「さあ、お前の罪を数えろ」(書き出し.me)
「さあ、お前の罪を数えろ」
閻魔大王と思われる人物?にそう言われ、私は素直に答える事にした。
なぜならば、己の罪から逃げるような真似はしたくないし、また出来るとも思えなかったからだ。
「726万飛んで892の罪を犯しました」
「……いや、そんなに多くないぞ。
お前の罪の数は、2762個だ。
どこをどうやったらそんな数になる?」
(あれ?)
目の前の人物?が、本当に閻魔大王なのか自信がなくなってきた。
私の人生を知っている筈なのに、なぜそんな少な過ぎる数を言うのだろう?
「私は若い頃、戦場で多くの敵兵を殺しました。
生まれた身分ゆえに将とまではなれませんでしたが、身体が衰えた後も、軍師として国に貢献してきました。
ですがそれは、戦略を立てるごとに、数百数千数万の敵兵を殺戮してきたという事。
この手で直接殺したのではなくても、間接的に殺した事に変わりは有りません。
私は多くの人を、殺してきました。その推定人数をその他の罪に合わせると、726万飛んで892件になる筈です。
……私は国の為という大儀名分で敵兵や敵国の息の根を止めてきた、大罪人です。
容赦なく、地獄に落としてくださいませ」
そういうと私は、閻魔大王?に最敬礼をした。
そして、判決が下るのを待った。
「……国の為など、所詮は人間が作り上げたまやかしに過ぎない。
罪とは、いかなる理由で有っても、自らの手で行ったものなのだ。
自らの欲望の為に人を騙したのなら別だが、お前は職務を全うしただけだ。
よって、2762個の罪となる」
その言葉に思わず顔を上げると、彼は自分のあごひげを撫でながら、私に笑いかけた。
「よし、お前への罰は、地獄送りとする。
ただし――獄卒としてな。
職務上必要とされた戦略立案ですら、良心の呵責に苦しんできたお前には。
悪人とは言っても、その魂を痛めつけるのは苦しい事だろう。
それこそがお前への罰だ」
唖然とする私に、彼は最後に。
「丁度先日、獄卒が一人発狂して、畜生道送りとなったばかりだからな。
お前がここに来たのは、丁度良かったという事だ」
と笑顔のままで告げると、部下に私を連行しろと命じ――それが私が彼を見た最後だった。
罪の数にインパクトを持たせて、その流れで書きました。