ーー本当はただ怖いだけなんじゃないのか

あの時みたいに化け物と呼ばれることが



刀を握りしめ、俯く



ーー絶対に生きて帰るって誓ったじゃないか

ここで覚悟を決めなければあの頃の自分と何も変わらない



顔を上げ、後ろを振り返る



黒い靄は静かに漂い、まるで私たちを嘲笑っているかのようだった



「『来よる風  吹かせるは風神  

神の息吹で 悪しき霧を吹き飛ばせ』」




私は靄に向かって走り言霊を飛ばす





「まだ戦えるものは残れ!一気に攻め落とす!」


私は大声を上げ、物の怪に斬りかかる


「絶対に、生きて帰るんだ!」


一人の少女によって2年の歳月続いた妖との戦いは終わりを迎えた


________________________________________________________________________________

23XX年

世界に突如妖と呼ばれる異形のものが現れ、人間達を襲い始めた


政府は急遽、妖を討伐する為の部隊を編成したが、現代の技術では傷一つ付けられなく更に、妖を見る事のできる者、できない者がいる事がわかりやられる一方だった




妖からの襲撃が開始されてから半年でようやく、刀が有効である事がわかり



約400年ぶりの刀鍛冶が再開された




その後すぐ妖を見る才を持つ者は、国に収集され訓練をしいられ戦いに駆り出された





そして、妖との戦いが始まって10年



1人の少女の力で妖との戦いは終幕した



妖との戦いではたくさんの犠牲が出たものの



今では平穏な日常が戻ってきていたが…




時に、人間の心理はとても残酷なものだった




先の戦いに大きく貢献した少女はその後、人類の敵として守ったはずの者たちから命を狙われていた




理由は単純明快、人とは違う力を持ち、その力が人類へ向けられるのを恐れたからだ



この少女がもし戦いの最中に命を落としていたならば勝利の女神として崇められていただろうが、生き残ってしまった



それゆえに、その少女は狙われる人でない化け物として




___________________________________________





ある夜の山の中に1人の少女がいた





少女の来ている服は至る所がボロボロになりそこから血が出ていた




彼女の名前は霜崎朔夜




妖との戦いで反撃の一手を担った者だ



終戦後、英雄として崇められていた彼女だったが



政府に従属することを拒んだ結果、人類の敵として世界中から狙われていた




「『癒しの光  穢れを除き  傷を癒せ』」



彼女が人類の敵とみなされる原因は彼女のこの能力だった



彼女には“言霊”と呼ばれる能力があり、読んで字のごとく〝言″の葉に〝霊″力を宿し具現化する能力だ




この力を駆使して、妖との戦いの中生き抜いた




まだ、妖と戦っていた時の方が瞳に生気があったが、今の彼女に生気は感じられない。




全てに裏切られ、全てに絶望した。




それでも、彼女の足は止まらない、しっかりとした足取りで特定の場所に向かっている


たどり着いたのは、大きな湖だった


ここは私の思い出の場所、そして最後の可能性だった。






幼少期、辛い事があった時などによく来た場所で2年程前まで、ある人との文通する為の場所でもあった。




久し振りの言霊を、詠う。


他の言霊とは違い一番効率の良い、和歌の旋律を使い更に地形の力も使った大掛かりな言霊。




「『清水の 水面に映る 時鏡

吾の想ひよ 彼方に届け 』」




月の映る湖の中心に向かって言霊を詠うと湖が渦巻き出す



彼女はずっと持っていた刀を握りしめて…




湖へと飛び込んだ




「お願い、あの人の元へ」



最後に呟いた彼女の声は夜の月だけが聞いていた

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