4話
この世界に来てから、4日目がたった。
私たちはセントブルグの街に着くと、ニコは少し足を止めた。
「………。」
無表情だけど、少しだけ気持ちが分かるようになってきた気がする。
ニコは怯えてる。
人に剣を向けられることに酷く抵抗感を覚えるのだ。
彼は、悪魔であるものの心は優しい。
私は、そんな彼の境遇が許せなかった。
「そうだ!!ねえニコ、仮面をつけるのはどう?」
「……どういう…こと?」
みんなはニコを誤解している。
大魔王の末裔と言っても世界を仇なすことは出来ない。
それを知ってもらうのだ。
「例えば、ギルドカードって偽名でも登録はできるの?」
「……冒険者の中には投獄された経験があるならず者もいる。だから、身分を偽るものも多い。」
なるほど、冒険者ってこっちで言うと派遣社員みたいなものなのだろうか?
それで、日銭を稼ぐために働いてると考えると大まか合点が行く。
そして、ここは日本でもなんでもない。
身分を証明するマイナンバーカードのような厳正なものもない可能性が高いのだ。
「ニコはどうしてニコだって判別されるの?」
「……恐らく、この地獄の鎧と魔剣が原因だ。顔はヒューマンと変わらないから一目で分からない時もある。」
「ということは!」
「……な……なにをする!」
私はニコから魔剣を取り上げる。
物凄く重いし、刀に埋め込まれた目玉が不気味にこちらを睨んでいた。
きも!?こりゃあ魔剣士だって思われるわけだ……。
「今からこの装備禁止ね!」
「……なぜだ!」
「そんなの、狙われるからに決まってるからじゃない。鎧と剣を封じるだけであなたは無敵になるのよ。」
暴論だけど、これを付けてるだけでニコと思われるならつけない方がマシだ。
「ニコ、あなたはこれから私とパーティーを組んで人助けをしましょ!」
「……人助け?」
「そう!いい事をして、魔剣士ニコは慈善活動をする人間だって証明するのよ。」
今はニコはゴシップで嫌われてる状態だ。
1つの国がニコが良い奴だと伝えると……それだけでまるで角の色が変わったオセロのようにいくらでも変えられる余地がある。
これが、私がニコに対する恩返しだと思う。
「ただ!襲われても殺しはダメね!あんた殺すの躊躇しなすぎなのよ、最終手段でお願い!」
「……わかった。君を信じる。」
そう言って、ニコは鎧と魔剣をアイテムボックスにしまう。
そして、半裸になったニコは鉄仮面を被り腕を組んだ。
「これはこれで……変態みたい。」
「……ヘンタイ?ヘンタイってなんだ。」
ニコは半裸でしなやかな体を見せる。
腹筋は割れていて、ムダ毛もなく美しい体をしていた。
ヤバい……鼻血が出そうなくらい美しい。
「後で服は調達するか。」
「……む?やっぱ変か?」
私たちは王国へと足を運ぶ。
そして、入ってすぐのところにギルドがあったので、入ってみた。
「いぇーい!かんぱーい!」
「クエストですか?こちらから受注をお願いします。」
「なあ、お前……ゴブリンロードのクエストやらないか?」
……おお、以下にも冒険者ギルドって感じだ。
冒険者が酒を飲み、クエストを受注して仲間と語り合う。
かつてやったゲームの世界そのものでワクワクしてしまう。
私も、こういう世界に来れたんだと少しだけ異世界ムードを楽しんでいた。
おっと!見とれてる場合じゃない!
まずは登録しなきゃ……
「ニコ!あんた……ギルドの仕組みは知ってるの?」
「……知ってるさ。まずは登録を済ませてGランクからスタート、最大Sランクまで上げれて、それに合わせて仕事が分配される感じだ。」
「そうなんだ、じゃあ大体ゲームと同じか。」
とりあえず、受付嬢に登録手続きをしに行くとしよう。
もしかしたら、異世界特典や眠る才能があるかもしれないし。
「あの!登録したいんですけど…!」
「かしこまりました!では……ステータス鑑定をしますのでお名前を教えてください!」
「ナナミです!」
「ナナミ様……と!では、水晶に手を当てて念じてください!」
「……こう、ですか?」
そうすると、水晶が作動して私のギルドカードが作られる。
私のステータスが表示をされた。
ナナミ
レベル:1
職業:
攻撃:6
防御:4
素早さ:3
賢さ:18
器用:13
スキル:不明
んーと、これは……。
「あ………。」
すると、受付嬢は気まずそうに目を逸らした。
私は困惑して、受付嬢に尋ねる。
「あの…何がございました?」
「大変……お伝えずらいのですが、ナナミ様は戦闘面はほぼ期待ができません。採集クエストの適性が高いみたいですね!」
酷い!?私そんなに弱いの!?
そんな……現実でも雑魚なのに異世界でも雑魚だなんて。
私は、突っ伏してしまう。
「ナナミ様、後ろの方も登録ですか?」
「あ、お願いします。」
「分かりました、まずはお名前からお願いします。」
「……ニコだ。」
「「「ニコ!?」」」
わたしは、ニコの頭を叩いて制止した。
「すみません、この人たまに自分が魔剣士だと思い込んでるんです。カンダでお願いします。」
上半身裸だし……カンダタとつけようと思ったけど流石にそれはやりすぎなのでカンダとつけることにした。
それにしても、ニコは嘘はつけないのだろうか?
どうしてこう特定Sランクモンスターと狙われてるのにニコなんて言ってしまうのか理解ができなかった。
「……カン…ダ…?」
「ですよね!カンダ様、それでは水晶に手をお願いします。」
「……わかった。」
そして、眩い光が走ってギルドカードが作られる。
カンダ
レベル:65
職業:
攻撃:250
防御:195
素早さ:102
賢さ:210
器用:2
それを見て、受付嬢は驚いた。
「カンダ様!?ものすごい強さですね!」
「……まあ。」
「え、そんなにすごいんですか?」
「凄いも何も……物理はほぼ最強レベルですね!Sランクモンスターとも渡り合える、そんなポテンシャルを控えてます!まだSランクは無理ですが……飛び級でCランクから受注をお願いできるようにしておきます!」
そういうと、冒険者たちはこちらを見てニコに歓声を上げた。
「すげえー!これでセントブルグも安泰だな!」
「オーラもすげーもん、俺……あいつ誘ってくるよ!」
「うおーー!頼もしいぜ!!」
……なんという、月とすっぽんレベルの待遇の違いだろう。
やっぱりニコは凄いんだろうな。
でも、ニコはさぞ鬱陶しいのだろうと思って彼を見つめた。
「……(ポリポリ。)」
照れてる!ニコ褒められたことないからめっちゃ照れてる!
意外とこいつチョロイのでは?
さて、こうして正式に魔剣士とパーティを組んだ私。
ニコは頼もしい、頼もしすぎるくらいだ。
きっと、この先どんな敵が来ても対処出来るだろう。
しかし、先にたくさんの苦難があることをまだ知る由もなかった。




