プロローグ―3 家出少女は王都暮らし
プロローグ第三段。未だにキャラ掴みの真っ最中。
アークが乗った馬車と、レイアが乗った荷馬車。それぞれは現在地は違うものの、二台の馬車が王都を目指していた。
その王都の街中。とある住宅の玄関で、1人の少女と1人のメイドが会話を交わしていた。
「それじゃベティ。私は出かけてくるから、留守番よろしくね。」
「分かりました、サーシャ様。」
「それじゃあ、行ってきます。」
サーシャはそういって、自宅から出た。そして通いなれた道を行く。
今、彼女が目指している場所は、王都郊外にある武道場。彼女は王都に来てからそこの道場で、護衛術として槍術の稽古に励んでいる。
「はぁ、全く。この王都に来てからもう一年かぁ…。それ以上たったようにも感じるわよね……。」
武道場へと赴く彼女は、そんな独り言をつぶやきながら歩を進める。気を抜くと自分の思考回路をそのまま口に出してしまうのは、彼女の悪い癖の一つであった。
「無理やりに後継ぎ修行のためだって言いくるめて何とか家を出る体裁をもらえた時はこれでよかったと思ったのだけど、もう残り半分しか期間が残っていないものね……。さすがに2年だけだと短すぎたかしら……。でもそれ以上の時間をもらうことはできなかっただろうし……いえ、ダメよ。過去を振り向いてる場合じゃない。」
ぶつぶつとつぶやきながら、彼女は街中を進んでいたが、ここで彼女はやっと、自分の悪癖が発動に気が付く。手に口を当ててつぐみ、そっと周りの様子をうかがう。周囲には人もそこそこ檻、それぞれがめいめいに歩いていたりしゃべっていたりしており、彼女の声を聴いていた、という様子はない。そもそも声自体は小さかったため、よほどの地獄耳でないと聞こえないだろう。
「(またやってしまった……。実家にいた時はこう独り言つぶやくことは少なかったのに。うっかり悪意の持ちうる誰かに聞かれたりしたら大変なのに……。)」
脳内反省会を一人で軽く執り行い、もう一度考え事をする。今度は気を引き締めて、声を出さないようにする。
「(もう、王都でやれるだけのことはやれたかしら……。といっても私一人でできることなんて少なかった。できてせいぜい協力者を募ることだけ。やっぱり、もう少し行動を起こしたいわね……。いっそのこと国全体をかけて旅に出てみるのも手かもしれないのだけれど……。)」
ああでもないこうでもない考えながら街中を歩くサーシャ。そのうえで周囲にも気を張り詰めているので、基本障害物にあたることもなく進んでいく。悪癖が発動しているときの方がものにぶつかることが多かったりはするが、ここでは関係ないのでそれ以上は言及しない。
「(……やっぱり、これ以上王都にいても収穫はなさそうね。少し別の場所で活動してみるのも手ではあるわね……。旅なんて家出のとき以来ね……。ひとまず、準備を少しずつでいいからはじめましょうか。)」
今後の指針を大雑把に決めた彼女は、道場まで近くまできた、ということもあり、というところまできたこともあり、細かいことは後で落ち着いて考えましょうか、と脳内での策略会議を終わらせた。
ちょうど道場に来ていた他の門下生たちと挨拶をかわし、道場に入っていくサーシャ。
そんな彼女の後方に、1人の少女が様子をうかがっていた。
「(今日もサーシャ様に近づく不審な影はなし)」
サーシャのメイド、ベティと呼ばれていた少女である。彼女は、自分の主人が出かけてからここまで、こっそりと尾行をしていた。
「(独り言――彼女の思考については、途中でつぶやくのをやめられたために詳細なことはわからず……。ただ、今度も何かをやりそうです。報告は……するべきでしょう。)」
主人の様子をそう判断したメイドは、来た道をもとに戻る。この後彼女は、家の家事を終わらせ、私用を済ませた後に、鍛錬終了後のお嬢様を途中まで尾行した後、偶然を装って合流する予定である。これがベティの日々の習慣となっていた。
サーシャの大雑把な計画、国を旅する。彼女がそこで何をやるかは別にして、その計画が叶うことになる日は近い。
主人公②でした。ヒロインではない。その予定は彼女にない。
まだまだいたなぬ点はありますが、少しずつ、邁進していきます。