完全に理解した!→→チョットデキル
「こんにちは。藤村としゆきです」
「陰野 希亜羅です」
「陰野くん、僕ね、昔は『完全に理解した』って思ってたのよ」
「今でも思ってるんじゃないですか?」
「……10代のころなんか、何者でもないのに、何者にでもなれると思ってたね」
「僕も思ってますよ?」
「いや、今思えば恥ずかしいよ。穴があったら頭だけ隠したいね」
「それ、面白いと思ってます?」
「と、とにかく、根拠なき全能感があったのさ。眠ってる才能を使えば、何でもできるってね」
「で、気づいたんですね? 自分がモブキャラだって」
「君が言うなよ。それで、知ったのが『ダニング・クルーガー効果』なんだ」
「長い名前ですね。なんですか、それ?」
「一種の認知バイアス(思いこみ)さ。チョー簡単にいうと、『実力と自己評価は反比例する』ってことさ」
「もっとわかりやすく言ってもらえますか?」
「つまり、実力不足な人ほど、自分に実力があると思いこむバイアスさ」
「え? でも、なんでそんなことに?」
「それはね、『実力を測るのも実力のうち』だからさ。だから、実力不足のうちは、実力を測ることができないんだ」
「う~ん、そうなんですかね?」
「そういうとき、人間は、自分を高く、他人を低く評価するものさ」
「ホントですか? それ」
◆ ◆ ◆ (´・ω・)_旦~~
「この状態を『無知の山』というのさ」
「じゃ、どうしろっていうんです?」
「ここから進むことが出来れば、今度は『絶望の谷』に下りるんだ」
「やな名前ですねw」
「それを乗り越えれば、ようやく『チョットデキル』状態になるのさ。ここで、実力はもっとも高くなる」
「へ~、結局、地道に努力しなきゃなんないってことですね?」
「そう。結局、あたりまえの結論になるね。努力と実力が比例するとは限らないけど、努力不足=実力不足にはなるね」
「はいはい。ようは、うぬぼれるな、実力をつけたきゃ努力しろ、ってことですね? 学校の先生ですか?」
「ところがね、陰野くん。まだあるんだ。この心理バイアスは、倫理観にも当てはまるんだ」
「倫理観? どういうことですか?」
「倫理観のない者ほど、自分に倫理観がある、と思いこむんだよ」
◆ ◆ ◆ (;´Д`)_旦~~
「そ、それって、どういうことですか?」
「つまり、悪い人間ほど、自分のことを正しい人間だと思ってるってことさ」
「え、うそでしょ?」
「ほかにも、憶病な人ほど、自分に度胸があると思ってる。心の冷たい人ほど、自分が優しいと思ってるのさ」
「そんなことないでしょ。きっと、としゆきさんが間違ってますよ」
「かもね。でもね、陰野くん。間違っている人ほど、自分が正しいと思うものさ」
「そんなことないですよ。僕、昨日も上司に注意されましたけど、僕は悪くなかったですよ?」
「向こうもそう思ってるかもよ?」
「いいえ、僕は間違ってませんでした!」
「……(悲)」




