6、待ってました!魔法についての講義
10月25日
やっぱり話が暗いことが気に入らないので、最後の方を書き直しました。
今日は、誕生日がおわって初の授業。とうとう魔法についての授業がある。
ああ!この日をどれだけ待ち望んでいたか!
るんるんした気持ちでいつも授業している部屋へむかう。
「魔法について講義いたします、フューリスです」
……そこにはまさかの料理長がいた。なんで? 今日料理の授業でもするのか……?
「えっ?どういうことですか……?」
「私はもともと戦闘職で魔法使いでした。訳あって今では料理長として働いてますが」
なるほど、料理長がやけに力が強かったわけがわかった気がする……。でもなんで料理長として働くことになったんだ?
考える俺を横目に料理長は話す。
「でははじめましょうか。ルーク様の属性は風と無属性でしたよね?」
「そうです」
待ってくれよ。疑問は一つずつ解決したいんだ。けど、料理長は止まらない。
「では、まず属性について教えますね」
魔法には属性が存在する。まず、基本の4属性の炎、水、風、土。4属性は戦闘職ならば必ず一つは持っている。そしてそれに加え、光闇、無属性などがある。
「風はその通り風を操ることができます。そして、無属性は空間を操る属性です」
「空間を操る?」
「はい。例えば……」
フューリスは手を横に伸ばす。すると裂け目ができ、その裂け目に手を突っ込んだ。
「このように空間を生み出したり……」
手を引っ込めると包丁を握っていた。この人、包丁をいつも持ち歩いてるのか?そう一瞬思った。
「こんな風に物を出し入れすることも可能です」
「凄い! めちゃくちゃ便利ですね!!」
「はい。他にも空間を歪めて目視しづらくしたり、瞬間移動みたいなこともできるようになります」
「ほんとですか!? すごい!」
めちゃくちゃ便利じゃん!無属性、サイコー!!
「ただこう言ったことは、鍛錬で少しずつできるようにしていくものですので今はなにもできませんよ?」
「……ですよね〜」
分かってたよ?分かってたからね!
「ルーク様も魔法を使ってみましょうか」
「はい!」
たのしみだなぁ!
「ではまず、両手を前に出してください。」
ヒューリスに言われるまま手を出す。
「では、『ラシュナー』と唱えてください」
「はい。 ラシュナー!」
俺が唱えた途端、何か生暖かいものが手から出ていき……
っいだだだだっっっ!?!?
めっっっちゃ痛い!!
全身筋肉痛みたいに痛い……!
誰だよ、簡単そうに魔法使ってた野郎は!?
筋肉痛もそうだけど、長距離走った後みたいに息切れしてるし……。
魔法らしきこと何も起きないし!
「魔法は体のエネルギーを魔力に変換させて出す物です。筋力、体力といったものが魔力となります。体力があり、集中して魔力を操作できて初めて魔法が使えるのですよ。だから体を鍛えることが魔法を極めることと同じになるのです」
「ハァハァハァ……つまり、戦闘職でも、体力が、ハァ……ない人は、魔法も使えないと?……ふぅ……」
「そういうことです。ルーク様はセンスはありますが体力が追いついていません。だから明日からはしばらく体力作りをしていただきます」
魔力って生まれつきあるまたは空中に漂ってるものだと思ってた……。ラノベの嘘つき!
「最初から打てるわけではないんですね……」
「確かに最初から魔法を放てる方も存在します。ただあまりにも少ない。だからそう言う人は間違いなく天才ですね」
前世にもいたなぁ。どんだけ頑張っても才能だけで覆してくる奴。
「ですが魔法は鍛練するほど伸びます」
ヒューリスは真剣な眼差しで続ける。
「技術は天才には叶わないかもしれない。だって努力しなくても出来ちゃうんですから。でも、何もしない人の体力が増える訳がない。だから魔法は努力の結晶だといわれます。魔力は少ないが技術はある天才ではなく、努力で魔力が多い人こそ尊敬されるんですよ」
前世は結果しか見てくれなかった。努力しても使えなきゃ意味がないから。
でも、俺は努力を評価するこの世界の方が好きだ。
「魔法の指導お願いします!」
ヒューリスはにっこり笑って言った。
「こちらこそお願いします、ルーク様」
こうして鍛練は始まった。
「にしてもルーク様は本当に体力が少ないですよね」
「え……。」
「同年代に比べても少ないと思いますよ? もう少し外に出て遊んだ方がいいのかと。やるなら鬼ごっことかかけっことか走る系がいいですね!今度友達と一緒になさってみてくださいな」
「まず友達いないんですけど……」
まずさー、領主である貴族の息子と遊ぶ庶民なんて実際いないんだよ!しかも領地内に貴族なんていないし。貴族とかでも俺の知り合いほぼ年上だし……。その人たちだって父の知人ばかりだし。うん、なんか泣けてきた……。
「可哀想……」
心底悲痛な顔でこっちを見てくるヒューリス。
憐れむなあ!!こっちが辛くなる……。
「また旦那様に相談してみますね」
すごく哀れな気持ちになった俺だった。
読んでいただきありがとうございます!