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私はモブ令嬢A?ポジなのに友人が毎回存在詐欺だと言ってくるのが誠に遺憾である。  作者: 雪 牡丹
第二章 始まりの春と宵闇の海辺街
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新たな始まり、1625年『春』

追記。

2023/11/23 元『設定集』からお話にリメイク。歴史捏造済み✩°。⋆⸜(ू•◡•)໒꒱☆彡


『今はもう昔の話。

 遠い、遠い、遥か彼方。こことは違う世界での、とある少女の昔話』


不運の定めは突然に、

ある冬の日のある家で、一人の女の腹から、かぐや姫の様な女の子が生まれました。

それがその家で生まれ落ちた少女にとって、全ての『不遇』の始まりだったのです。


「娘子だと? そんなモノ、子がいないのとも同然だ!」

「ようやく恵まれた子宝が女の子だったなんて……なんて、嘆かわしい」


昔々、今となっては昔の話。

かのお伽噺に出て来る、輝夜の君如く。その少女も生まれながらにして、母親によく似て、とても綺麗な子だったのですが。

所謂、古き良き日本の華族の血筋であり。現代となってもその様な『誇り』を捨てられずにいた大人たちが、そんな自分たちの世界で、終ぞ、その事を鑑みることはありませんでした。


お前のせいで、私は……。と、まるでありふれた呪詛の様に。

それこそ自分の腹を痛め産んで、始めこそは、我が子を見詰めていた母親ですら。日を追うごとに増す周囲の心無い言葉に疲弊して、周りに言われるがまま最終的に、少女をないモノの様に扱い始めたのです。


母を呼んでも無視をされ、多忙な父はそもそも家に帰って来ない。

だからそんな当時での、そんな環境下で産まれた少女にとって。物心つく前から犯していた過ちと言えば、その家で『女』の性で生まれてしまった事でしょう。


それだけ例え直系の実子であったとしても、昔ながらのあの家で。『女の子』が跡継ぎになることは、決してあり得ない不文律でしたから……。

ただ、それでも、



『努力さえ重ねれば、何時か主人公になれると思っていた。

 いつでもどこでも、それこそ物心ついた幼心からずっと。

 頑張ってさえいれば、何時か宝石になって愛されるはずだ、と。

 

 昔の私はずっとそう盲信していた、愚かな子供だった』



———ただ、それでも、今となって改め思い返せば。一体、それの何処が悪かったのでしょう?


「ねぇ、私」と、

過ぎた日々、もう二度と帰ることのない世界(いえ)を思いながら。今日も夢の中、頭の中でこそボソとした話を繰り返す。

人は簡単に人を裏切るけれど、現実(ソコ)に積み重ねられた『努力』は決して自分を裏切らない。

幾星霜、幾年月かけ重ねた時の分だけ、裏切れないのだ。と、

少なくとも『私』は、その事をよく知っている。

とも。


ねぇ、私。


だって世の中、結局。その時代での時折々で、石の上にも三年、三年も居座れば、それだけ温まると言うモノで。

嵐の後に、凪が来るように。一度死んだのなら、後は『次の死』が来るまで、生きるだけの話だ。

こんな見も蓋もない現実世界で、もう一度瞼を開けば、ほら、



「我が帝国、我が祖国。新たな『天才』の誕生に、万雷の喝采を」



ねぇ、今の私。

『あなた』もほら、聞こえて来るでしょう?

何気ない習いや趣味事だったとしても、嘗てのあなたが積み重ねた『努力』への称賛を。

『無関心』こそ『芸術(こども)の死』と呼ぶのならば、あなたほど年若くして成功した人間は、きっとこの世にふたりといない。

例えあの家や「この家」でなくとも、これこそ替えの効かない、唯一無二とした『あなたの価値』だ。


喝采と同時に、この三年間。

ここでの世間体では「悪魔に魂を売った公爵令嬢」だとか「才能の代わりに、人前に出られない呪いをかけられたノヴァのお姫様」だとか何とか……。

何も露知らぬ、存ぜぬ巷での人々はこんな『私たち』について口々、日々、好き勝手言ってくれているけれど、私は別に構わない。

美文も醜聞も厭わないし、気にもしない。

結局一度死んでまで渡り歩く世界が違えど、仮にも『人の時世』で……。口開く相手が貴族だとしても平民だとしても、扱き下ろそうにも面白ければ、何でもかんでも「どうせ既に死んだことのある身だし、今更となっては全て良し」と思うからだ。



「あのひと夏の熱から、お嬢様が今日もご乱心」



と。皆は言うけれど……。それでも(多分)誰にも迷惑をかけていないのだから、目を一寸瞑って欲しい。

その様な日々。

あの日から、三年。

そうやって、今日までの何気ない一日一日を好き勝手に生き。

私は……私が「今日」と呼ぶこの日も、三千世界の昼も夜も殺し、『あなた』と眠る。



———ねぇ、私と。今日も問う。

そして未だ、今も、人知れぬ私たちだけの世界で繰り返す。

あの時から私の『共犯者(かげ)』となった、私であり、私ではない『あなた』。

定め。

これが私たちの『運命(さだめ)』?


———嗚呼、これが『本当の仮面』なんだ。

と息継ぐ間もなく、周囲を欺きながら歩む事が、これからの、この世界での『私』の運命なのか。


……でも、例えそんな偽りの様で、偽りでない『行き場(せかい)』だとしても。

未だかつて、誰より不器用だった雪の精(あなた)に似合う『生き場』を。せめて、ここでの『私』が、作ってあげる。




これはそんな漠然とした新たな始まり、1625年『春』の空絵巻。

本当(あなた)』の夜が明けるまで。せめて、私だけでも『あなたが為の居場所(せかい)』となろう。

新たな旅路。本当の物語の『幕開け』は、ここからなのだ。


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