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私はモブ令嬢A?ポジなのに友人が毎回存在詐欺だと言ってくるのが誠に遺憾である。  作者: 雪 牡丹
第二章 始まりの春と宵闇の海辺街
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蒼き湖に眠るもの


湖の中心で波立つ水面。その黒い影は徐々に形を変え、やがて巨大な像のような姿を浮かび上がらせた。それは人の姿を模していたが、その表情は無機質でありながら、どこか憂いを帯びているように見える。


「湖の精霊像……?」


アトランティアは思わず呟いたが、目の前の存在は像とは明らかに異なっていた。その身体は石のようでありながら、波紋を生むほどの不思議な力を放っている。


「これは……『目覚めし守護者』ではありませんか?」


エマが険しい表情で声を絞り出した。


「目覚めし守護者?」


ルーカスが尋ねると、エマは静かにうなずいた。


「この湖を守る存在だと伝えられています。しかし、記録では、決して目覚めさせてはならない存在だと……」


アトランティアの胸が高鳴る。


「なら、どうして今に限って……」


エマは答えられなかった。ただ湖の中心を見つめる目には、何か不吉な予感が宿っていた。


その時、「守護者」の目が青白く光り、深みのある声が湖全体に響き渡った。


「我を目覚めさせた者は誰か……真実を求めし者よ、何を望む?」


声が響くと同時に、湖面がさらに荒れ、人々の悲鳴が遠くに聞こえる。アトランティアは一歩前に出て、僅かに震える声で答えた。


「私たちは……ただ、この湖の美しさを見に来ただけです。目覚めさせるつもりなんて、ありませんでした!」


守護者はしばらく沈黙した後、再び口を開いた。


「我を目覚めさせる意図がなき者よ。それならば、この湖に封じられた真実を知る覚悟はあるか?」


「真実……?」


ルーカスが眉をひそめる。


「何を言っている?」


守護者の瞳がアトランティアに注がれる。その光は彼女の心をまっすぐ射抜くようで、彼女は言葉を失った。しかし、その瞳の奥には何か懇願にも似た感情が宿っているように思えた。


「もし真実を知る覚悟があるならば、我の力を試せ。さもなくば、この地を去れ。決断は今しかない」


湖面の波はさらに荒れ、周囲の風が強く吹きつける。ルーカスがアトランティアの肩を掴んで低い声で言った。


「ティア、こんな危険な状況に深入りする必要はない。戻ろう」


しかしアトランティアは首を振る。恐れに勝る好奇心。その瞳には迷いがなかった。


「私は、この湖に何が眠っているのか知りたい。湖の精霊像に刻まれていた言葉、その意味も……」


エマは一瞬「やはりこうなるか」とした表情を見せたが、やがて覚悟を決めたようにうなずいた。


「わかりました。お嬢様がそうおっしゃるなら、私たちも共に参りましょう」


同時にルーカスも深いため息をつきながら、剣を抜く。


「全く、今日も相変わらず妹に振り回される人生だな……でも、守ってやらないとお兄ちゃんとして失格だからな」


アトランティアは微笑み、守護者に向かって一歩踏み出した。


「真実を知る覚悟はあります。その試練受けましょう!」


すると、守護者の目が再び輝き、湖の水が大きく渦を巻き始めた。水の中から浮かび上がる小さな島。その中央には古代語が刻まれた円形の祭壇が姿を現した。


「試練は始まる。この湖に秘められた真実を求め、答えを見いだせ」


アトランティア、ルーカス、エマの三人は、波しぶきの中、祭壇へと足を踏み入れる。その瞬間、空が暗転し、湖全体が青白い光に包まれた——。



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― 新着の感想 ―
どうなるんだろう? 試練クリアで何か覚醒イベ? チートへ? チート精霊をペットへ? 楽しみにしている小説なので楽しみです。 早く続きが読みたいです。 更新頑張ってください!
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