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「なんか年末で世界が終わるらしいよ」
突然誰かがそう言った。
誰が言ったのかと思ったら自分だった。
「何をいきなり」
「自分でもよくわからないけど」
「その根拠は?」
「何だろう、神様がそう決めたから?」
いきなり頭の中にそういう情報が入ってきた。
それを僕は予想ではなく、妄想でもなく、確固たる事実として受け入れていた。
「なんだそれ、ただの妄想だろ」
彼は僕が突然妄想を言い出したとしか思っていないようだった。
「それでさ、ボールを前に蹴ろうと思ったのにスカしちゃってさ」
「お前人の話をまじめに聞けよ」
「まじめなこと話すなら聞いてやるよ」
「僕はまじめな話をしているつもりだよ」
しばらく沈黙があった。
「原因は?」
「何の?」
「世界が終わる理由だよ。隕石か?戦争か?それとも他の何か原因か?」
そういえばなんだろう。
少し考えてみても、まったく思いつかない。
「なんだろうね?」
「お前も知らないのかよ」
「世界が終わるとしかわからないし」
彼がため息をついたのが聞こえた。
「それじゃあ信憑性ゼロじゃねーかよ」
確かにそれもそうだ。
人に信じてもらうにはそれなりに根拠がいる。
「とりあえず、俺はもう寝るからな」
「明日もバイトだっけ?」
「年末だからな。稼ぎ時だ」
「じゃあ、頑張ってね」
電話が切れる。
スマホをベッドへ放り投げ、背もたれに深くもたれかかる。
世界が終わる理由、か。
案外、簡単な理由だったりしてね。