温泉を目指していたら、雪山で遭難してしまった! 男同士だけど、こうなったら裸で温め合うしか……おや!? 幼なじみの様子が……!
オレは山小屋の中で、幼なじみのユウキと向かい合っていた。
「マスミ、本当にやるの?」
「ユウキ。凍死しないためには、これしか方法がないぜ」
お互い裸になってひとつの寝袋に入り、温め合う。
2人とも登山ウェアの防水性を超える吹雪を受けて、びしょ濡れだ。
信じられないくらい寒い。
ユウキも顔面蒼白だ。
このままじゃ、マジでヤバい。
「相手が男ってのが、ちょっと残念だけどよ。いくらユウキが、王子様系イケメンでもなぁ」
「それなんだけどさ。マスミこそ、ホントに男?」
「男だよ。こんな名前なのは、親父が好きな野球選手から名前を取ったからだ。髪を伸ばしているのは、美容師のオフクロからカットモデルにされるから」
「怪しいね。ボクらって幼なじみだけど、小学校から高校までは別々だったでしょ? 学ラン着てるマスミって、見たことないし」
「お前……まさかそれを確かめるために、オレをこんな山奥の温泉に誘ったのか? あの温泉混浴だから、女だったとしても大丈夫だと」
結局温泉まで辿り着けずに、遭難してしまったけどな。
「うん。マスミに付いてるかどうか、確かめたかったし。それに……」
ユウキはモゴモゴと、口ごもってしまった。
「ダメだよ、怖くて言えない……。ボクは小さい頃、よくイジメられてたよね。『ユウキって名前なのに、勇気がない』って」
「お前のユウキって名前は、優しい希望って書く優希だろ? 優しい子になるようにって、オフクロさんが付けてくれたんだっけ? あの宝塚大好きな、オフクロさんが」
「あ……。ボクの漢字どう書くか、憶えててくれたんだ……」
「当然だろ?」
「優しいだけじゃ、ダメなんだ。ボクは勇気が欲しい。小さい頃、身を呈してイジメから守ってくれたマスミみたいな勇気が。ねえ、真澄。ボクに勇気を分けてよ」
「勇気を分けるって……何をすればいいんだ?」
「聞かせてよ。キミがボクのことを、どう思っているかを」
オレはためらった。
これを言ったら、心地よい今の関係が壊れてしまうかもしれない。
だけど優希の真剣な目を見て、思ったんだ。
勇気がある所を、見せなきゃいけないって。
「好きだ。友達としてじゃなく、深い意味で」
「……ありがとう。ボクも真澄が好きさ。……おかげで決心がついたよ。本当の姿を、キミに見てもらう決心が」
優希はウェアのファスナーを、ゆっくり下ろしていった。
オレ達2人は、裸になって寝袋に入る。
そして、2人同時に叫んでしまったんだ。
『……デカい!』