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幻想対霊郷  作者: 海音
第一章 舞い散る花びらたち
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第7話 舞い散る花びらたち

この作品は東方Projectの二次創作作品です。 ご理解いただける方のみ、お読みください。

これより前のお話を読んでない方は先にそちらを読んでくださるとよりこの話を楽しんでいただけます。

 幻想郷と対をなし、幻想郷と正反対の霊力であふれる世界。

 対霊郷。


 対霊郷攻略組は

 博麗霊夢、霧雨魔理沙、アリス・マーガトロイド、魂魄妖夢、十六夜咲夜

 の五名。


 幻想郷防衛組は

 レミリア・スカーレット、フランドール・スカーレット、パチュリー・ノーレッジ、紅美鈴、八雲紫、西園寺幽々子

 の六名。


 攻略開始まで残り一週間を切り、幻想郷の木々の7割ほどが枯れ果てた頃、

 アリス・マーガトロイドが行方不明となった。


紫「彼女の霊力自体存在している。 もしかすると、あっちに引き込まれたのかもね。」


 幻想郷に対霊郷が落ちてきた日から、博麗大結界は崩壊し続けている。

その中で数日に一回、強力な乱れが発生していた。

その際に生まれた次元の綻びに捕まってしまった可能性があるらしい。


 残された一週間、少女たちは変わらず鍛錬を続け、強さを増した。


 作戦決行前日。

 ー紅魔館二階 レミリアの部屋ー


レミリア「咲夜、あなた、強くなったわね。」

咲夜「家族を守る力、、。 私はもう、何も失いたくない。」

レミリア「あの時とは違う。 皆が同じ想いを持っている。 決して壊れないわ、咲夜。」

咲夜「お嬢様、、。」

レミリア「咲夜、紅茶入れてくれないかしら? 一時飲めなくなってしまうから。」

咲夜「承知しました、お嬢様。 少々お待ちください。」


レミリア(守る力、か。 

咲夜。あなただけがあの時メイドの中でここに残ってくれた。 ずっと、感謝しているわ。

だから、絶対に帰ってきなさいよ。 戻ってこないなんて、決して許さない。)


咲夜「お待たせいたしました。」

レミリア「ありがとう。 咲夜、今日はもう休みなさい。」

咲夜「しかし、まだ仕事が。」

レミリア「これから先、休みたくても休めなくなる。 今のうちに伸ばしておきなさい。」

咲夜「ありがとうございます。」


レミリア(ここより前の世界で私たちは掛け替えの無い者を失った。

私たちが弱かったために、同盟を組んでいた仲間をすべて失い、その騒動から紅魔館に使えていたメイドが咲夜を除いて出ていった。

もう一度、神様は私たちにチャンスをくれた。 この世界で得た家族は決して壊させはしない。)


 -白玉楼-

幽々子「明日なのね、、。」

妖夢「はい、幽々子様。」

幽々子「寂しくなるわね。 あなたが私の傍に居なかったことなんて無かったのに。」

妖夢「私は、あの人の言いつけを守ってるだけです。」

幽々子「そう、、。 妖夢、何があっても自分の選択を悔いてはいけない。 

前を向き続けて。 自分のとった選択は決して間違いではないと、信じなさい。」

妖夢「わかりました、幽々子様。」

幽々子「何かあった時は背負い込まず、仲間を頼りなさい。」

妖夢「はい。」

幽々子「ご飯は沢山食べなさい。」

妖夢「、、、はい。」


 デザート用の果物が減っていたことを妖夢は思い出したが、今日だけは心の奥にとどめた。


幽々子「あの人、ねぇ」


 幽々子は少し寂しそうな眼をして、西行妖の方を見た。

 

幽々子「魂魄妖忌、あなたの教えはしっかりと彼女に伝わっている。 けれどもあなたを守り切れなかったこともあの子は自分のせいだと責め続けている。 あなたはこれでよかったの?」


 月の光が西行妖を照らす中、一本の枝が縦に揺れた、、。


幽々子「あなたはいつも無口な人ね、、。」


 妖夢、あなたが心から守りたいと思ったもの、二度も失ってはいけないわよ。

 霊夢を、何より自分を必ず守って見せなさい。


 -魔理沙の家-

霊夢「アリス、今どうしてるのかしら。」

魔理沙「なんでアリスがあっちに行ってしまったんだろうか、、。」

霊夢「恐らくは、アリスの使う魔法が原因かも。」

魔理沙「術式による結界展開、、。」

霊夢「その結界が、対霊郷と反応し、互いを呼び寄せた、、。」

魔理沙「くっそ、あっちがどんな世界か分からねぇ以上、無事かどうかすら分かんねぇ。」

霊夢「アリスの霊力自体は存在する。 死んではいないわ。」

魔理沙「ただ、今がどういう状況かは、」

霊夢「分かんない、、。」


 ”魔法は博麗の巫女を助けるカギになる。”


魔理沙「なあ霊夢? お前さ、博麗の巫女の歴史って知ってるのか?」

霊夢「いいえ、ほとんど分からないわ。 先代の、、お母さんのことも。」

魔理沙「そ、そうか、、。 変なこと聞いちまったな。」

霊夢「全然かまわないわ。 けど、どうしてあなたがそれを聞こうと思ったの?」

魔理沙「パチュリーの図書館でたまたまそういう本を見つけたんだがよ。 古すぎて読めなかったんだ。」

霊夢「ふぅん。 なんでそんな本があんな所にあるのよ。」

魔理沙「全く不思議だぜ。」


 霊夢は一息ついた後、思い詰めた顔をして、そして少しだけ魔理沙の方を向いた。


霊夢「ねえ、魔理沙。」

魔理沙「どうした、霊夢?」


 『もし私が**そうになっても、その時は必ず**ってくれる?』


 霊夢はその言葉を涙ぐみながら、俯いて発した。

 肝心な所はよく聞き取れなかったが、魔理沙にはそれが伝わった。

 魔理沙は顔を隠すかのように帽子を深々とかぶり、歯を噛みしめて。


魔理沙「当たり前だ霊夢。 ちゃんと、ちゃんと**ってやるから、そんなこと、言うな、、。」


 絶対に他人に頼ろうとしない霊夢からそんな言葉が出るとは魔理沙は思っていなかった。

 だからこそ、自分に向けられたその言葉に必ず答えると、心に誓った。

 そしてふと、図書館で見つけた本の一部を思い出した。


 ”魔法は博麗の巫女を助けるカギになる。 どうか後世にこれが伝わりますように。”


 魔理沙は自分が見た夢を思い出し、霊夢の名前を泣き叫びながら、俯いて泣く霊夢に抱き着いた。


 外は強い風と共に、霧雨が降っていた。


 -十三代目の博麗の巫女の墓前-

紫「幻想郷、、。 あなたも涙を流すことがあるのね。」


 霧雨の降る中、紫は先代の博麗の巫女の墓の前にいた。


???「あなたも泣くのね、八雲紫。」

紫「、、風見幽香。」


 風見幽香。 花を操る程度の能力。

 十三代目の博麗の巫女と共に異変を解決していたぐらい、親しい関係にあった。


幽香「妖怪の賢者ともあるあなたが、涙を流すなんて。」

紫「私は、怖い。 霊夢が、あの人と同じ運命をたどりそうなのが。」

幽香「、、、『月喰』。」

紫「あの子の夢想天生・蕾は最大限強化した。 ただ、それはアレに近づくことを意味する。」

幽香「博麗の巫女なら決して抗えない、 残酷な運命、、。」

紫「あの人が願った運命には、変わらないのかしら、、。 私はどうしたらいいか、答えを見つけれない。」

幽香「それに近づいているのなら、それはあの子が立派な巫女になっているということね、、。」

紫「えぇ、それはすごく喜ばしいことなのだけれども、、」

幽香「ねえ、あの、別の幻想郷の中の霊力は、、。」

紫「夢想天生の代償。」

幽香「、、、。」

紫「圧倒的な強さを引き出す夢想天生の最終形態は、代償として所有者の霊力保持量を減少させる、、」

幽香「ずっと疑問だった。 失われたものは、どこに消えていったのか。」

紫「有無の結界、、、。 無くなったものは全て別次元へ渡ってしまった。」

幽香「あっちの幻想郷の霊力は、博麗の巫女の失った霊力。」

紫「戻る場所を失った霊力が貯まって、遂にキャパシティーを超してしまった、、。」

幽香「そこまで分かったのね、、。 霊夢には?」

紫「言ってない。 まだ、言えない。」

幽香「あの子はいずれ正式に博麗の巫女を継ぐ儀式をしなければならない。」

紫「分かってる。」

幽香「いずれはあの子も、知らなければいけない事実よ。」

紫「分かってる。」


 分かってる、、分かってるわよ、、


 霧雨はより強くなった。

 墓前に飾られたポピーは霧雨に打たれながらも、決してしおれず、泣く紫の方を向き続けていた。


幽香(あなたも私も、あの日から進めていない。 でもいつか、歩み出さなきゃいけない。)


 あの子の運命を、変えるために。


 霧雨はさらに強くなり、紫は雨に打たれながらただひたすらに泣き続けた。

 幽香はそっと、紫の肩を抱いた。


 過去の過ちを責める者。


 過去の選択を悔いる者。


 未来の運命を願う者。


 少女たちの冬は長く、この日、皆涙を流した。

 そしてこの空に誓った。


 もう二度と、同じ過ちは繰り返さない。 大切なものを守り抜く。 と。



 翌日。


 -博麗神社-

紫「全員揃ったわね。」

幽々子「みんな、必ず戻ってくるのよ。」

霊夢「紫、、。 ありがとう、私を強くしてくれて。」

紫「!?」

霊夢「あなたが何を隠してるか、最後まで教えてくれなかったわね。」

紫「行ったらわかるわ。 見つけてきなさい、それが最後の修業よ。 十四代目博麗の巫女。」

霊夢「そう、、。 あなたらしいわね。」


妖夢「幽々子様。」

幽々子「妖夢、昨日言ったこと、肝に銘じておきなさい。」

妖夢「はい、幽々子様。」


魔理沙「パチュリー、一か月ありがとうな。」

パチュリー「私は何もしてないわよ。 必ず守りなさい。 あなたの力なら、それができるのだから。」

魔理沙「あぁ、分かってるぜ。」

フラン「まりさぁ」

魔理沙「心配すんなフラン! 絶対に戻ってくるからよ!」


レミリア「咲夜、分かっているわね? 主の命令は絶対よ。」

咲夜「はい、お嬢様。」

レミリア「寂しくなるわね、うちの唯一のメイドが居なくなるなんて、、。」

咲夜「必ず、戻ってまいります。」

レミリア「その言葉、ちゃんと聞いたわよ。 必ず、帰ってきて頂戴。」

咲夜「はい。」


紫「あなた達の周りに転移結界を張るわ。 対霊郷と引き合うはずだから、相当な衝撃が走るはず、 気を付けて。」

霊夢「分かったわ。 こっちは任せるわよ、紫たち。」

紫「私の世界は誰にも崩せないわ、安心しなさい。」

レミリア「家族の帰る場所はいつでも万全よ、早く帰ってきなさい?」

霊夢「えぇ、必ず。」


 紫が呪文をとらえると、霊夢たちの周りに魔方陣が張られ、数秒後には彼女たちの姿はなかった。


幽々子「行ってしまったのね、、。」

紫「転送が成功したということは彼方からももう来れるということよ、全員気を引き締めてね。」

幽々子「えぇ、分かったわ。」

レミリア「境内からの景色、変わったわね、、。」


 この日の空は夜中に大雨が降ったとは信じられないくらいの快晴だった。

 幻想郷の木々の殆どは枯れてしまい、博麗神社も殺風景になってしまった。


 毎年この時期に境内から幻想郷中の桜を一望できる。

 

 もう一度、桜の花を見るために。

 自分の心の冬に花を咲かせるために。


 少し強めの風が吹いた。

 幻想郷が彼女たちを無事送り届けたようだ。


 残った者たちは、彼女たちの帰還をただ待つことしかできない。


 僅かながらも舞い散る花びらたちは少女たちの帰還を願い、太陽の光によって存分に輝いていた。

第一章完結です! ここまで通して読んでくださった方々ありがとうございました!!

予定より早めに第一章を終わらせてしまった。

第一章、いかがだったでしょうか? 感想やTwitterで教えてくださると嬉しいです!

第二章も続いていきますので、これからもご愛顧くださると嬉しいです!

改めて読んでくださった皆さん、ありがとうございました!

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