陸
夕暮れに染まる帰り道。
宮間と毛谷は、雑談をしらがら歩いていた。
「この後、お前暇」
「とくにやることはないよ」
「じゃー決まり、後でお前の家に遊びに行くんでよろしくー!」
「今日お母さん残業で遅くなるって。今は妹しか家にいないよ」
「ざんねん。今日も晩飯ご馳走になろうと思ったのにー。お前の母ちゃんのご飯美味しいからな」
そんな事を何気無く話している間に、宮間は家の前に到着していた。
「そんじゃ、またあとでいくわ!」
そう言うと毛谷は、また真っ直ぐに歩いて行った。
今日の学校生活は宮間にとっては、新鮮そのものだった。
皆事情を把握していたから、何かと補助をしてくれ、すぐに宮間もクラスに溶け込めた。
それにしても――宮間は朝以来、山音とは話せないでいた。それは休み時間の度に、クラスメイトが宮間を心配して、話しかけてきたからである。
そして自宅に帰還したという訳だ。
宮間は家の入口である引き戸を開けた。
玄関に足を進め、靴を脱ぎながら、
「ただいまー」
と一言言ったが、返事がなかった。
いつもなら「おにーちゃんおかえりー」と居間の方から聞こえてくる。多分、寝ているかテレビでも見ているのだろう。宮間はそう思いながら、廊下を歩き居間への扉を開けた。
「ただいまー」
静寂な空気が流れる。
居間にある窓ガラスの先には庭が見える。
宮間は不思議なことに気がついた、窓が空いている。全開ではなく、空気の入れ替えをするときに開ける幅くらいだ。
そして妹の姿は――見当たらない。
居間じゃないなら……トイレか。
宮間は窓を閉めると、二階にある自分の部屋に向かうことにした。
数分後、普段着に着替えた宮間は居間でテレビを見ていた。
これといって面白い番組はなかった。
妹がいない――違和感を抱きつつ、宮間は立ち上がりトイレへと向かった。
トイレは玄関から一本の廊下を曲がり、その道沿いにある。
宮間はフローリングの廊下を進み、角を曲がった。曲ると廊下は奥へと続いている。
そして、視線を下げていた宮間はあることに気づいた。
誰か……倒れている。
素早く近づいた宮間は、倒れた人を抱き上げた。
生臭い錆びた鉄の臭い。
手に伝わる僅かに感じる温かい液体の感触。
宮間は抱えている人の顔を見ていた。
妹だ――
眠っている――静かに、淑やかに。
宮間は心臓が砕け散る感覚に襲われた――
目線を腹部に下げると……
胸辺りの服が引き裂かれ、
剥き出しになった青みのある皮膚からは、流れる血……
そして――
宮間は一本の糸が切れた見たいに、ぷつんと意識が途絶えた。
ゆっくりと落ちる瞼。
宮間は床に儚く倒れながらも、最後まで残っていた感覚があった。
腕の中にある重み――
ご視聴ありがとうございました!
これで第一章は終わりです!
アドバイス、感想を書いていただけるととても嬉しいです^^
次回からは、第二章に突入です!