ドラゴン埋めばばあ
いせおじの謎昔話を嘘方言で作ってみました。
昔々あるところに大そう強いと評判のばばあがおったげな。
なんでも山をちぎって川をせきとめて池を作ったり
海を飲み干して干潟を作ったりと評判だったげな。
さて大きい巨人と中ぐらいの巨人と小さい巨人の盗賊団がおった。
これまた大変わるい奴ばらで村人達は困っておった。
村人がばばあに頼むとばばあは木の枝を片手に村にむかったげな。
巨人たちもばばあの噂を知ってたげ、小さい巨人と中ぐらいの巨人は怯えたげな。
大きい巨人は言いました。
「人間のばばあがそげな強いわけはねえ!
おめえ、ばばのとこさいけ!」と小さい巨人に命令したべ。
ずんどこずん
ずんどこずん (巨人の足音)
小さい巨人が行くとばばがシャベルを手にせっせと木の枝に砂をかけておった。
「おい、ばばあ。なにしてるだ?」
「ドラゴンを埋めてるだよ。おまえさんも手伝ってくれるかい」
「ひい」
小さい巨人は土からにょっきり生えた龍の角を見て悲鳴をあげたげな。
「やべえばばあだ! にげるしかねえ!」
小さい巨人は命からがら仲間の元へ戻ると事の仔細を話しましたべ。
中ぐらいの巨人は震えあがり、
「大きい旦那! こりゃ駄目だ! 遠くへいくべ!」
と大きい巨人に訴えたものの大きい巨人は言ったべな。
「人間のばばあがそげな強いわけはねえ!
おめえ、ばばのとこさいけ!」と中ぐらいの巨人に命令したべ。
ずんどこずん
ずんどこずん (巨人の足音)
中ぐらいの巨人が行くとばばがシャベルを杖に歌を歌っていたべ。
♪ねんねんころりー ねんころりー
♪土の中さの 龍はねんころりー
♪温かい砂風呂 ねんころりー
「おい、ばばあ。なに歌っているだ?」
「ドラゴンのレクイエムだよ。おまえさんも歌ってみるかい?」
「ひい」
中ぐらいの巨人は土からにょっきり生えた龍の角を見て悲鳴をあげたげな。
「やべえばばあだ! にげるしかねえ!」
中ぐらいの巨人は命からがら仲間の元へ戻ると事の仔細を話しましたべ。
小さい巨人と中ぐらいの巨人は震えあがり、
「大きい旦那! こりゃ駄目だ! 遠くへいくべ!」
と大きい巨人に訴えたものの大きい巨人は言ったべな。
「人間のばばあがそげな強いわけはねえ!
おらあ、ばばのとこさいく!」と大きい巨人がついに立ち上がったべ。
ずんどこずん
ずんどこずん (巨人の足音)
「おい、ばばあ。これがドラゴンとか言ってるだな?
ただの木の枝じゃねえか!」
「ドラゴンの角だよ。おめえさ、そったら大声だして危ないべ」
大きい巨人はむんずと木の枝に手をかけると思いっきり引き抜きました。
「わしの眠りを妨げる愚か者はだれだー!!!」
「え」
なんと大きい巨人が引き抜いたのは本当にドラゴンの角だったのです。
「ひぃやあああーー!!」
あっとうてきなぼうりょく
ドラゴンは大きい巨人を頭からがぶりといくと
巨人のあたまはこっぱみじんになったげな。
龍は巨人をばらばらにすると
「こんなうるさいところはごめんだ!」
と大空に飛んでいったべ。
実はこの龍、ばばが土に刺した木の枝を仲間の龍の角と思ってな。
「おい、ばばあ。こりゃあなんだ?」
「砂風呂だよ。おめえさも入ると良いべ。おらが砂かけてやるげな」
と気持ちよく砂風呂に入って寝ていたのだべ。
そんで巨人に角を引っこ抜かれて大激怒したのだど。
龍と巨人を騙すとはなんとも肝っ玉の強いばあさんというものだげな。
村人達は大喜びして
今でもその地域では砂風呂に木の枝を刺して魔除けにしてるということじゃげ。
これがドラゴンを埋めたばばあの話。
とっぴんからりのぷうぷう