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小晴町の猫の呪い  作者: 虹 色色
第一章   『混沌』
2/9

 目を開くと白い天井が映し出された。

 「おにーちゃん!?」

 宮間の傍らから、少女の驚きの声が聞こえてきた。

 「おにーちゃん! おにーちゃん。……やっと起きたよー」

 ゆっくりと声が聞こえる方向に顔を向けた。

 すると少女は瞬間的に潤んだ瞳を隠すように、掌で顔を覆った。ひくひくと優しい泣き声が部屋中に響く。

 「ここは……病院か……」

 掠れた囁き声で宮間は言った。

 ベットに横たわる宮間はゆっくりと首を動かすと、病室ということが分かった。

 桃色のカーテンが天井から吊り下がり、仕切りができている。

 頭付近から聞こえる、ぴーぴーという機械音。

 その隣には車椅子に乗った小学生くらいの少女。

 「――おにいちゃん、目が覚めてよかったよ。死んじゃったかと思ったよ」

 少女は瞳の大粒の雫を指で拭う。頬を赤く染め、本当に嬉しそうな表情をしている。

 「……」

 宮間は朦朧とした記憶を模索した。

 そしてゆっくりと口を開いた――

 「君は、誰……?」

 不思議なほどに冷静な面持ちで、宮間は少女と視線を合わせた。



 昼時だろうか、温かい黄色い光が病室に注がれる。

 宮間は上半身を起こしていた。

 「僕の妹なんだね君は……」

 宮間は頭に巻かれている白い包帯に手を当て、言った。"妹"は小さく頷いた。

 ――あれから妹は宮間の言葉を聞いて、また泣き出してしまった。しくしくと。

 それから数分が経過し、よっと落ち着いた妹はぐしゃぐしゃになった顔で宮間を見た。

 「おにいちゃんは……車とぶつかって病院に来たの。それで三日も寝てたの」

 「そう……なんだ。やっぱり何も思い出せない」

 妹は車椅子を前屈みに座り宮間の手に、小さな手を置いた。もう一方の腕で目をごしごしと拭いて、真剣な表情に変わった。

 「大丈夫だよおにいちゃん。ゆっくりでいいから思い出していこー! きっと記憶も戻ってくるよ! 私も頑張るよ!」

 「……それじゃーお願いしようかな」

 ぎこちないと思いながらも宮間は妹に、微笑みかける。

 重々しい黒い雲が吹き飛んだように妹は、首を傾げ上目遣いをする。

 その、妹の顔を見た宮間はとにかく一つだけ分かることがあった。

 この子の笑顔を見ると、胸の中が安堵する。



ご視聴ありがとうございました!


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