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小晴町の猫の呪い  作者: 虹 色色
第一章   『混沌』
4/9

 夕方になり、病室は茜色で染る。

 毛谷が帰った後、すぐに母親が来て少し話をした。どうやら後二日で退院できるらしい。そして窓辺に方にあるコンパクトな机に、果物やお菓子などを置いていった。

 母親といっても母親なのかすら分からない宮間。だが、母親を見ると妹と同じ温もりを感じてた。

 多分、母親なのだ。宮間は自然とそう思えた。

 夕日をベットから眺めていると、隣からカーテンのレールを滑る音が聞こえた。

 「少し話をしないかい、少年」

 顔を反対に向けると、白髪の老人が宮間を穏やかに見ていた。

 「こっ、こんにちわ」

 宮間は恐る恐る一礼をした。同じく老人も一礼をした。

 「長い間、病室にこもっていると暇で仕方なくてな。話し相手を探しているのだよ」

 「はっ、はー」



 たわい無い話が続いた。

 老人の過去の武勇伝。病院の生活のこと。挙句は、釣りの話し。老人は釣りが趣味らしいが、もう何年もやれていないそうだ。

 すると老人は毛谷の話題に移った。

 「君は良い友達を持ったね。大事にしなさい」

 「はい」

 老人は(にこや)かに言った。

 「ところで、彼はあの事件の話をしていなかったかい?」

 「えっと心臓()()き事件でしたっけ?」

 「そうそう。――今年がその年だったのか……忘れておった」

 老人の顔からは笑顔が消えた。

 宮間はまだ記憶の一割も思い出していない。そのため彼らの話す『心臓刳り貫き事件』の詳細を一切、理解できないでいる。

 それよりも毛谷の声やっぱり聞こえてたか、と宮間は苦笑気味になる。

 「あの、こんなこと聞くのは無粋かもしれませんが――その事件ってなんなんですか」

 すると老人は目を細め夕空を見つめ、話しだした。

 「三年に一度起きるんだよ、この事件が。いつから始まったのかは知らんが、ワシが生まれる前から起きているんだよ。最初は誰かの仕業と皆は言ったが、結局は犯人、証拠すら見つからなかったらしい。」

 すると一拍置いて、老人は話を続けた。

 「すると皆は言い始めた――呪いだと」

 「呪い?」

 宮間は思わず話に割り込んでしまった。

 老人は小さく頷いた。

 「犯人が分からないとして、同じことが同じ周期で起きたらどう思う少年」

 「えっと……それで呪いですか」

 「そう。しかし呪いといってもそれは自己暗示かもしれないがね。でもこれだけ分かっていることがあるんだよ……」

 突然、強風が病室に入ってきた。窓ガラスを揺らし、カーテンを仰ぎ。

 奇妙なことにカラスの鳴き声まで聞こえてきた。

 「しっ、閉めますね」

 そう言うと宮間はゆっくりと立ち上がり、窓を閉めた。

 するとタイミング良く看護師が、「元気ですか、皆さん」と明るい声で部屋に入ってきた。

 「……今日の話はここまでにしよう」

 老人は静かに言うと、看護師の方へ顔を向け、話しだした。

 宮間は窓ガラスに触れ、老人が言いかけたのって、という心に(わだかま)りを作り出していた。

 まーまた聞けば良いのかな、宮間は自分に言い聞かせ納得した。

 ふと、外から見上げる視線を宮間は感じた。

 目を向けると人間ではない、茶、黒、白の模様を描いたそれと視線が合った。

 ベンチに座るそれは――『猫』だった。




ご視聴ありがとうございました!


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