四:ご都合主義多いに結構!
あらすじ*呼び出した彼は斎。本当に恋をさせてくれるのか…
斎は茶子が立ち止まった正面にある家を見上げ、
「へぇ。結構でかいじゃねぇですか」
と感想を述べる。
「…お母さんに何て言えば良いんだろ。急に男の子連れてきたら驚くだろうし」
茶子の家には母しかいない。
父は単身赴任で海外だ。
独り言のように彼女が言ったのを聞いた斎は、当たり前とでも言うように伝える。
「ああ、それなら心配ご無用ですよ。茶子のお母さんにとって俺は、暫く預かることになった知り合いの息子ってことになってるんで」
「え、そんなご都合主義なの?」
「この手の話は大体そーなってるでしょう?漫画とか読んだことねぇんですか?」
「あるけど。あ、でもそーゆう話って多いかも」
「納得できました」
決めつけた言い方をして、先に家に入る。
「只今戻りましたー」
「ただいまぁ」
茶子もそれに続いて帰りを知らせた。
「お帰り。寒くなかった?」
キッチンから母親の和子が顔を出す。
「うん、制服だったから」
斎が茶子に耳打ちをする。
「ところで、お母さんの名前は何ていうんですか?」
「…知らずに知り合いの息子演じる気だったの?」
「細けぇことは気にするもんじゃねぇですよ。で?」
「和子だよ」
「ワコさんですか」
会話が終わったところで、タイミング良く母が話し掛ける。
「斎くんは?こっちにはもう慣れた?」
「はい、すごく良いところで嬉しいです。一生暮らしたいくらいですよ」
彼の完璧な笑顔が、母の胸を打ち抜く。
その隣にいる茶子は、半ば呆れたような目で斎を見た。
「あらぁ、それは良かったわ♪そーだ、茶子、お風呂沸いてるわよ。入ったら?」
「うん」
言われるがままに、風呂へと向かう茶子。
その背中を見送りながら、母は微笑んだ。
「…ふふ。斎くんが茶子を落としてくれれば良いんだけどね」
「えっ――…和子さん?」
聞き間違いだろうか?
けれど今、確かに――。
「あら?でもそーなったら、一生此処で暮らせるかも知れないわ♪――なんちゃって」
そう言うと、母は微笑みながらバスルームへ、タオルを持って行った。
読んで下さり有難う御座います。
更新が少し(?)遅れました。
すいません。
…個人的にお母さんと斎くんが書くの楽しいです。