プロローグ
この日はいつにも増して夕日が赤みを帯びていた。
(カラスが鳴いてる。そろそろ帰ろうか)
なんてことを思いながら、今日も滞りなくバイトをこなす。
作業を一通り終え、タイムカードを切り、帰る前に買い物をする。
「想護くん、これ」
「すみません店長。いつもこんなに……」
「いいっていいって」
いつも内緒で店長の叔父さんに廃棄の弁当を貰う。本当に感謝している。
今日の袋は弁当とお菓子がいっぱいだ。両手に抱えて早足で帰って。なんてことはないいつもの日常だ。
少し歩けば見えてくる我が家。
【如月家】
1人で住むには広すぎるこの一軒家で唯一出迎えてくれるのは我が家の番犬、もとい留守番猫のクシだ。
だが最近は出迎えには来てくれない。いや来ることができない。
お腹が大きく膨らんだクシは部屋の隅からあまり動かずじっとしている。もうすぐ母親になるのだ、安静にしていなければいけない。
「ただいま、クシ」
ワシャワシャと撫で回すのもほどほどに買ってきた、もしくは頂いた袋の仕分けをしていると、不意にチャイムが鳴り響く。
何か宅急便でも頼んでいただろうか。
勿論たまに利用はするが、とくに何か届く予定はなかったと思うが……。
玄関に向かい扉を開けるが、そこには誰もいない。
(おかしいな? 確かにチャイムは鳴ったのに)
聞き間違いじゃないと思うが……。近所の子供がピンポンダッシュでもしたんだろうか。
そう思った矢先、後ろからガサゴソと物音とクシの唸り声が聞こえてくる。
慌ててリビングに戻ると袋を漁っている影があった。
黒い帽子、黒い服装、黒い靴。
全身黒尽くめの男がテーブルの上に土足で座っている。
窓から射す赤い夕日が、逆光により黒を強調している。
窓は閉まっているし、俺は玄関から来た。
いつ何処から入ったのか。何をしているのか。
状況が分からない、答えが返ってくるか分からないが、とりあえず男に問いかけてみる。
「……お、お前は誰だ。……何処から来た?」
男は一瞬動きを止め逡巡した後、袋からおにぎりを1つ取り出し質問を質問で返してくる。
「質問はそれでいいのかい?」
直後、テーブルを吹き飛ばしながらものすごい速さでクシの方へ飛んで行き、何処からか取り出したナイフの様なものでその小さな体を貫く。
「っ!? クシ!!!」
一瞬の出来事で身体が反応しなかった。
クシが刺されたという状況に思考が追い付き、身体がようやく反応する。
クシのもとへ向かい、ナイフを引き抜こうとするも、何故か刺さったまま抜くことができない。
「っなん! っっでだよ!!」
焦り、悲しみ、憤り、様々な感情がぐちゃぐちゃになって、無意識に涙が目に浮かぶ。
部屋が赤く染まっているのは、もう夕焼けなのか、クシのその小さな体から流れるものなのか見分けがつかない。
すると意識の外から、男が静かに手を翳す。
「悪いね。でも後は君だけだ」
その言葉に見上げた瞬間、あれだけ赤かった部屋が、いや視界が一瞬で真っ黒になる。光の一切がなくなった闇の世界に切り替わる。
視界が消え、さらに意識も遠のいていく。
薄れ行く意識の中、男の声だけはハッキリと聞こえる。
「また会おう」
(ふざけるな!!)
そう発した自分の声は、出せなかったのか、それとも耳が聞こえなくなったのか。
男の言葉に対する俺の返答は闇の中に消えていく。
そして俺自身も……
たった数分の出来事で、俺の日常はこの世界から真っ赤な部屋だけを残して跡形もなく消えてしまった。
小説を書くのは初めてです。
文章の拙さや、気になるところもあるかもですが
見て、読んで頂けるだけでもありがたいです。
続きが気になる方はブックマークして
お待ちいただけると幸いです。
どうぞこれからよろしくお願いいたしします。




