コネクション・トリック【駆け巡る稲妻の咄】
ぐらぐらと照りつく太陽を浮かべた今日は、最高気温三十五度。猛暑日を超える猛暑日だ........いや、なんか普通におかしいな、暑さで頭やられたか。私。
.....それはさておき、私、桜米実夜は今、とんでもなく困っている。.....正確には、隣にいるやつが困っている。とてつもなく。
隣にいる彼女、もとい堀谷詩星乃は幼馴染でいかにも女の子らしい顔立ちだが、十七歳にして世界的に有名なプロゲーマー『STAR』だ。主に対戦型のシューティングゲームを得意としていて、その実力は世界トップレべル。周りに引けを取らないのが人気らしい。誰も、この小柄な少女とは思わないであろう実力なのである。それはそれで失礼だが。
そんな詩星乃が何故困っているかというと、この床に倒れこむパソコンの醜態を見たからだ。
事の発端は数分前に遡る。詩星乃がゲームプレイ途中にジュースを片手に持ち、連動ゲーム機を操作しながら席を立ったのが原因だ。詩星乃が立った途端にパソコンのコードに足がかかり、連動ゲーム機を落としそうになって慌て転んだ瞬間、ガシャン!という痛ましい音を立てながら今に至る。つまり、自業自得というわけである。床に落ちたパソコンは液晶画面が割れ、機能しなくなっている。おまけに詩星乃が持っていたジュースがダイナミックにかかっているので、生々しさが倍増していた。きっとジュースの水分が端末内に侵入していることだろう。この状態を目の前にした詩星乃は慌てふためいた。当然だ。
「わあああ!どうしようどうしようどうしよう.......お気に入りなのに.......!ねぇ実夜、どうしよう!」
何故そこで私頼るんだ。お願いだからやめてくれ。と突っ込みたいのを堪えて何とか解決策を捻りだそうとする。
「.......壊れてしまったならもう仕方がないだろう。新しいのを買うしかないだろうな」
とだけ言うと、詩星乃に豆鉄砲を喰らったかのような顔をされたので困った。どうしようもないとうんうん唸っていたら、隣から伸び伸びとした声がした。
「詩星乃がよそ見なんかしてるからでしょ~?まぁウケるけどさあ。っていうか新しいの買った方がいいじゃん。ゲームのデータなら保存用の別の端末にあるんでしょ?あるなら新しいの買ってそれに移せばいいじゃん」
こうもまともなことを言っているのは、私より少し背は小さいが同じ年の少年、葉野庵織だ。庵織とは幼馴染で、このディセイバーズのアジトに一緒に暮らしている。詩星乃はご家族がいるので、実家暮らしだ。庵織は時々からかってきたりするので、こういう時にまともなことを言ってくるのは少しイライラするが。
正論をぶち込まれ、困りに困った詩星乃は項垂れた。それを見た庵織は何か思い出したようで、提案を出してきた。
「あ、そうだ。そういえば最近街に新しいショッピングモールができたみたいだよ。何かたくさんの店やいイベントがあって.......あーそうそう、電化製品を取り扱ってる企業があるみたいだよ。行って買って来ようよ」
新しいショッピングモール、という言葉は聞いたことがあった。ちょうどこの前テレビの特集でやっていたはずだ。電化製品を取り扱うところがあるなら当然、パソコンも売っているだろう。そうと決まれば、と思ったが、ある欠点に気付いた。
「い、嫌だよ.......!人がたくさんいるんでしょ?そんなところ行きたくないよ......」
と震え交じりに詩星乃が止めた。そう、詩星乃は重度の人見知りなのだ。無理はない。がこちらも買ってもらわないとある意味困る。
「詩星乃、このままだと一生ゲームできなくなってしまうぞ?」
と言うと、案の定「それは嫌、買いに行く」と覚悟を決めてくれた。説得が上手くいったので大惨事となった元パソコンに別れを告げながら処理していく。そしてスニーカーの靴紐を結び直して外へ飛び出した。じりじりと真夏の暑さが押し寄せてきて、すぐにでも帰りたいとは思ったが、粘るしかない。
目当てのショッピングモールまではさほど遠くないが、道中が大変だ。よく歩く街は、いつにも増す人混みが押し寄せ、かつ真夏の暑さがそれをうんざりするほどに搔き立てる。私の両隣にいるこの二人も、ぐったりとしていた。詩星乃は人混みと暑さに怯みつつ「暑い。でもパソコンのため、ゲームのため......」と葛藤していた。対する庵織は
「暑いよ実夜...冷やして...」
なんて変態じみたことを言いながらくっついている。暑いので離れてほしい。
「庵織、くっつくな。あと変態みたいなことを言うな、気持ち悪い」
「酷くない!?僕気持ち悪くないよ!?」
何だこのくだらない会話。と内心冷酷な突っ込みを入れながら歩いていくと、目的地にたどり着いた。早速入ってみると、これまた豪華で現代的な内装だった。
「あ~、生き返るっ」
と詩星乃が柄にもなくショッピングモールの空調システムを称賛している。
「ここはほとんどのシステムが電気制御だから、空調とかちょうど良くされてるんだってさ。ほら、早く電化製品企業の店まで行くよ」
と庵織が言った。さっきまで変態発言をしていた奴はどこの誰だったかってくらいの情報を聞きながら、特に何も気にせず歩いた。
この時はまだ、私達ディセイバーズが思いもよらぬ出来事に直面することなど、周りの人たちも、庵織も詩星乃も、私も知る由なんて無かった。
店内は人で賑わっていた。品揃えも豊富らしく、テレビのコマーシャルでよく見る製品も売られていた。詩星乃が人の多さに怯みながら「もう嫌帰る...」と言ってきかなかったので庵織と宥めるのに相当苦労した。幸いゲームコナーがあるらしく、それを伝えたらすんなりパソコン売り場へと向かって行った。詩星乃とは後で合流ということで、パソコンを買って来るまで庵織と辺りを散策することにした。
ふと、炊飯器コーナーが目に映る。何やら胡散臭い広告がびっしりと貼り付けてあった。しかも値段は今の私達の所持金では買えないような金額で、私は思わずそのコーナーを覗き込んだ。いや、うちにある炊飯器はまだ美味しいご飯を炊いてくれる。そうそう新しい炊飯器は必要がない。
そういえば詩星乃の使うパソコンは一体どのくらいの金を使っているのだろうか、計り知れない。新しく買うパソコンもきっと相当な額だろう、だが心配は無かった。詩星乃のご両親が買うそうだ。家計経済的に助かる。と経済的理由で炊飯器を見ていると、隣から庵織が話し掛けてきた。
「ねぇ、さっきからずっと気になってたんだけど、何で炊飯器コーナーばっか見てるのさ?」
「い、いや、そんなことは無いぞ?はは...」
痛いところを突かれた。どうしてこいつはここまで鋭いんだ、普通そこはスルーだろう、スルー。ギクシャクな返しをしながら心の中で苦情を呈する。案の定、庵織は「絶対そんなことあるでしょ」と言いたげな顔をしていた。うん、それ以上何も言わないでくれ。家計的な理由で炊飯器を見ていたなんて言いづらい、というか言いたくない。
しばらくしらばっくれていると、パソコンを買い終わったのか、詩星乃が駆け寄ってきた。だが何やら様子がおかしく、真剣な面持ちだった。まるで何か大変なことでもあったかのようだった。息切れもしている。
「どうした詩星乃?そんなに慌てて、息も切れているじゃないか。」
「た、大変だよ、パソコンを買い終わってコーナーを出たら、なんか変な黒い服を着た人達が店の奥でじゅ、銃みたいなもの持ってたの!」
聞くと、思ってもいなかった実に突飛な出来事に耳を疑った。黒い服の奴が数人、店の奥にいる、それに銃。どう考えたって電化製品を買いに来る格好でもないし、店員は赤い制服だ。とりあえずその店の奥まで連れて行ってもらうことにした。
「こ、ここ...って、まだいるよ......」
気付かれないように覗き込むと、確かにそこには黒くてごつい、買い物客と思えない格好の男が数人、銃を持って作業をしていた。銃のほかにも、手榴弾や火薬が店の隅の段ボールに詰み込まれていた。荷物だと勘違いさせるためだろう。巧妙な判断だ。
「おそらくだけどさ、このショッピングモール全体を巻き込むつもりかもしれないよ。さっき同じようなやつを何人か見かけたし」
庵織が予測を言った。詩星乃も私も、それを見たので大体のことは把握できた。巻き込む、ということはこのショッピングモール内の全ての買い物客を人質に捕ることになる。こんな大規模なことは、大人数の組織でしかできないことだ。そして、狙うのは金と権力。このフロアの店の企業はかなりの大手。知らない人はいないだろう。ショッピングモールの運営だってかなりの財政と権力の息が掛かっているはずだ。狙って当然かもしれない。そうこうしながら頭に浮かんだ言葉は、
「......テロリスト」
この五文字だった。庵織と詩星乃も同じことを考えていたようで、頷いていた。そうとなれば見過ごすわけにはいかない、が、かと言っていきなり「テロリストだ!」なんて言ってしまえばどうだろう。一気に全て吹き飛ぶのではないだろうか。落ち着いて作戦を練る。そういえば、このショッピングモールはほとんどのシステムが電気制御だとここに来た時庵織が言っていた。多分それも把握して乗っ取るつもりだろう、ならば
「まず、庵織は他の客に紛れて捕まって怯えるふりをしろ。私たちは気づかれないところまで隠れる。その間に私と詩星乃で全部の回線を回し切る。その間に庵織は気配を取って客にも気づかれないように抜け出せ。私達と合流してこちらからテロリストのネット回線を操る。詩星乃、回線ジャック、できるか?」
「う、うん......!前からそういうのやってプログラムをどうこう動かしたことはあるよ。きっとそれだよね。」
言いたいことが伝わって良かった。詩星乃は意外にも物分かりが良いものだ。
「実夜、」
と庵織が何か言いかけた途端、
予測していたことは実に鮮烈に起きた。
手榴弾の煙らしきものが見えて、庵織はそのまま私達二人を突き放すように逃がしてこう言った。
「作戦通りやるからさ、頼んだよ、団長、詩星乃」
そして二手に分かれた。
鳴り響く人々の足音、劈くように聞こえてくる悲鳴、子供の泣き声。
最悪だ。
コネクション・トリック
いきなり押し寄せた煙とともに作戦は始まった。私と詩星乃は、テロリスト達の目に届かないところまで走る。走りながら他のフロアを見ると、同じような景色が広がっていた。庵織の言っていた通りだった。夢中になって走りきると、やっとのことで目の届かないであろう場所まで着いた。スマホで庵織に連絡を取った。どうやら上手くいっているらしい。
詩星乃に一台だけ、パソコンを売り場から持ってきてもらった。ハッキングのためだ。ここからだ、そう覚悟を決めようと息を吸うと、いきなり野太く、聞きたくもないような声がアナウンスから流れ出した。
「あぁ、お疲れお疲れ。さぁて、運が良いなお前ら。この俺の偉大なる行為を目の当たりにできるなんてなぁ......」
大音量で、ゲスさたっぷりにその男は言った。おそらく取り仕切るボスだろう。電子機器もジャックしたのか。だが気持ち悪い、正直黙っていてほしい。そんな願いは叶うことなく、アナウンスによって取り消された。
「さて、本題だ。今から三十分でこのショッピングモールの責任者の権限と、現金五十億を寄越せ。このくらいならお安いもんだろう?これができないとなると......なぁ?まぁ、面白いもん見せてやるから、それまで動くんじゃねえぞ、警察さんよぉ......あ、そういやお前らが全任せにしてるシステムはもうこっちのもんさ。残念だったなぁ?」
やはり狙いは金と権力だった。大抵こういったテロ行為をするやつは頭がいかれているのだから、こんなくだらないことは想像がつく。馬鹿馬鹿しい。不機嫌になって舌打ちをすると、詩星乃が話し掛けてきた。
「で、できたよ。回線はこれで切れるはず」
準備は万端に備わった。あとは庵織のゴーサインの連絡とタイミングを待つだけ、と思ったが、庵織から来たメールは予想外のものだった。
『今ちょっとやばいかも。僕の近くにいたお兄さんがテロリストに文句言いだしてる。しかも木刀みたいなもの持ってたんだ。とりあえずその様子送るね~』
という文面だった。画面の上の方に動画が送られてきて、再生すると、これまた修羅場という修羅場だった。動画に映る人物は、私達と歳が近そうな、横にかかる髪に白いメッシュをしている少年の姿だった。その右手には木刀が握ってある。何故この場に持っているのかは別として。
少年はテロリストととれる男の一人に胸倉を掴まれていて、怒鳴り散らされていた。だがそんなことは気にもせず、ただただテロリストを見下ろしているだけだった。相当図太い。そう思っていた、次の瞬間。
「お前に怒鳴り散らされるより、姉貴に叱られた方が百倍怖いな」
『ミッションスタート!』
少年の遠回しな貶し声と同時に、庵織のゴーサイン。詩星乃が一気に形成したプログラムに書き換えた。十秒もしないうちに書き換えられたプログラムは、即時にシステムを起動させたが遅かった。遠くから多くの人のどよめく声が聞こえる。テロリスト達は慌てて発信元を探しているが見つかりはしない。詩星乃が「ゲームプレイ」している間は、誰も止めることはできないのだから。テロリストも上手く制御できない状態じゃ、動くことはできない。
一階、二階、三階......と数える間もなくシステムは詩星乃の「ゲームプレイ」によってハッキングされていく。次第に鳴り響いて止まない警鐘。ハッキングは成功。息をついた詩星乃が顔を上げて、私に向かってこう言った。
「あとは、あいつらだね」
「負ける気は、全くしないな」
そうして、地面を蹴った。
コネクション・トリック2
実夜達がこの場所を離れて数分、予測にないことはつきものだとでも言うようにその少年はテロリストに立ち向かった。しかも木刀を右手に持って。かっこいい、ってそうじゃなくて、どうしてこんなに突拍子もないことが出来るのか。いや僕らも同じだけれど。
今僕らが動いてしまえば、実夜が組み立てた作戦が無駄になる。詩星乃がハッキングしていることにだって気づいてしまうだろう。僕はちらり、と少年のほうを見た。あーあ、ムキになっちゃって。
数分前、実夜と詩星乃以外捕まった客を含めた僕らは、以後手を後ろで固く縛られている。無理に動くことは出来ない状態だった。僕はタイミングを見計らって自分の拘束を外し、ただ周りからは怯えているように見せた。少年はその時隣にいた人だった。不満そうだったので聞いてみれば、
「.....あんな奴ら、俺一人で倒せる」
と戦えないのが不服なようで。
「いやいや、危ないじゃん。死んじゃうかもよ?警察が助けてくれるまで待とうよ」
と、僕らがやるのに心にないことを彼に伝えれば、すっと立ち上がり、
「俺はあいつらが思っているよりも、弱くない」
そう言って拘束を解き、木刀を持ってテロリストを見据えた。まるでゴミを見るような、かつまっすぐとした狼のような目で。
「あ?おい兄ちゃん、すっげえなぁ、拘束を解いて反抗しようだなんて。あぁ、身の程を知らないんだなぁ。ほら、俺様が教えてやるよ」
これまた大きくて野太い声。思わず悪寒が走るが、何とか耐える。タイミングを逃せば、全部終わりだから。
「何とか言ってみろよ!あぁ!?今どきの若いやつは威勢もなければ生きた目も無いんだな!」
そうして胸倉を掴まれ、殴られてしまいそうな少年。おじさん声気持ち悪いから喋らないでくれるかなあ、これではタイミングも逃してしまう。
そう思っていたのに、案外早く「タイミング」は訪れた。
「お前に怒鳴り散らされるより、姉貴に叱られた方が百倍怖いな」
途端に響くのは、静けさを交えた冷徹な声。....ああ、君、見かけによらず、結構面白好きだ。僕、嫌いじゃないよ。そういうの。
そう思いながら、筋の通った、凡人だとは到底思えない少年の木刀捌きを眺めて。
『ミッションスタート!』
僕の合図が実夜に伝わった途端、辺り一面は赤い液晶に『ERROR!』の文字。ハッキングは成功。さぁ、やるなら派手にやっちゃおう。
「....The second deception」
どよめく人達、少年に「斬られ」、倒れ行くテロリストをすり抜け、慌てふためくボスの前にはだかり僕はこう告げる。
「はーい、ディセイバーズ参上です!欺かれる覚悟は、できてるよね?」
あとはあの子たちの頑張り次第、ってところ。
コネクション・トリック3
次々に現れる『ERROR!』の文字。騒ぐ人、敵、音。聞こえてくるのは耳障りなものばかりだ。馬鹿馬鹿しい。私は心の中でそう愚痴を吐き、テロリストの一番弱い場所、つまり管理棟を目指した。
普段なら絶対に入ることが許されない管理棟のパスワードを切り抜けると、私に気付いたテロリストの一人が銃を構える。
ああ、馬鹿だ。
「お、お前誰だ!」
「さぁ、自分で考えろ、よっ!!」
回し蹴りを決めれば、構える間もなくテロリストは伸びていった。弱い、普通に弱かった。他のほうを見てみれば、詩星乃は相も変わらずハッキングの継続に集中している。こういう時に邪魔をしたりすれば、相手はどうなるやら。テロリストが少し憐れになった。
「お嬢ちゃん、危ないよなあ?」
「うるさい!ハッキングに集中できないからおじさん黙って!!というかその銃で消えてよ!」
そう言って一瞬、詩星乃はもの凄い形相でテロリストを睨みつけた。彼女の集中力をなめてはいけない。そのおかげかテロリストは衝撃を受け、気絶している。いや、大げさすぎないか。どれだけ真に受けているんだ。
私は他にテロリストがいないことを確認すると、アナウンス用の放送機器を取り出した。
『はい、残念そこまで。庵織、お疲れ様。さぁ、もう身動きは取れないな。アホどもが。』
『....お前たちの犯行は、私達ディセイバーズがジャックした!』
そう告げて、少しかっこつけすぎたかと反省するが、結果オーライ。詩星乃も外の警察部隊に連絡を入れ、非常時シャッターを開ける準備は万端。あとはこのトリックを誤魔化すだけ。
一息ついて、力を込めて「目」を開く。慣れてしまった月色の目に変われば、辺り一面は歪む。
あのテロリスト達は、欺かれる覚悟はできているのだろうか。
どうせやるなら、派手にぶちかまそうじゃないか。
「....The first deception」
駆け巡る稲妻のように、トリックは成功。
この作戦に名を付けるなら、
「コネクション・トリック」と言って良いだろう。
アフター・トリック
無事に庵織と合流して、突飛な事件をハチャメチャに解決した私達は、暑い暑い道を歩きながら、帰路についている。私のお望みのパソコンも買えて、満足していた。
「もう、実夜ったら!作戦にないことするし!あれだけ無茶はするなって言ったでしょ?何でこう無視するかな」
「してない!そもそも、あのテロリスト、見た目が強そうなだけで蹴り一つで気絶したんだよ、弱すぎないか!?」
「あーそうだねそういうことにしとく...それに実夜、アナウンスで『ジャックした!』だなんて....ふっ、くくっ....最高っ」
「あ、あれは!私もやりすぎたと思って....って笑うんじゃない!この馬鹿!」
いつもどおりの会話が繰り広げられ、私は思わず安堵する。
あの姿を見るまでは。
「そーちゃん.......?」
ふいに目を向けた先で歩いていたのは、鮮明に覚えている、私の大好きな、友達になってくれたあの子の姿。他の誰でもない、あの子。でも期待してもどこか寂しくて、確かにそこにいた気がしたのに、見失った。それでも、
あの子と本当に、本当に久しぶりに会える日は、案外遠くないかも知れない。
どうも、夜桜Cです。第一話「駆け巡る稲妻の咄」、コネクション・トリックの小説です。プロローグの『リロードリフライ』は今回ちょっと飛ばしましたが、楽しんで読んでいただければ幸いです。実夜の「目」と庵織の「咄」、詩星乃のハッキングっぷり。今回は皆大活躍でしたね。多分。詩星乃一番頑張ったんじゃないでしょうか。きっとよく寝るだろうなあ....
実夜達の力の秘密はさらにさらに奥深いところまで行ってから教えます(意味深)
え、木刀を使っていた少年?ネタバレになっちゃうので教えません。すいません。
最後に「第二話に続く」って書きたかったんですけど、兄にダサいって言われたので諦めました。
もういろいろありましたよ。完成したと思ったら次の日にそのデータがほとんど吹き飛んでまた打ち込みましたもん。怖い怖い、ちゃんと更新しなきゃ。
次回は詩星乃と、とある幼馴染が主人公の再会の咄です。お楽しみに。