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銀の瞳に映る夢  作者: 右槙ねじ
銀と、夢と、ひとかけらの願い事
1/35

0-1 むかしむかし

ローカルでちょこちょこ考えては、途中で投げ出すことが多いため、背水の陣を敷くために投稿をはじめました。

ここからよろしくお願いします。


 時刻はまだ夜中には差し掛からないくらい。

 寝室のベッドの上には、布団に潜り込んでいるひとりの幼女。両手に掴んだ児童書に見えるそれを力一杯に突き出していた。


「まま、きょうはこのおほんよんでー」


 幼女の差し出す本を受け取ったのは、木製の丸椅子に座り佇む少女。見た目12、13歳といった程度の小柄で童顔、セミロングの白髪をサイドアップに結わえている。

 母親というには似つかわしくない、幼すぎる風貌。しかし、ふたり共それが正しいというかのように、否定するものはいなかった。


「これは、一体どこから見つけてきたの」


「ぱぱのおへやー」


 懐かしい物を見るように、ママと呼ばれた白髪の少女は本の背を軽く撫でる。

 表紙には可愛らしいイラストと共に、


『剣のお姫様と闇のお姫様(1)  著者:録獣ろくじゅう 六三ろくぞう


 本の名前と著者が記されていた。これは丁度シリーズ物の1冊目に当たる。大した発行部数も無く有名とは程遠いタイトルだが、著者からの贈り物である。父と母のふたりにとってその本は、とてもかけがえの無いものだった。


 白髪の少女は渡されたそれを開き、頁を先頭へと巻き戻すようにパラパラと捲っていく。最初の頁には本のタイトルに当たると思しき二人のお姫様が描かれていた。




「……むかしむかし、あるところに、とてもとても仲の良いふたりのお姫様がいました」


「ふたりは平和に過ごしていましたが、ある日、とてもとても恐ろしい怪物があらわれてしまったのです」


「ふたりは力を合わせて、その怪物を退治することにしました」


「ぶじ、怪物をたおすことができましたが、なんと、ふたりには呪いがかけられてしまったのです」


「その呪いは、ふたりの仲を引きさき、はなればなれに――――」




 丁度その時、ピピピッと電子音が部屋の中に鳴り響く。すると少女の手前には、透明な淡い青のパネルが出現した。そこに映しだされていたのはひとりの少女。こちらも白髪の少女と大差ない背格好をしていたが、髪は対照的に腰まで届く漆黒のような深い黒髪だった。


『こんな時間に連絡しちゃってごめんね。お兄ちゃん今そっちにいる?』


「ヒカルなら、夢さんとこ。今日は新曲の打ち合わせ」


「ぱぱー?」


『あんのバカこんな時間に不倫かっつーの。って寝かしつけてたのかごめん!』


 画面に映る黒髪の少女は、両手を合わせ謝るような姿勢をとっていた。


「ないない。あ、大丈夫大丈夫」


 白髪の少女はベッドに横たわる幼女へと顔を向け、同意を促すように語りかける。


「ひとりでもちゃんと寝れるもんね」


「ねー」


 幼女は無邪気な笑顔を浮かべ、短い返事で同意を返した。


「それじゃあ、ママはちょっと用事ができちゃったから、本の続きはまた明日ね」


「はーい」


「ん、いい子いい子」


 白髪の少女はそっと優しく幼女の頭を撫でてあげると、閉じた本を枕元へと立て掛ける。布団を軽く掛け直し、そのまま部屋の出口へと足を向ける。


『結局、師匠は私達の敵に回るしかないみたい……』


「そう……大丈夫? ちゃんと戦える?」


『それは――――』


 パタン……と静かに、部屋の扉は閉じられた。

 部屋に残された幼女はゆっくりと瞳を閉じる。暫くすると眠ってしまったのか、すぅすぅと小さな寝息を立てていた。


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