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7、体力つくり。筋肉痛が治りません!


 魔法についての講義があった日からすでに1週間が経とうとしていた。俺は今……


「あと5周走りますよ!!」

「は、はい……」


 ランニングをしていた。毎日屋敷の周辺を走っているせいか領民からは変な貴族だと思われている。なんかひどくね?


「頑張ってね、ルーク様!」


 あとおばさま方からの温かい応援もある。


「これが終わったら昼ごはんですよ! ルーク様が好きなステーキを用意しますね!」


 運動後に油っこいものは無理だって!! そう言いたいけど言えるほど余裕はない。


「はぁはぁはぁ……」

「ほら、あと4周!」


 ってか、なんで料理長は息切れてないのさ!?


「私は鍛えてますからねー。さあ、ルーク様、頑張ってください!!」


 クッソォー!!



 ――――――



「……疲れた……」

「お疲れ様です。 今日の献立はステーキとサラダ、プロテインスープです」

「ありがとうございます。……ん?プロテインスープ?」


 ステーキは諦めたからいいとして、プロテインスープ?大丈夫なのか、それ。


「自信作なんですよ! 一度飲んでみて下さい」


 料理長の腕は確かなものなんだけどなんか不安なんだよなぁ……。


 ゴクン。






「旨っ!? 嘘、マジで!?」


 コーンポタージュみたいにとろみがついているスープ。とろみからは信じられないけど口当たりはあっさり。しかもプロテイン感がほぼ無い。


「プロテインの粉を片栗粉のように使うことで、とろみを出しております」

「なるほど……」


 流石は料理長。さっきは疑ってすいませんでした!


「運動後にタンパク質を取ることで筋肉の修復を早めることができるんですよ」

「なるほど」


 タンパク質か……。

 異世界ってザ・魔法!って感じだと思うでしょ?めっちゃ科学的なんだよなぁ、ここ。鍛え方とかだって科学的根拠に基づいているし。

 

「では次に筋トレをしましょうか」


まだ続くのー?もういいよ……。



 ―――――――――――――――――――――――



「あぁ……。朝か……」


 

 俺はベットの上でため息をつく。

 あの後怒涛の筋トレラッシュ。もう無理。筋肉痛で体全体がバキバキ言ってる。指一本動かすのだって無理なんだよ……。


「大丈夫です、昨日だって走ってましたし!」


 にこやかに言う料理長。

 昨日はまだギリギリ動ける痛みだったんだよ!!


「……無理強いはダメですね。今日はやめにしましょうか」


 えっ、料理長が神様に見える……!

※筋肉痛の原因は料理長の運動メニューのせいです。


「ただし、明日はキツめに行きますからね!!」


 訂正しよう。料理長はやっぱ鬼だ。


筋肉痛で痛むと言う理由で、一日ごろごろしようと決めた俺は、本を手に寝室へ向かった。が……


「ルーク、今日は鍛錬ないのだろう? ちょっときてくれるか?」


 父の一言で呼び止められた。


「あ、はい……」


 せっかくのごろごろタイムが……。

 ため息を飲み込み、俺は父の後を追いかけた。

父は接待室の前に行くとノックをしてドアを開ける。

「ランプロス嬢、こちらですよ」


 ドアの向こうに父が話しかける。俺は父越しに向こうを見る。


「えっ、テネルさん!?」

「ルーク様、こんにちは!」


 ニコニコ笑うテネルと父であるコルベラがいた。


「こ、こんにちは。……ちょっと父様、テネルさんが来ているなんて聞いてないですよ!」

「言ったと思ったんだがなぁ〜」


 にやけて言う父。確信犯だな、これ。


「私、来ない方が良かったですか……?」


 悲しそうに言うテネル。


「いえ、そんなわけではなく。その、ちゃんと準備してから会いたかったなと思って……。この服部屋着だし……」


 もごもご言い訳する俺に表情が晴れたテネルが言う。


「部屋着の方だと普段のルーク様の姿が知れるのでいいと思います!」

「そう言ってもらえて嬉しいです……」


 俺達の会話を微笑ましそうに見る父達。やめろ!同年代の子とこうやって話すの久しぶりなだけだし!そういうのじゃないから!


「私たちは仕事の話をするからルークはランプロス嬢を違う部屋に案内してくれるか?」

「分かりました、父様。テネルさん、行きましょう」

「はい!」


 俺は部屋を出て歩き始める。テネルはぴょこぴょこと着いてきた。なんか親鳥についてくるひよこみたいでかわいい。


「ここですよ」


 俺達が行ったのは中庭だ。


「わあ! 綺麗な花が沢山咲いてますね!すごい!」


 季節に応じてさまざまな花が咲き誇る中庭。()の趣味である。

 元々は母にプレゼントするために花を育て始めたらしい。それが楽しくなり趣味として育てているうちに中庭を埋め尽くすぐらいの花畑になったみたいだ。


 的なことを俺はテネルに伝える。

 

 「素敵です! 私も好きな人に自分で育てた花を渡してみたいなぁ……」

「テネルさんの花を貰える人はとても喜んでくれると思いますよ」

「そうだったらいいですね」


 幸せそうに笑うテネル。俺もつられて笑う。


「テネルさんは趣味とかあるのですか?」

「私の趣味は読書です! 前に買っていただいた『花咲く炎』を読んでから読書にはまっちゃって」

「テネルさんも『花咲く炎』読んでいるのですか!」

「"も"ていうことはルーク様も!?」


 二人で手を繋いで跳ね回る。イテテ‥‥。筋肉痛が痛い‥‥!

 柄にもなく喜んでしまった‥‥。でもそれぐらい趣味があったのが嬉しい。


「はじめて読んだことのある人に出会いました! とは言っても友達いないんですけどね……」

「私も同じですので安心してください……」


 なぜか傷を抉り合う二人だった。

 

 こうして俺たちは花の咲き誇る中庭でおしゃべりというオタクトークを父達が来るまで続けた。


「今度は、私のおすすめの本を持ってきますね!」

「楽しみにしてます!」


 父達の温かい視線など俺は見ていない。



 

読んでいただきありがとうございます!

プロテインスープは実際にあるみたいです。ただし私は作ったこともまずプロテインを飲んだこともないので味は完全に空想です。


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