プロローグ
この日はいつにも増して夕日が赤みを帯びていた。
(カラスが鳴いてる、そろそろ帰ろう。)
コンビニのアルバイト。
作業を一通り終え、帰り支度をする。
買い物をし、店長の叔父さんに廃棄品を内緒でもらって、今日は両手にお菓子多めの袋を抱えて帰路に着く。なんてことはないいつもの日常だ。
少し歩けば見えてくる我が家。
【如月家】
出迎えてくれるのは我が家の番犬、もとい留守番猫のクシだ。
と、最近は出迎えには来てくれない。もうすぐ母親になるのだ、安静にしていなければいけない。
「ただいま、クシ。」
ワシャワシャと撫で回すのもほどほどに袋の仕分けをしていると、不意にチャイムが鳴り響く。何か宅急便でも頼んでいただろうか?
玄関に向かい扉を開けるが、そこには誰もいない。
(おかしいな、確かにチャイムは鳴ったのに。悪戯か?)
近所の子供がピンポンダッシュでもしたのだろうか。そう思った矢先、後ろから物音とクシの唸り声が聞こえてくる。
急いでリビングに戻ると袋を漁っている影があった。
黒い帽子、黒い服装、黒い靴。
全身黒尽くめの男が赤い夕日をバックに、より黒を強調している。
状況が分からない、答えが返ってくるか分からないが、とりあえず質問をぶつけてみる。
「……お、お前は誰だ。……何処から来た?」
男は一瞬動きを止め逡巡した後、袋からおにぎりを1つ取り出し口を開く。
「質問はそれでいいのかい?」
直後、ものすごい速さでクシの方へ飛んで行き、何処からか取り出したナイフらしきものでその小さな体を一突きにする。
「っ!?クシ!!!」
思考が追い付き、身体が反応する。
クシのもとへ向かい、ナイフを引き抜こうとするも、何故か刺さったまま動かない。
「っなん!っでだよ!!」
焦り、悲しみ、憤り、様々な感情がぐちゃぐちゃになって、涙がその目に浮かび上がる。
部屋が、辺りが赤く染まっているのは、もう夕焼けなのか、その小さな体から流れる血液なのか見分けがつかない。
そうしていると、ふっと男が手を翳す。
「悪いね。でも後は君だけだ。」
男を見上げたその瞬間、あれだけ赤かった部屋が一瞬で真っ黒に、光の一切がない闇の世界に切り替わる。
視界が消え、さらに意識も遠のく。
薄れ行く意識の中、男の声が鼓膜を震わせる。
「また会おう。」
(ふざけるな!!)
声が出ないのか、耳が聞こえないのか。
訳の分からない言葉に対する俺の返答は闇の中に呑まれていく。
如月想護の日常は、この部屋から、この世界から跡形もなく消えてしまった。
小説を書くのは初めてです。
文章の拙さや、気になるところもあるかもですが
見て、読んで頂けるだけでもありがたいです。
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お待ちいただけると幸いです。
どうぞこれからよろしくお願いいたしします。