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なんだか少し様子がおかしかった。
外を歩いていて、だれもが同じ方向へ向かって歩いていた。
それと、なんだか道を曲がってはいけないような気がする。
ただ果て無く続くように見えるこの道を、ずっと進んでいかなければいけないような気がする。
でも、もうどれだけ歩き続けただろう?
あとどれだけ歩けばいいのだろう?
少し脇道へそれて気分を変えたっていいじゃないか。
そう考えて考えて、結局曲がらないまままたしばらく歩き続けた。
みんな僕と同じようにただまっすぐ道を歩いていた。
1人をのぞいて。
彼は突然左へ曲がると脇道へそれていった。
「曲がってもいいのか」
やっと曲がる決心がついて、彼が曲がったところで僕も曲がってみた。
そこには誰もいない、ただまっすぐで、少し暗い道が続いているだけだった。
誘われるような感覚と、進んではいけない危機感が同時に押し寄せて僕はそこで立ち止まってしまった。
正面には暗い道、右を向けば明るい道、僕はどちらへ進めばいいのだろう?
そう考え、立ち止まっている間にも他の人は僕を追い越し先へ進んでいった。
立ち止まってばかりもいられない。
僕は意を決して正面へと歩き始めた。
しばらくして標識のようなものが見えた。
【お前の道 振り返って二百メートル先左方向】
なんだこのふざけた標識は。
「標識、みた?」
頭上から声がする。
「見たなら、どうすればいいかわかるよね」
家の屋上に誰かがいた。
その人は人の頭のようなものを抱え、ちょうど脳みそのあたりから何かをスプーンですくって食べていた。
「ちなみにこれはプリンだ。君も食べるか?」
「要らない」
「美味しいのに」
そういう問題ではないのだけれど。
「それはそれとして、この道は君が進む道ではない。すぐに引き返すべきだと言っておくよ」
「どの道を進もうが僕の勝手だ。君が決めるもんじゃない」
そういって無視しようと決める。
「君はこの道がなんだかわかっているのか」
「知らない。立ち止まっちゃいけない、進み続けなきゃいけない道なのはわかる」
「そう、人は皆この道を人生というんだ。その道をそれて、君はどこへ行くつもりなんだい」
「僕は僕が選んだ人生を歩むだけだよ」
これ以上構わないでほしかった。
僕の勝手だ、だれだかわからないような人に指図されたくはない。
「皆がそうやって人の話を聞かないから、ひどいことになるのさ」
何か意味深なことを言ったのが気になって振り返ってみたものの、もうそこには誰もいなかった。
「夢か」
なんだか、前にも似たような夢を見た気がする。
そういえば、僕の将来の夢って何だっけ?