「結局自分のことしか好きじゃない人間なんだよね、君っていう人間は」(書き出し.me)
なんと、一年ぶりの更新です。
ちょうど、去年の今日、前話を投稿しました。
これからは、もっと書いていきたいですね。
「結局自分のことしか好きじゃない人間なんだよね、君っていう人間は」
彼は手すりに背を預けると、ため息をついて、そんな事を言った。
呆れたような、疲れたような、今まで『何度も見て来た』表情。
……あぁ、『また』なのかな。そう思うと寂しかったけれど、それでも『いつも通り』に言葉を返した。
「えー? ライくんと私、色々してきたよね? キスとかエッチとかさ。自分の事しか好きじゃない人がさ、そんな事できると思う?」
どこかおどけて、どこか誤魔化して、無かったことにしようとして。
「それだよ、それ。結局のところさ、君にとって付き合うってのは、『付き合ってあげてる』って事なんでしょ? キスしてあげてる、エッチしてあげてる、ってさ。俺の事、アクセサリーか何かとしか、思ってないだろう」
……失敗して、嫌われた。
でもまぁ、ある一点を除いて、本当の事だから、仕方ないとは思うけれど。
自分が一番大事なことも、ライくんをアクセサリー感覚で見ていたことも、本当の事。
付き合ってあげてる、そういう意識が無かったとも言えないけれど。
私が最低なのは、確かにその通りなんだけど。
それでも、一つだけ言わせてもらえるなら。
私が、『そばにいて欲しい』と思ったのは、彼だけだったという事。
彼じゃなかったら、少なくとも身体を許してはいなかったという事。
形が歪だったけれど、有り方が間違っていたけれど、失って初めて気づいたけれど。
私か好きなのは、『自分のことしか』じゃない。
彼のことだって、好きだった。
後悔する気持ちが、あの日の夢を、何度も何度も、私に見せつける。
取り返せない過ちを、突き付け続ける。
『彼女に付き合ってあげてる』、そんな同情で構わないから。
『抱いてやってる』、そんな欲望のはけ口でも構わないから。
私の事なんて、都合の良いアクセサリーだと思ってくれて良いから。
雷悟くん、私ともう一度、付き合ってくれませんか?
もし、そんな事を言ったなら、彼はどんな顔をするだろう。
もし、そう言えたとしたら、よりを戻すことが出来るだろうか。
もし、もう一度その腕を掴めたなら、二度と離したりなんかしないのに。
ふと、気付く。
いつの間にか、自分を大切だと思えなくなっている事に。
彼のことしか、好きじゃなくなってる自分に。
形を変えても、やっぱり歪で、間違った想い方をしている。
そんな、変わらずバカな私に、呆れつつも諦めた。
結局のところ、あの頃から壊れていて、今は違う壊れ方をしていて、昔も今もまともにはなれないままで。
どうして、こんな私なんだろう。そう思わずにはいられないけれど。
それでも、これが私という生き物だ、そういう事だと思うから。
「雷悟くん、私の全てを、貴方だけのモノにしてくれませんか?」
彼を待ち伏せして、そう頼んでみたら。
彼が驚いて、信じられないモノを見たような顔をしてくれて。
……それがなんだか、とても嬉しくて。気付くと、返事も待たずに抱き着いていた。
「もう一度、よろしくお願いします」
ドキドキと脈打つ鼓動が、彼にも伝わると良いな。
そう思いつつ、私は腕の力を強めたのだった。




