観測対象とのファーストコンタクト
思い出したかのように復活するじゃん。
「それじゃ、あとは任せたよ。」
ヨハン殿下は応接室に俺と、さっき俺がここまで案内をしてきた迷子だった少年――アークを残して出ていった。なんでも、残している公務があるとかないとか。相変わらず忙しい人だと思う。思うが、ならなんでここに顔を出したんだ、あの人は。
それはさておくとして。
残された俺たちはというと、
「……」
「……」
お互いに何もしゃべらなかった。ただ気まずい空気だけが流れる。
アークは、ただ、こちらをちらり、ちらりと見ながら、何かをしゃべろうとしてはその度に躊躇う、ということを繰り返している。俺の肩書が、宮廷付きの魔術師であるとわかってからこうなっている。さっきまでのあの話しかけてきた元気はどこに行った、という感じである。
あの王子、何か変なコト吹き込んだりしてないだろうな?
しかし、これ以上ここでにらめっこをしているわけにもいかない。
けれども向こうも、相変わらずしゃべってくれそうにもない。
…これは、俺から話しかけないと駄目なのではないのだろうか。
仕方がない。
…まだ、丁寧口調であった方がいいか。そういう立場なんだし。
「改めまして、宮廷付き魔術師のヨハンといいます。この度は、王都まではるばるとお越しいただきまして、ありがとうございます。」
「あ、はい、えっと、シトル村のアークです。よろしくお願いします。」
……少しぎこちないが、まぁ、俺も人のことは言えないのでいいか。
「早速ですが、これからのアークさんのことについてお話をさせていただきたいと思いますが……、ヘンリー殿下からどこまでお話をききましたか?」
「…えぇっと…、確か、僕の持っている力について調べたいことがあるから来てもらった、とだけ言われました。」
「……それだけ、でしょうか?」
……俺がこの部屋に送り届けてから、慌ててここに戻ってくるまでにそこそこ時間はあったよな?。
「はい。詳しいことは後から来る人から教えてもらえ、とだけ言われました。」
「言われました、ですか……。そのあとは何を話されてましたか?」
「『王都以外での人々の暮らしに興味がある』と言われて……、シトル村での生活の様子とかいろいろと聞かれました…。」
あの王子、自分の興味を優先して説明とかの仕事こっち全部丸投げしやがった!
「…分かりました。それでは、いろいろと説明していきたいと思います。」
不敬だとは分かっているが、それでもこの国のトップに近い人物に対して、本人のご要望通り心の中で悪態をつく。
ただ、このまま黙っていても仕方ない。ぶん投げられた仕事はちゃんとこなしてやろう。突然昨日降ってきたとはいえ俺の仕事なんだし。
そんなわけで俺は直球に
「まずはあなたは、ギフテッドをご存知ですか?」
と質問をした。
でもまだ話進んでないのよね…