『だが、それがいい』の元ネタ
「こんにちは。藤村としゆきです」
「今日の相方の、サトルです」
「だが、それがいい!」
「いきなりなんですか? としゆきさん」
「僕、このセリフ好きなんだよね」
「パチンコのやつでしたっけ?」
「サトルくん、高校生なのに、パチンコ知ってるの?」
「ゲーセンにあるんすよ。『花の慶次』のセリフでしょ?」
「そうだよ。もともと少年ジャンプの漫画なんだけど、パチンコで有名になった感じだね。『花の慶次』の主人公、前田慶次の名台詞だよ」
「これの元ネタは、って話でしょ? としゆきさん」
「よくわかったね。サトルくん」
「俺、予知能力あるんで。あんたがそう書いたんですよ?」
「と、とにかく、みんな漫画のセリフだって思ってるよね。実はね、この漫画はさ……」
「原作があるんでしょ?」
「先に言うなよ……。『一夢庵風流記』というタイトルの時代小説だよ」
「漢字ばっかのタイトルですね」
「もと脚本家の、『隆慶一郎』さんが書いた小説でさ、実在の人物、『前田慶次』の傾奇者っぷりが描かれてるんだ」
「傾奇者ってなんなんですか?」
「傾奇者ってのはね、派手な格好と振る舞いをする人のことなんだよ。現代風にいうと、いわゆる『パンク』といえるかな」
「パンクっすか? 俺、パンク音楽ならちょっと知ってますけど」
「パンクってのは、生き方、スタイルのことなんだ。反体制ってことだよ」
「反体制ってなんですか?」
「既存の価値観にしばられない、ってことだよ」
「その傾奇者ってのも、そうだったんですか?」
「もっとも大きな違いはね、彼らは命がけだったってとこだよ」
「命がけ? どういうことですか?」
「傾奇者たちは、自分の意地を通すために命を懸けたってことさ」
「え? なんで命を懸けなきゃなんないんですか!?」
「そこだよ、サトルくん。彼らは、現代の僕らとは、命にたいする価値観がちがうんだよ」
「まあ、たしかに戦ばっかりしてたイメージありますし。切腹とかしてたんでしょ?」
◆ ◆ ◆ (`・ω・)_旦~
「でね、原作者の隆さんがいうには、意地を通して生き残るには、格別の力が要るってね」
「まー、そりゃそうでしょうね」
「しかも、この力は、何の役にも立たないんだ。しょせん無益な力だってことさ」
「意地を通したところで、何にもならないってことですか?」
「そうだよ。命を懸ける価値なんかあるの? ってことさ。でも隆さんは言うんだ。『だがそこがいい』ってね」
「おお、ここでそのセリフが出るんですね!?」
「たぶん、彼の美学で、何にもならないことに必死になる。それが美しい、ってことなんじゃないかな、と思うんだ」
「美学ってなんですか?」
「美しさを追求するってことだよ」
「無意味なことに命を懸けるのが、美しいってことなんですか?」
「彼の弟子がこの漫画の脚本を書いたから、師匠の考えを反映したセリフを、漫画にも書いたんじゃないかな」
「脚本? そういえば、パチンコ台のすみに原作、脚本とか、名前書いてありましたね」
「で、このセリフ『だが、それがいい』はネットミームにもなってるよね」
「あ、それ、俺も使ったことありますよ。ネットで」
「このセリフは、言葉にしにくい美学を、わかりやすく表現したものかもしれないね」
「へ~。俺、さっそくパチンコで確認してきます」
「ゲーセン? お金使いすぎちゃダメだよ?」
「だが、それがいいんですよ。としゆきさん」
「責任者、出てこい!(汗)」
今回の相方は『プロメテウスの火を求めて』https://ncode.syosetu.com/n8702lp/から。
余談ですが、隆慶一郎さんが、本名の池田一郎名義で脚本を書いた作品が、YouTubeの時代劇
チャンネルにありました。




