「言葉にすれば嘘になる」(書き出し.me)
「言葉にすれば嘘になる」
私の告白を聞いた彼は、『そっか』とだけ呟くと、立ち去ろうとした。
だから慌てて『返事もらえると嬉しいなっ』と言ったのだけれど、そんな私への言葉は、私には理解出来ないものだった。
「言葉にすれば嘘になる、ってどういう意味なの?」
「そのままの意味だよ。
僕は君が好きだ。だけれど、好きと言ってしまえば嘘になる。
僕は君が嫌いだ。だけれど、嫌いと言ってしまえば嘘になる。
加えて言うなら、好きでも嫌いでもないというのも、嘘になってしまうね」
「……訳、分かんないんですけど。
お願い、ストレートに言って良いから。
私と付き合ってくれたり、する?
それとも、私はそういう対象として見れない?」
自分でも分かる位、私の声は震えていた。
もう胸に秘めたままには出来なくて、こうして屋上に呼び出してはみたけれど。
やっぱり隠したまま、今まで通りの関係を続けていた方が良かったのではないかと。
今だって、友達だから、傷つけないようにはぐらかそうと、しているのだと思ったから。
でも――。
「はぁ。
悪いけど、もうこの辺にしてくれないか。
でないと、どうなったって知らないからね」
そういう彼の言葉もまた、震えていた。
もっとも、今のセリフを聞くまで気付かない位に、私は緊張していたんだけど。
(『どうなったって知らない』なんて。
そんな事言われたら、期待せずにはいられないじゃん)
「だったらさ。
言葉じゃなくて、行動で示してよ。
それなら、嘘にならないでしょ?」
「……後悔するなよ?」
そう告げる彼の暗い笑顔に、私は僅かの恐怖と、多くの期待を抱いたのだった。
迷いましたが、あえてココで止めてみました。
普通に考えれば、いきなりDキスとかなんでしょうが、彼の場合は……(意味深)