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苦い恋  作者: 春
2/3

2話

甘えられない大人が、初めて褒めて認めてくれる相手に出会えた。


それは、実は素敵な恋人を作るより難しいのかもしれない。





仕事をしているとき、仕事のこと以外は基本的に考えないようにしている。






「私、頭の容量が大きくないのでアレもコレもなんて考えれなくて。


平時ならともかく、この仕事だけでとんでも量が舞い込む時期には出来ないんですよね」


ふう、と溜息を吐く舞に、まあソレが普通だと思うぞ?と頷く山本に、いやそもそも仕事も同時進行得意じゃないですと恐縮しきっているのが米谷である。



フラグが立った翌週の恒例休憩所ミーティングで、前週より明らかに疲れた雰囲気且つやさぐれた雰囲気の舞に年長者の山本が心境を聞いた事が発端である。


「女性は複数のことを考えるのは男より得意と言うけどねぇ。ま、限界もあるよね」


「俺の担当の調べ物してくれつつ、別の画面では下請けとメールのやりとりして、さらに電話も対応してるもんな」


「慣れですね、慣れ」


賞賛の声は嬉しいが、舞の中ではそこまで特別なことをしているわけではないので苦笑してしまう。


「ま、それが出来ない奴もいるわけですけど」


「舞先輩には申し訳ないですけど、俺、本当に河野から担当変えていただいて良かった」


病休になってしまった村崎の担当営業マンだった桂木と河野の担当営業マンの高橋がしみじみと呟く。



特に高橋は河野の仕事ぶりに再三担当を変更してくれと意見具申を飯塚課長にしていたらしく、前週に通達された交代の社内通知を握りしめてほぼ直角に舞に頭を下げたのは記憶に新しい。


ちなみに桂木は山本と同じく40代半ば、高橋は米谷と同じ5年目である。



「とりあえず、今のところはまだ大丈夫か?」


「ペースはちょっとずつ掴み始めたので問題はなさそうです。今週乗り切れば落ち着くでしょうから。


米谷クンの担当と高木先輩の担当はもうほぼ打ち止めみたいだから、現在の発注済みの物と直送済みの物、準備中の物の照合を始めてるわよ」


「ありがとうございます!!近々営業相手から連絡が来るので準備しようと思っていました!!」


「毎年の話だからねぇ。金額の照合もリストを送っとくから請求書未送付のは担当に確認してくれるかしら?」


「りょーかい」


「わかりました。今日ちょうど営業先に納品で回る予定だったので準備して行ってきます」


終わりが見え始めたからか、心なしか米谷の目も輝きが戻ってきている。


「山本さん、桂木さんからの調べ物は済ませてそれぞれメールに添付して朝礼ミーティングの後に送っています。



古澤と高橋クンは今日外出からの直帰でしょう?頼まれていた物はまだ返答待ちだから返答が来たらメールするからね」



「おう。あ、今日行く企業の近くにうまい和菓子屋あるから、直帰せず社に寄るわ」



「あら」



「甘い物、好きだろ。休憩タイムにな」



「ふふ、ありがとう古澤!持つべき物は同期ね」



「まあな。大事な仕事のパートナーだしな」



へらりと笑う古澤に、今日の楽しみが出来たわ、と笑ってミーティングはお開きになった。



席に戻っていった舞を、男達は疲れてるなぁとその背を見送って呟いた。





「舞先輩って甘党っすか?ブラック珈琲好きだから甘いのそれほどかと思ってました」



「甘党だな。クドいのは嫌らしいけど、チョコとかよく食ってるぞ。


自分でよく食っているのは手を汚さない、書類汚さない系だけど。


休憩時間になら団子もケーキも食う」



「糖分とらないと頭が回らないって、よく言っているよね」



「俺も外出先で好きな店あるんで買ってこようかな。被るんで、明日もってこよ」



「お、良いんじゃね?礼もかねて餌付けすればいい。めっちゃ笑顔になるから」



餌付けし甲斐があるよ、と古澤が笑う。




「終わったら飲みに誘うかなーどうよ?君たち」


「お、良いっすね山本さん。やりましょ。



桂木さんと高橋は飲み会大丈夫な人です?」



「好きだよ。強くないけどね」



「俺も甘い系しか飲めないですけど、飲み会好きっす」



「じゃ、米谷と高橋でお疲れ様会企画してよ」



「わかりました!また回覧メールしますね!!」



「頑張ります」


ほんじゃ、もうひとがんばりだなぁ、と男達も解散した。













『今週末は隅田川の桜が見頃となる為、人通りが増えそうです』



TVのアナウンサーの言葉に、いつの間にやら花見シーズンが到来していたらしいことを知った舞はかれこれ10年まともに花見なんてしていないわね。


と、23時過ぎのニュースを見ながら、チーズをつまみワインを呷る。



「土日の出勤はもうほぼ終わりだけど、そうなってくるとつい目覚ましを掛けずにがっつり寝てしまうのよね」



出不精ではないけれど、アクティブなわけでもないためしっかり寝た後に化粧して出かけるという行為が面倒なのだ・・・そこまで考えてやはり出不精なのかしらと自問自答する。



「明日、ちょっと行ってみようかしら」



そうと決まれば、せっかくだからと近所のパン屋でブランチ用のサンドウィッチでも買って、珈琲を買って散策でもしよう。そう1人決めて机の上を片付け始めた。


隅田川に行かなくても、上野公園に行かなくても、日本の至る所に桜はあるのだ。


近所の公園で花見しよう、と舞は目覚ましをセットした。








天気は風の穏やかな晴れ。



予定通りサンドウィッチを購入し、コーヒースタンドで珈琲を購入し、公園のベンチで桜を眺める。


暖かな風が桜の花びらを散らし、花壇の花も揺らしている。


近所の子供の笑い声や雀の鳴き声が聞こえ、ご近所の奥様達の井戸端会議の声もちらほらと耳に入る。


当たり前のごく普通の日常が広がっている。




「ああ、良いわねぇ」


ほうっと息を吐けば、肩からの力も抜け穏やかな気持ちになった。



慌ただしい年度末も担当営業マン全員片が付き、納品も問題ないことが分かった。



あとはせいぜい無事に入金がされればその結果が営業マンの下半期の成績に反映される。



3月末までの納品の入金もゴールデンウィーク前には完全に落ち着くだろう。



10年の間、毎年のことだが、実に怒濤の3ヶ月だと珈琲に口をつけた。






「本当にいい天気だね。桜も綺麗だ」


「え・・・!?え、村次課長!?」



想像だにしていなかった人物から声を掛けられ、舞は限界まで目を見開く。



「おはようございます。見慣れた後ろ姿だからもしかして、と思いまして。1人のリラックスタイムに声を掛けてすみませんね」


「いえ、とんでもない。


村次課長はランニングですか??」


「ええ、そうなんです。走るのにも良い季節になりました」



ニコリと微笑むランニングウェアを着ている村次に、素敵な趣味ですね、と舞も笑う。


「仕事は落ち着きましたか?」


「ええ。だいぶ」


「それは良かった。今月は怒濤でしたね」


「1課も大きな契約勝ち取ったって聞きましたよ?」


「部下達が頑張ってくれましたから」


「・・・毎年、年度末は忙しくて。今年は特別忙しかったですけど」


ふふふ、と笑う舞に、よく頑張りましたねと村次が微笑む。



「私、頑張ってましたかねぇ」



思わずといった舞の小さな声に、村次は意外なことを聞いたと一瞬目を見開いて頷く。


「とても頑張っていましたよ。少なくともボクはそう思います」


「・・・ありがとうございます。報われる気がしますね」


「おや、ボクの言葉だけで報われるんですか??」


「そりゃあもう。村次課長から労られたら、テンション上がります」


なんて言ったってみんなの憧れの課長ですから。



「おやおや、ありがとうございます。



・・・ちなみに今夜のご予定はありますか?良ければですが飲みに行きませんか?」



「もちろん!行きましょう!!」



「今日は会社には?」



「昼から夕方までちょっといきますけど、18時以降なら問題なしです」



「じゃあ18時に会社の最寄り駅に待ち合わせで良いでしょうか?



この間は弓槻君の行きつけだったから今日はボクの行きつけにご案内しましょう」



「是非!!」



「じゃ、また夜にね。ああ、その前に念のため連絡先を交換していても良いですか?」



「はい。はぐれたり急用入ったら大変ですものねぇ」



「えぇ。前回は一緒に会社から行ったから必要ありませんでしたからね」



携帯を取りだして電話番号を交換し、今度こそでは夜にまた!と軽やかに駆け出していった村次に、スマートな人だわ、と舞はしみじみと思ってしまった。




「課長ったら、風下から動かなかったわね。これがモテる秘訣」


汗をかいていることを気にしてか、風下から動かず、舞に近寄りすぎることもなかった。


連絡先の交換もスマートだし、同年齢の男性陣があまり身につけていない技術だと関心してしまった。






昼から出勤して、下請け企業からの返答を精査して振り込み状況と内容を確認し、データ管理のために打ち込みをする。



「ん・・・?ああやっぱりかー」



光る携帯に、通知を確認すれば長文の文句と共に別れが告げてある彼氏・・・たった今、元が付いたが・・・彼氏からのメッセージだった。


半年付き合ったものの、大半が繁忙期のために後半はほとんど会わなかった。


申し訳ないとは思うが、やはり結婚しなくて良かったと思う。





「結婚、向いてないわ。私


・・・・あーー、ちゃちゃっと仕事終わらせて飲みよ飲み!!」


髪をガシガシとかき混ぜてパソコンに向き直った。悲しいかな、こういった別れは毎度の事で、このあとの展開もわかっている。


今度こそ結婚すると期待を大きくしていた両親・・・主に母からギャンギャン文句を言われるのだ。何時ものことだが実に憂鬱と溜息を吐きながらも目はパソコンから反らさない。





大人になると、色々な煩わしいことが起こる。


子供の頃と違って、両親から向けられる期待のような物も変化したし、恋人も付き合って終わりではなくなり、給料をもらう以上会社への当たり前の義務も果たさなければならない。


何に優先順位を持って行くなんてそれぞれだし、舞の場合は仕事だっただけのことなのだ。


だけのことなのだが・・・。








「と、いうわけでなんとか無事年度末は終えれそうです」


「お疲れ様でした。ではお互いの労を労って・・・」


乾杯、と生ビールのジョッキを合わせる。


冷えたビールは相変わらず喉越し良く、半分一気に無くなってしまった。


「おいしい」


「ビールはやはり良いですねぇ。安定の美味しさです」


「夏のビールも格別ですけど、何時だって結局美味しいんですよね」


「ふふ、同感です」


苦みと炭酸が食欲を刺激するのかお通しで出された小松菜と油揚げのお浸しに早速箸がのびる。もちっとした飾り麩が可愛らしい。


「村次課長の行きつけも最高に良いですね。お店の雰囲気とお浸しの味でわかります」


「もちろん、弓槻君を連れてくるんだもの、一等気に入りのお店にしましたよ」


「感激です」


連れてこられた店は舞の最寄り駅、1駅手前にあった。


ランニング姿の村次からなんとなしに察していたが、舞と村次は最寄り駅が一駅分しか離れていないらしい。


村次は都心にも便が悪くなく、適度な緑もあるこの土地にかれこれ20年は住んでいるということだから、存外、会社の人間も他に居るのかもしれないと思ったのだった。



駅からほど近い小さなカウンター中心の店は、京都で修行された店主が営んでいるとのことでメニューには<おばんざい>がいくつも並んでいる。


「1人でこういうお店に来ると食欲が爆発してしまって、沢山食べて飲んじゃうんですよね。



残さず食べちゃうんですけど、女1人なのにこいつめっちゃ食べるって顔されます」



「ああ、わかります。お酒も入って常連さん達との会話も弾むとついね」



味がしっかり染みているのにしゃきしゃきとした食感の残る小松菜とお揚げのお浸し、ふわふわの出汁巻玉子、まろやかな酸味の小鯵の南蛮漬、さくっと揚がった山菜の天ぷら。



「こういうおばんざいの方が、手間暇掛かるんですよねぇ」



「本当、そうなんですよね。


自分では中々作れませんがこれくらい上手に作れるようになったらもっと家飲みが充実するんですけど」


「同感です」




穏やかな良い時間だな、と手間の掛かった和食に舌鼓を打ちながら聞き上手な村次との飲みを満喫する。


イヤなことはすべて忘れられそうだ、とすら思っていればカウンター席なのに村次と視線がかち合う。


「課長?」


「ふふ、いえね、とても素敵な笑顔でしたから。つい目が引かれてしまったのです」


「素敵な時間ですから、笑顔にもなりますよ」



表情筋が緩くなっている自覚がある。3ヶ月ほど常にではないにしろ張りっぱなしだった緊張の糸が緩んでいるのも。


お酒の効果か、彼氏と別れたことにどこかで安堵しているのか、仕事に終わりが見えているからか。それとも敬愛する素敵上司の村次と穏やかに飲んでいるからか。



「おや、彼氏さんと別れてしまったのですか」


「・・・口に出てましたか」


「ええ。嬉しい言葉も聞けて私としても照れてしまうのですが」


「しかも全部口に出ていたと・・・気を抜きすぎですね私」


「ふふ、光栄ですけどね」



ビールを満喫し、次の酒に移るかどうかを伺っていれば、お店を変えましょうか、せっかくだし。と村次の誘いに乗る。




空腹は満たされたが、穏やかな村次の隣は上司だというのに変に緊張することがないのも理由なのかもう少しこの空気を満喫したいと思ったのだ。



連れてこられた店は、駅前の大通りから少し路地に入ったビルの一階の小さなバーだった。


こちらも行きつけらしく、笑顔のバーテンダーに出迎えられ、カウンターに案内された。


「こういうバーも来ますか?」


「1人でたまに。家の近くにあるんですよ」


「おや、それはそれは。今度是非紹介して下さい」


「ええ、もちろんです」


まずはビールを頼んで2度目の乾杯をすれば、話題は1軒目で舞が零した内容に。


「差し支えなければ、なんですが。


多忙が原因でしょうか?でしたら、飯塚課長にそれとなく伝えますよ」



困り顔の村次にイエイエと首を緩く横に振ってみせる。



「こんなことを言うのもどうかと思うんですけど・・・私、私生活と仕事なら仕事に重きを置いてしまうんですよね。



お金を稼いで、基盤を整えてこその私生活だと。これがまあ理解されないんですよ。



今回も、仕事を優先したので元彼氏からは丁度今日の昼過ぎに長文の文句がメッセージで飛んできました。



でも私、酷いオンナなので、ホッとしたんです。忙しいさなかに連絡を返さなくていい事に」



「そうですか」



「仕事と私どっちが大事なの、なんて嘘でも言わないですよね。だって私、仕事も大事なんですもの。


ふふ、たかが中小企業の営業事務が、って書かれてました。



仕事へのプライドみたいなものって、会社が大きかろうと小さかろうと、業種が営業だろうと事務だろうと開発だろうと関係ないと思うんですけどね」



追加で頼んだのはウイスキーのロックで、目の前の棚の見慣れた銘柄を頼む。



「いいですね。ボクもストレートで同じ物をお願いします」



「あ、すいません。無意識に自分の物だけ頼んでしまってっ」



「構いませんよ。ボクのグラス、まだ入ってましたし。気にしなくて大丈夫」



「はい・・・ありがとうございます」



「いえいえ。


そうですねぇ・・・ボクは弓槻君のようなお仕事頑張る子には大変好感が持てます。



そして、どんな仕事にだってプライドを持ってすることは大変良いと思います。



時間を掛けて、技術を磨いて、スキルアップしているのですから。



営業だって、事務だって、技術屋さんだって農家さんだって、そこは同じだと思うのです。




けれど、人生お仕事だけではないですからその点、どこかで折り合いのような物がつけれたら良いですね。もちろん、仕事をおろそかに、とかではなく。



お仕事をひたむきに頑張っている弓槻君は素敵ですよ。なのでソレをなくす必要は無いと思います。



認めて応援してくれる人、君の背中を押してくれる人と出会えれば良いと思いますね」



微笑む村次に、そんな人現れますかねぇ、と舞も微笑んだ。



「課長と居ると、表情筋が緩んじゃいます。



課長がいつも微笑んでいるからつられちゃうんですよね」



「ふふ、じゃあボクはそんな普段より笑顔の弓槻君とお酒が飲めて役得ですねぇ」



「笑顔の秘訣はなんなんでしょう?私ったらいつも眉間に皺が寄るんです。」



「んー修行ですかね。ボクも色々経験してますから」



「課長と同い年の時にそんな余裕でいる気が全くしないです」



「そんなことはないとおもいますけどね」



お酒が入るとより饒舌になってしまうし、気も大きくなる。



だから、ついお店を出て大通りに出る前に口から出てしまったのだ。



「課長、もしイヤじゃなかったら」


「はい?」


「私の頭を撫でて、君はよく頑張った、って言ってもらえませんか!・・・なーんて」





33になるいい年したオンナが何を言ってるんだと数分前に遡りたくなった。


恥ずかしくなって下を向き、冗談でした!と言おうとしたところで思いの外大きな手が、髪型を乱さないように頭に乗る。



「弓槻君、君は本当によく頑張りました。ボクは見てましたよ。


仕事も沢山振られて、担当営業マンも増えて、それなのに相手方に迷惑を掛けないように業務に穴を開けないように泊まり込んで土日も仕事をして。



感心します。素晴らしいですよ。



本当に、よく頑張っています」


沁みた。単純だと思うだろう・・・舞自身がよく分かっている。


けれど否定されてささくれ立った舞の心に確かに村次の言葉は沁みたのだ。


頑張っていたい。


でも、評価をされたい。


頑張っているね、と言って欲しい。


褒めて欲しい。子供のようだが、ずっとそう思っていた。



かなうなら、頑張っているね。えらいね、と子供に対するような褒め言葉で良いから、彼氏だった人にも言って欲しかった。



ー告げられたのは、お前程度がする仕事がどの程度のものだという馬鹿にされた言葉ー



遅くまで頑張っているわねと両親に褒めて欲しかった。



ー告げられたのは、また婚期を逃して。もらい手が居なくなる、孫が抱けないという言葉ー




仕事の現状を知る人に、君はよく働いているよ。と言われて、それも社内で有数の仕事の出来る人に言われて心に来ないわけがなかった。


ぽろっと涙が出た。涙が出たことに舞自身がびっくりして、下を向いている間にこっそり指で拭った。


「(わたし、意外とキてたのか)


ありがとうございます、課長・・・こんな変なお願いをしてしまって」


「いえいえ。このくらいしか出来ませんが・・・少しは励ませたでしょうか」



「とっても。


来週も頑張れそうです」


にこりと笑う舞に、それは良かったです、と村次は微笑んだ。

化粧は仮面でヒールは戦装束とまでは言わない。


けれど、目に見えぬところ目に見えるところ関係なく、年を重ねるといらないしがらみに縛られて、虚勢を張って。果たしてこんな未来を目指していたのかと悩む1人の女の心情が少しでも表現出来ていれば幸いです。

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