追放されることはわかっていた
突然だが、家族についてふと考えることがある。
なぜどこの家族も親子そっくりなのだろうかと疑問に思うことがある。
顔が似てるからとか、体型がそっくりであったり、得意なことが一緒だったり。
遺伝子を受け継いでいるからそれは当然なのだろう。
しかし例えば、病院で自分の赤ちゃんと他の赤ちゃんを取り違えられたとしよう。
そうなったとき、親は取り違えられた子が自分の子ではないと気づくことができるのだろうか。
俺にはわからない。
しかし、どうしても自分はこの家の人間ではないのではないだろうかと思ってしまうときがある。
俺の名はアルレス=シュヴァリエ。魔法の名家に生まれた俺だが、不思議なことに魔法が全く使えない。
父も母も4人の兄妹も親戚も皆魔法のエキスパート。
俺だけが家で唯一魔法が使えない。
その上容姿も唯一の黒髪。その他これといった身体的特徴と家族と似ていない。
やはり俺はこの家の人間ではないような気がしてならない。
これは俺だけでなく家族もそうで、「こいつ実は本当の家族じゃないんじゃね?」的な視線を時々感じていた。
この15年間、本当に肩身が狭かった。
だから15歳の誕生日を迎えた今日、執務室に呼び出された俺は父から何を言われるか予想できてきた。
「というわけで魔法の使えないシュヴァリエ家の恥であるお前を、この家から追放する!」
やはりそうであったか。
大して驚くことはなかった。
「薄々気づいていました」
「だろうな。魔法だけでない。声も顔も髪も似つかなさすぎる。ここだけの話、母さんが他の男との間に身籠ったと疑ってもおる」
「母さんがそんなことするはずないだろ?」
「ふん、女なんてわからないもんさ。それはともかく何より気に入らないのは、シュヴァリエ家にもかかわらず魔法を一切使えないことだ。これ以上お前の面倒を見るのは勘弁だ。既に準備はできているのだろう?」
「ああ。できている」
子はいつか巣立っていくもの。
俺もこの家を出ていきたくて仕方がなかった。
父――もとい家族は成人となった俺に対して、最高の誕生日プレゼントを用意してくれた。
執務室を出た俺はすぐさま旅支度を済ませた。
手配していた馬車に乗り、屋敷を後にした。
月明かりの綺麗な夜。
ゆらゆらと馬車に揺られ、襲ってくる眠気にうとうとしながら王都の道を進んでいくのだった。
◆
初めて魔法を習ったのは5歳の頃。
そのとき俺には魔法の才能が全くないことが判明した。
家族からの絶望と呆れの眼差しをうけた。
そのときあたりから家族はだんだん冷たくなっていった。
この家に不要な人間であると薄々と感じ始めていたのだ。
追放されることはわかっていた。
しかしこれは不幸中の幸い。
突然追い出されるよりはマシということ。
15差の成人を迎えるまでは教育は義務である。
だからそれまでに猶予期間があった。
俺はその猶予期間の間に、今後一人で生きていくための方法を模索していた。
一番の問題は金銭面だった。
家を追い出されたその瞬間からほぼ一文無しの貧乏になる。
独立に失敗し借金まみれになれば、奴隷街道まっしぐらだ。
それは避けたかった。
そのために色々と調べた結果、とある学園に目星がついた。
王立リンガント学園。
完全寮制。生活費全面負担。ポイント制の実力主義制度。就職率100%。入学倍率1.0倍、ただし卒業率10%。
魔王国に対抗するための選りすぐりの冒険者を育成するための超一流のエリート学園である。
実際のところ、魔王国やら冒険者の育成やらは興味がない。
俺が目をつけたのは生活費全面負担という項目。
貧乏人の俺にもチャンスがあるということで、ここに入学することを即決した。
4月の入学式まで3ヶ月。
手切れ金として父から渡されいた貯金を切り崩しながら、王都での生活に順応していった。
そしてあっという間に3ヶ月は経過したのだった。




