ガリガリ君好きな勇者
俺はガリガリ君が好きだ。愛している。
だが人は俺の愛を理解してくれない。何故ならソーダ味以外を食べないからだ。いや俺だって最初は新しいのが出るたびに買っていたさ。けれどナポリタンで懲りたんだよ。やはり原点こそ最強であると気づいたんだ。いや気づかされたのだ。
まあ仲の良い友達と家族は知ってくれていると思う。何せ俺の朝ごはんはガリガリ君だし、夜ご飯のデザートもガリガリ君だし、家の冷蔵庫の十分の一は俺のガリガリ君なのだ。学校帰りの買い食いも、ガリガリ君一択しかないし、運動部でもないのに丸刈りなのだ。ちなみに顔も似ているらしいので嬉しい。
「ウワーーーッ」
それに例えば、ある日の下校中に突然足元に魔法陣が光って、異世界転移させられたとしても、俺は決して、ガリガリ君を手放さなかった。
転生神のお爺さんに「チートは何がいいかの」と聞かれた時も、迷わず俺はガリガリ君でお願いしますと即答したのだ。
「うーん困った、困ったのう」
とお爺さんが言う。どうやら僕に世界を救って欲しいらしく、ガリガリ君では役不足なのだとか。
「えっ……」
身体から力が抜ける。膝をつく。涙が溢れる。身体が震える。神様はガリガリ君が好きじゃない……?
「えっ、何でそんなに落ち込むんじゃ?えっ、ああいや、ほら、そう、ならば、氷魔法でどうじゃ?」
「何がですか?」
何の話をしているのか。ガリガリ君の話じゃないのか。どうすればお爺さんにガリガリ君の素晴らしさを分かってもらえるのか。
試食してもらおうにも、もはや手元のガリガリ君は全て食べてしまった。溶かしてしまって一滴でも零すのは最悪の大罪だから。
「うーむならば……錬金術はどうかの?自分で作れるようになるかもしれんぞ……?」
「俺が……ガリガリ君を……この手で?」
それは許されるんだろうか。発明してくれた偉大なる方々にお金を払わずに味わうのは罪ではないのか。それは……許されては、いけない事だ。
「お爺さん、貴方は……邪神なんですか?」
「一体何故そうなるのじゃ!?ガフッ」
俺は問答無用でお爺さんの胸を貫いた。ガリガリ君を食べ続けてきた俺は最強なのだ。神であろうと敵ではなかった。
「よし、異世界に、ガリガリ君を広めよう」
ガリガリ君魔法のガリガリ君転移を使えばいつでも地球に帰って来れるから、問題は無い。
そうして俺は、お爺さんの部屋にある、異世界行の魔法陣に足を踏み入れたのだった。