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小晴町の猫の呪い  作者: 虹 色色
第一章   『混沌』
3/9


 翌日の正午、一人の客人が宮間を訪れていた。

 「おーす! 宮間元気だったかー」

 活気のある声の主は、宮間と同じ年齢に見える少年だった。

 「俺のこと覚えてるか? 親友の"毛谷(もたに)"だよ! まー忘れる訳ないかー」

 一人で笑っているのは、どうやら宮間の親友という人物だ。

 少しの間、唖然とする宮間を構わずに、話を続けた。

 「昨日、お前の母ちゃんから聞いたんだよ。お前が記憶喪失になったって。冗談かと思ったが本当らしいな。いつもはばしばしツッコミを入れてくるんだぜ、俺に」

 「えっ、ほ、本当?」

 「う・そだよー!」

 「……」

 「やめてーその視線。最近お前が良くする俺を無言で蔑むように見る目と変わらねー。親友をそんな目で見るなー、傷つくー」

 病室ということを忘れているのか毛谷は、大きな声で会話を続ける。

 途端、隣のカーテンの向こう側から「うるさいぞー」という優しい老人の声が飛んできた。

 焦った毛谷は、白い床に置かれた丸椅子に、ぱっと座った。

 悪い人じゃないみたい、と彼の行動を見るとどことなく懐かしさを感じる。宮間の頬が少し上がった。



 何分話しただろうか――

 一方的に毛谷は話をしていた。対する宮間も話の内容が分からないも、相槌はちゃんと打っていた。

 「ところでよー、どうして車にぶつかったんだ?」

 「分からない……」

 「あの日のことも全然思い出せないか?」

 「……」

 僅かに首を縦に振った。

 眉を寄せ、困った表情で毛谷は囁き声で続けた。

 「それじゃー、あの事件も覚えてないか? 『心臓()()き事件』」

 宮間は首を横に振った。

 「お前が車とぶつかったていうその日に、また起きたんだぜ」

 「えっ、また?」

 すると毛谷は椅子を別途に寄せて、宮間の耳元付近にひっそりと口を近づけた。

 「最初は今日から――二週間前くらいだ。老人ホームのおばちゃんがそうなってたんらしいんだ。朝見に行った介護師が見つけたらしいんだよ。そして二回目が三日前の道端に横たわるおじさん、ってな訳なんだよ」

 「!?」

 突如、脳内に突き刺すような熱を宮間は感じた。曖昧でぼやけた映像が脳裏に流れる。必死に両手で頭を抑える。

 「おっ、おい大丈夫か」

 勢い良く立ち上がった毛谷は、心配な声色で宮間を呼ぶ。

 荒い息を上げ宮間は、緩慢と上体を起こす。

 「な、何か思い出したのか?」

 しかし宮間は俯いた状態で、首を横に振った。

 今のは……、宮間は懸念を抱きながらも、顔を上げ毛谷を見た。

 「そっ、そうか」

 毛谷はそう呟くと隠し事をしている、何か言いたげな表情をした。

 すると毛谷は静かに立ち上がり、

 「そろそろ帰るわ。長居したら悪いし」

 そう言うと、手を振り、出口の方へと歩いて行った。

 宮間はドアが締まる音を聞くと、首を横の窓へと向けた。

 窓からは心地良い春風が吹き込んできた。




ご視聴ありがとうございました!


アドバイス、感想をお待ちしています!


よろしくお願いします!


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