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『夢』見た分だけ、子は育つ

追記。2023/11/22 歴史改変済みですわ。

追記の追記。2024/08/28 部分的書き直し済み✩°。⋆⸜(ू•◡•)໒꒱☆彡


矛盾だらけの人生だった。

優柔不断な性だった。

どこにでもいる様な、平凡の子。


あやふやな『自己』を持ちながら、

チグハグな『こころ』を捨てて。

それでも『表の仮面』を被る度、

身体の中で、何かがすり減っていく様な気がした。


この夜が何時までも明けないから、『私は』まだここにいて。

未だここから歩き出せないから、『彼女が』まだここにいる。

一度失われたモノは、二度と帰って来ず。

「苦しみ」に対する最大の妙薬は、『諦め』と『忘却』だった。


壊れていることにも気づけぬまま、夜に溺れる。

壊れたことすら知らぬまま、海に溺れた。

春も夏も秋も冬も、朝昼晩、晴れや雨すら永遠に失われた世界で、

今も『あなた』を苦しめているのは、果たして何なのか。




醒めない思考。開かない瞼。

足を引きずり込む暗闇と、海に呑み込まれてしまった『白』。

ありがとう、と。

大好きだったよ、と。

誰が書いたのかも分からない歌詞。

今日も母の代わりに、さざ波が歌っている。


耳元で劈く男の慟哭。

心を引き裂く女の嘆き。

どうして今更となって『ソレ』はこちらに手を伸ばし、『私』の頬を拭うのだろう。


枯れた涙。冷たい感触。

夜が怖い時の『呪い(まじない)』を、教えてあげるよ。

そう、嘗ての誰かが言った。

明けない夜はないからねと、口ずさみながら。

これからもずっと一緒にいようと、指切りまでして。


揺蕩う意識。閉じる(まなこ)

明らむ空。

光だす青。

「ほら、おいで」と、何かに引っ張られる。


———何か?

ならば、それまで私と『約束(ゆびきり)』していた相手は、誰だっけ……?


記憶喪失にしては鮮明に覚えていて、それでもよくある『事故』での話。

虫に食われた記憶の空洞で、何か、とても大事なモノを落した気がする。

おいで、おいで。そう、光の指す方へ引っ張られる度。

置き去りにされていく、『赤い表紙の本』。


無理に開こうとすれば、頭がひどく痛んだ。

でも、こうして何かと忘れるくらいなのだから。

……『コレ』は、きっと、そこまで重要なモノではなかったはず。





———物心ついた頃から、『苦い』ものは嫌いだ。

どれだけ好みのコーヒーでも、ミルクを入れなければ飲めやしない。

誰しも、決して、好きになれないモノは存在する。

子供の体と言うのは素直な分、時として何より無慈悲だった。


前世のタブレット錠剤が恋しい。

子供の味覚は大人より繊細で、敏感で。

苦くて、苦くて……独特な匂いまでもが、鼻奥を攻撃する。

良薬、口苦しとは言え……。なんだ、コレは……


「……今日は一段と騒がしいですね、顔が。冷めてしまう前、早く飲んでください」


F世界にまで中薬(かんぽう)を持ち込んだバカタレは、一体どこの、どの医師だ?

FがFな分……ここまで来ればもはや、中薬ではなく劇薬である。

(個人的に)見る分には愛らしいものの、どれだけ栄養価が高けれ、食べると苦々しいマンドラゴラ。


「ほら、早く」

「うっ」


……のスープ状薬。


前世が前世で思考回路こそ元大人でも、この身体自体がまだまだ幼いし……。こうして薬を持って来た今生の幼馴染と呼べるF産男子も、仮にもこんな美少女を前にして余りに無遠慮かつ無慈悲。

……だが今この時ばかり、その様な幼馴染ともかく。この度の脳内文明開化と、本日、扉の開く音と共に匂ったマンドラゴラ感を認知しただけで、アトランティアの顔がしわくちゃとなった。


未だ一寸ムズムズする、圧倒的お嬢様体勢と待遇。

でもそうやってベッド上のまま、呑気に読書している場合じゃないし、場合じゃなくなった、今日この頃。

幼馴染の登場。

手に持つそれにネコ科の如く反射して、一刻も速く逃げなければと、頭の中で警報が鳴る。


元より中々の虚弱体質であるアトランティアは知っていた。

それだけ値段と効能に比例して不味いのだ、と。

これだから、世のマンドラゴラってヤツは……


「ほら、早く」

「そう、せかさないで……」


後は、エイダン・クロー。お前お前、マジでお前。

にしても今日も今日とて、元祖ツンデレ幼馴染が全然デレてくれない件について。

医者の孫。

未来の伯爵。

クロー家、次期御当主様よぉ?

年老いた祖父の代わり、一族秘伝のやり方でメイク・ザ・漢方するにしても、せめて高麗人参あたりにしてモロテ……。


「ほら! 早く」

「大事なことだからって、三回もいらな、うっ…うぅ……ッ」


でなければ。若しくは、薬ついでに「おくすり飲めたね」も作ってくれよ。

頼むから。

アールノヴァが青なら、クローはシルバー紫。

出会い当初から見た目だけでも超絶クール系なのに、コイツときたら、何故性格までこんなに冷たいのか。


「……全部飲めました? うん、宜しい。よく頑張りました」


そうやって。嘗て無いほどのゲッソリ顔を晒すアトランティアに対し、エイダンはどこまでも通常運転だった。

そこまで燦々輝かずとも、美しいバイオレッドの瞳が流石の今では恨めしい……。

「小さな炎、聡明な、助け」と願われた名すら、豚に真珠だ。

お互いの前世いざ知らず。たかが数か月お兄さんだからと言って、何故こうも子供扱いされないといけないのか。


「おのれエイダン、貴様、今日の恨み。何時か絶対、訴えてやる……」

「ご自由に」


そんな七歳児の深刻な悩み。

大人扱いし過ぎても駄目だし、見下ろされても駄目な乙女の性。

元大人として自立、人並みになる以前の問題であり……。


このような招かざる客がセルフInしてしまった、本日の、お嬢様の寝室にて。

言葉と共に猫の如く、キリッ、と吊り上げられた藍の瞳。

それでもどこ吹き風で……シルバー紫少年は淡々「今日も馬鹿なこと言ってないで。薬飲んだら、早く寝ろ」と言わんばかりに本を取り上げ、乙女の体をベッドに押し倒す。


……が、場所が場所なはずなのに。傍から見て、類が友を呼ぶ現象というか、実にお互い、性もクソも感じられない仕草である。

なので、中身ともかく。こんなハーフ系美少女を前にして、医者の血ってホント凄い。

そして、子供の体と言うのも、ホントに神秘でいっぱいだな。とも、アトランティアは思った。



其れより、あの日から、特にここ最近。


普段何かと常飲している薬の副作用なのかは、定かではないが。それでも、こうして病み上がりの体は時折、朝昼問わず猛烈な睡魔に襲われる。

うつらうつら、揺蕩う意識。

冷たい手で前髪を一回撫でられ、そのまま意識が飛ぶ寸前。……耳元で、知らないはずの男の声がした。



ここまで読んでいただきありがとうございました!!

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