ライアーズ・センテンス 解答
思いっきり難産だった話の解答です。
これ書いていた時かなり鬱入ってたので‥‥‥。
精進精進。
さて皆様、解答の準備は宜しくて?
「では、聞きましょうか。」
「とんでもねーな、今回のは。」
「あら、どうして?」
「正気の沙汰じゃないって言ったんだ。関係の無い人間まで巻き込みやがって。」
まあ、そうね。自分で書いておいてなんだけど、今回の話は結構ショッキングだわ。
「‥‥‥説明なさい。」
さて、今回の話のキーが何処にあるか解る?
そう。犯人の「人数」よ。
「複数犯だな。」
「そうね。」
誰が見ても一目瞭然だけど、単独で犯行を行うのは不可能よ。あの短時間で、手際が良すぎるわ。
「行方不明になった浪川には、共犯者に指定出来る人物が存在しない。だから除外。荻野も同様。それを前提として順番に推理を進めるぞ。」
「はいはい。」
沢山の事柄が組み合わさってゴチャゴチャしている時は、最初からさらっていって、解っている事を抜き取って行きましょう。
「料理長・マネージャー殺しね。」
「まあ、本文中にもある通り、この時点で犯人を特定する事は不可能だ。何せ『全員にアリバイが無い』んだからな。」
「そう。じゃあ次。談話室の犯行。」
「ここで複数犯である事が示され‥‥‥談話室のみの犯行に限り、容疑者が絞られる。」
談話室を出てから戻ってくる迄の間、犯人が使用できた時間はかなり少ない。早業殺人は複数犯を疑わないとね。
「理由は?」
「談話室を出たメンバーの中にも、共犯者がいないとは限らない。だが真犯人は確実に、談話室で殺されたメンバーの中で死んだフリをしている。その他の人間はアリバイが存在するからな。」
談話室を出たメンバーは、お互いに監視し合っている状態だから、アリバイが成立する。必然的に、犯行を行えたのは行方不明の浪川か、談話室メンバーの誰かと言う事になる。さっきも言ったけれど、複数犯なので浪川は除外していいわ。
「談話室にいたのは‥‥‥朱鳥、耕史、昴、綾、乃愛、浩和ね。」
「浩和は無理だろ。赤ん坊だ。」
「じゃあ残り五人の内の誰か? 乃愛はどうかしら? 分散させる原因を作ったようだけど。」
「自分の息子殺すか、普通? それに、彼女の共犯になれるのは悠斗だけだ。複数による犯行なので除外。よって悠斗も自動的に除外だ。」
「そうなると‥‥‥あらあらとんでもない事になってきたわね。」
もうこの時点で大分絞れているのが解るかしら。続いて、食堂での犯行を説明するわよ。
「犯人が最初から潜んでいたケースはほぼあり得ない。」
「あら、どうして?」
「生存者達が犯人のいた談話室から完全に離れるまで、犯人は動くことが出来ない。食堂に先に着いていたとは考えにくい。」
「そうね。」
行方不明者を除けば、残りの全員の所在は明らかなのだから、当然と言えば当然ね。
「食堂の鍵は掛けられていたが、何故か犯人は入って来れた。食堂のメンバーに、もう一人共犯者がいた筈なんだ。共犯者は一番扉の側に立ち、食堂の外にいる犯人がブレーカーを落とすのを見計らって鍵を開け、真犯人達に混ざって犯行を行う。これで早業殺人が成立する‥‥‥これは、恐らく扉のすぐ側にいたと思われる人物‥‥‥修にしか出来ない。」
「食堂メンバーの共犯者は修ね。暗闇なのによくやるわ。」
「久也が最後に何か踏んだあれ、犯人の誰かが落とした暗視スコープか何かだろ。」
「ちっ。」
まあ、誰でも考えつく仕掛けよね。もうちょっと捻った方が良かったかしら?
「つまり、自動的に綾の関与が存在するって事だ。だが、そうなると談話室のもう一人の犯人は‥‥‥。」
ふう、長かったわね。漸く真犯人のご登場よ。よくもまあこの細長い綱を渡りきったわね、イツキ。
「真犯人は、秋吉朱鳥だ。」
「‥‥‥では、聞きましょう。久也が共犯にならない理由は?」
「視点だ。」
「語り手を変えたこと?」
「ああ。俺はこれまで、前半の朱鳥視点の心理描写部分を使用せずに推理が出来ている。‥‥‥と言う事は、一切信用する必要が無いって事だ。当然だよな? 『犯人』なんだから。実際、いる筈の無い人物について言及している。対して久也はその人物についての発言は一切していない。どちらかが、嘘の描写なんだ。」
複数の探偵を私が使用しない事が解っていれば、簡単に導き出せる答えよ。
「朱鳥は物凄い大嘘つきって訳ね。ふふ、何人騙されたかしら。」
「は?」
「こっちの話よ。」
もし余裕があるなら、動機にも挑戦してみなさい。‥‥‥これだけの事件を起こしておいて『ムシャクシャしてやった、後悔はしていない』なんて言うつもりは無いわ。
でもまあ、此処まで解ければ及第点。
もし「違う犯人で構築可能!」と言う方が居たら是非聞かせて頂戴ね。楽しみにしてるわよ。
ペテンも時には辛いのです。