最終話:隣
あらすじ*空へと消えた斎を想う茶子は…
「斎…泣いてたの?」
手の甲に落ちた雫を見て、茶子は呟いた。
「ごめん…ごめんね…」
*
次の日の朝、茶子は制服に着替えて神社へ向かった。
「なに、この音…?」
近づくほど大きくなる機械音。
嫌な予感が実現された。
「!!!」
斎のいた神社は取り壊されていたのだ。
「なっ…どーして壊してるんですか!?」
ヘルメットを被った男に訊く。
すると彼は、茶子の頭をポンと撫でて言った。
「此処はなぁ、もともと壊れそうで危なかったんだよ。誰か下敷きになったら大変だから、撤去しようってことになったんだ」
「そんな……」
家の前まで戻ると、がくん、としゃがみ込んだ。
絶望が茶子を包む――。
「斎…もう会えないの、解っててキスしたの…?ずるいよ、そんなの…馬鹿ぁ…」
「何言ってるんです?」
突然背後から聞こえた声に驚いて振り向く。
そこには――。
「…斎?」
幻だと思った。
けれど彼が、茶子と目線をあわせるためにしゃがみ込み、頬を撫でて気づく。
「何でいるの…?」
「いちゃ悪ぃんですか?」
相変わらずの憎まれ口。
茶子はそんなことお構いなしに抱きついた。
「うおっ!?」
「バカッ…馬鹿ぁ…私、お見合いなんてしないからねっ…」
斎はそっと彼女の頭を撫でた。
「撤去って言われても、神社ごと潰されるなんてごめんでしょう。だから慌てて引っ越してたんです」
「…何処に」
「そりゃあ勿論」
斎が見上げた。
つられて茶子も見上げる。
「『ウチ』にですよ」
――数年後。『吉池グループ、社長独身のまま海外へ進出!』という記事が載った新聞の横。
飾られた写真の茶子の隣には、確かに“彼”が微笑んでいた。
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
読みにくい部分もあったかと思います。
次の作品ではもっと上達したいと思っておりますので、どうぞ宜しくお願いします。