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ギフテッド・ブレイバー(仮)  作者: 夢見柘榴
物語が始まる一日前
4/7

プロローグ―4 王城内、忙殺の少年

なんだかんだんでだいぶ時間が空きました。


王都のシンボルマークである王城内にある建物の廊下を、一人の少年が歩いていた。手には多くの書類や書物が抱え込まれている。手にはインク掠れの跡が残っており、目の下には若干の隈が見える。着ているローブはどこかくたびれており、全体的に疲労感が感じ取れる。

 そんな少年の向こうから、一組の男女が歩いてきた。それを見た少年は大きなため息を、これ見よがしに吐いた。

 

「……出会い頭にそんなに大きなため息を吐かれるとさすがに傷つくんだが、ヨハン。」

「俺にとって、あなた方に会うのはあんまりいい出来事ではないっていうことですよ、ヘンリー王子殿下。」


 ヘンリー王子と呼ばれたのが男女で歩いてきた方の男性、そしてヨハンがくたびれた感じの少年である。多少言葉に毒が含まれているかのようなヨハンの言い回しであったが、ヘンリーはそれを笑って流した。


「なんだか、疲れているようですわね、ヨハン。ちゃんと休息はとっていらっしゃるのですか?」


 ヘンリーに連れ立っていた女性が、ヨハンを気遣うように声をかける、がそれもヨハンは鬱陶しそうに返事を返した。


「……あなた方王室がもう少し仕事を早く伝えてくれていたのなら、俺はもうちょっと疲れを隠せていたかもしれませんが、あいにく取り繕うだけの余裕はないということですよ、ユイシャ王女殿下。」


 ヨハンがユイシャに返事を返す。それに対しユイシャは困ったような顔をする。王子王女に対し、敬語も使わないヨハンの態度を、見る人が見れば無礼だと咎めるだろうが、これはこの王子王女兄妹のお願いである。曰く、「プライベートなところでは同年代の私たちにはあまり敬語を使わないでほしい」。それに対し、ヨハンは遠慮なく敬語も使わずに応対するのが、この城での日常風景の一つである。ひとつではあるが、この日のヨハンはいつも以上につかれているため、言葉遣いもいつもより少し乱暴である。


「突然のお仕事となったことに対しては、本当に謝ります。ですが、こちらとしても、早急に検証を行うべき、ということになりましたので……。」

「すまないとは思ってはいるんだ。この分の給与は、しっかりと払わせてもらう。」

「何当然なコト言っているんですか。さらにこの仕事が終わったら、しばらく休みもとらせてもらいますからね。」


 不機嫌な様子のヨハンに困っているヨハン、こいつのあしらい方はもうわかっているとばかりのヘンリー、そんなヘンリーが面白くなくさらに不機嫌になっていくヨハン。だいぶヨハンは八つ当たり気味である。

 大体、とヨハンは言葉を告げる。


「なんで俺らのところにギフテッドの鑑定の仕事が来るんですか。普段は国の為に魔法を研究しろとか言ってくるくせに。そもそも、これは俺らの仕事じゃないはずでしょう。その地方の神官なりなんなりの仕事のはずです。」

「そうは言ってもだな、その少年はどうも、前例がないタイプらしい。」

「それだけで俺ら仕事割り振られたんです?いつも通りのやりかたじゃ駄目だったんですか?」

「すでにそれはやっていて…」

「なら、今更俺が出る幕あります?」

「……もしかしてお前、詳細を知らない?」


 ここまで話が進んで、ヘンリーはヨハンに確認を行った。


「詳細も何も、俺のところには「ある少年を近々王都に迎えるからそいつのギフテッドの鑑定とかよろしく」としか来てませんよ。」


それに対するこのヨハンの応答に、ヘンリーとユイシャは顔を見合わせた。


「どうする、ここで俺らが知っていること教えておくか?」「……え、でも、勝手に私たちがしゃべっちゃっていいものなんでしょうか……?」「……何となくだが、お役所仕事的に仕事を放り投げた感が強い気がする……」「…えぇ、そんなことする人がこのお城で働いているんですか…?」「人にも色々いるように役人にもいろいろいる、ということだろう」「その役人を雇っているのはお父様なのですが……」「つまりお前は父上が悪いと言いたいんだな?」「いや今の全部お兄様がしっかりといていましたわよね!」


「……あの、お二人さん、お話、全部聞こえています。こそこそ話になっていないです。というか兄妹喧嘩をこそこそ声でしないでください。」


 突然内緒話を始めた二人に対し、指摘をするヨハン。ついでに中身が丸聞こえだったことも伝え、そのうえで一言、付け足した。


「詳しいお話、聴かせてくれますね?」


☆☆☆


「なるほど……」


 しばらく後、王城内、ヘンリー王子の執務室。王子と王女から無理やり話を聞きだしたヨハンは、あらかたの情報を聞き終えると、そう嘆息した。


「それで対して王家…というよりお貴族様方が不審がっていると。俺はさしずめ、同年代の<魔導>ギフテッド持ちだから仕事の責任者に選ばれた感じですか?何かあいつの方がやりやすそうだろ、的な感じで。」

「そういう理解をしてくれると助かります……」


 なかばいら立ちの様子のヨハンに対し、ユイシャはおっかなびっくり返事を返す。ユイシャはここまで不機嫌なヨハンと出くわしたことはない。一応、ヨハンにはヨハンで、女性にたいしてあんまり不機嫌なとこをを見せてはいけないという、よくわからない師匠からの教えを守っていたためにこれまでユイシャがそれを見たことがなかった。しかし、今日は日々の忙しさと、自分が思ったより大変な仕事を割り振られていたという苛立ちで爆発した結果、その教えをヨハンが守れていない。ゆえに初めて見るヨハンの剣幕にユイシャはおっかなびっくりである。


 自身の今の状況を簡単に知ったヨハンは、頭を少し抱えている。ユイシャはいまだに少し怖がっているので、この状態のヨハンに慣れているヘンリーが話を切り出す。


「どうした、ヨハン、何か困りごとでも?」

「今の話聞いたせいで、それなら俺がやるべき仕事は他にあるべきだとおもったからです。少なくとも、過去のギフテッドの魔力反応について総ざらいする必要はあるし」

「……おまえ、何というか、苦労人なんだな。一応、いやなら仕事断ってもいいんだぞ?」

「別に。ただ研究室にいるだけなのも退屈していたので、その気晴らしだとでも思うことにしますよ。」


 そうヘンリーとやり取りしたヨハンは、それでもやっぱりこうこぼした。


「でもめんどくさい…。」

プロローグだから雑に伏線っぽいの埋めとけばいいかぁ、といった感じで書いています。未来の私、回収は任せた。ならプロットを作っておいてくれ、と言われそうではある。


今回のヨハンは、主人公的ポジその③です。キャラづくりに一番手間取った。最初に適当に罵倒のセリフを作ってから、そこからキャライメージを膨らませたことをここに告白いたします。


そしてここでやっと登場するギフテッド。

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