神樹の下で
薄れていた意識が徐々にハッキリとしてくる。
身体は仰向けになっているのが分かる。風の音、木々の擦れる音が聞こえ、時折閉じた瞼から光が漏れてくる。
どれくらい寝ていたんだろう。重くなった瞼をゆっくりと開く。
「………………」
言葉を失うとはこういう事だろう。
目の前に聳え立つ巨大な幹。見上げ、見渡しても終わりの見えない枝葉。
見たこともない巨木が視界のほとんどを埋め尽くす。差し込む木漏れ日をただ呆然と眺めていた。
木々の音に紛れて、人の声が少しずつに近付いてくる。声の方向に顔を向けると、黒に少し白が入った髪の巫女の姿をした少女が独り言を言いながらこちらに向かって歩いてくる。
俺が目覚めたのに気付き、心配そうに駆け寄ってきた。
「あの、大丈夫ですか?」
大丈夫ではない。何だこの光景は!?
少女の横に宙に浮いたカメとヘビがいる。そして少し警戒しながらこちらの様子を伺っていた。
「…………」
不思議な光景にポカンと口を開け驚きを隠せないでいると、さすがに少女たちも戸惑った表情をしている。
……いや、カメやヘビの表情なんて分からないんだが。
この状況に少しだけ慣れて心に余裕ができたのか、ふと大事な事を思い出す。
「そうだ、クシ。クシを、ネコを見なかったか!?」
「あっ!」
一緒にいた筈のクシがいない。焦る気持ちを抑えきれず、思わず少女の肩を勢いよく掴んでしまった。
「お、落ち着いてください!!」
少女に諭され、ヘビには威嚇され引き離される。
「不安なのは分かります。先ずは深呼吸をしましょう」
そう言って両手を握り、一緒に深呼吸をする。
目を開けると、少女がにこっと微笑みかける。
「私はシエル。この子達はトロとシーク、私の衛霊です」
「え、えいれい?」
「はい。神樹に祈りを捧げていたら、突然あなたが現れて。なかなか目を覚まさないので人を呼んでいました」
英霊? 神樹??
ファンタジー過ぎて話が全く入ってこない。
「それで、貴方の名前は? どうしてここに?」
「俺は――」
突然、会話を遮るものすごい衝撃。
シエルさんが瞬時に反応した防いでくれたが、明らかにこちらを狙った攻撃だった。
衝撃による煙が晴れ、攻撃してきた相手の姿が見えてくる。
威圧的な眼光と雰囲気を纏った男が、剣を片手にこちらの様子を伺っている。
「ハイドラ王、何故ここに!?」
シエルさんは男を知っているようだ。
「シエルか、そこを退け。その男を殺しに来た」
目的は俺のようだ。
状況も飲み込めてない、どうしてこんなことになっているのかも分からない。さっきも黒尽くめの男に訳も分からず巻き込まれたばかりなのに。
剣の男には何か事情があるんだろうが知ったことか!
思惑通りになってたまるか!
息巻く胸がじんわり熱を帯びていく。




