同じ世界の、異世界から
これほどまでに削ることになってしまうとは…。
改行・空白なしで998字です。
ふと、考えたことがある。中学生特有の、どうしようもない妄想ではあったが、既に答えの出ているその疑問は今もなお、この頭の片隅で、目を離せないほど激しく自己主張している。
僕は、その不自然さが、眼前に広がるどんな自然よりも、懐かしく感じてしまう。
***
中学生の頃の僕は、テレビの科学番組で見た紫外線で見える世界、というものに心を囚われた。人間の目には見えない世界がある、というこの事実は僕の心に突き刺さり、すっかり抜けなくなってしまっていた。
そして『この世界の本当の姿を人間は見られない』なんて考えが、あの頃が思い出になった今でも、頭の片隅に残り続けている。
「ねむ」
いつも通り、自然な朝だ。カーテンを開ければ、半分の太陽が浮かんでいるのも。窓ガラスに映された自分の部屋に、その主である僕が映し出されていないのも。
顔を洗うために洗面台で鏡を見れば、映る限りの自分が透けて映し出されている。何とは無しに捻った蛇口からは、爽やかな水色の水が流れ出す。
文句の言いようがないくらいの普段通りさだ。
「いや!おかしいだろ!こわ、なにこれコワイ」
家の外を見れば、空にはひび割れが走り、鋪装のされてない地面は所々が鏡のようになっている。それだけでなく、この目に映る世界の所々が非常識なものだった。
「何でみんな平然としてんの?え?これ」
「ありゃ、自分で気付いちゃった」
「はい?」
気付けばそこには見覚えのない少女が。
「これ、」
「そう、君が見えている世界と私の見ている世界は、きっと同じだね」
「これって、」
「これが世界の真実!君が今までその目に映してきた世界は偽りだった!って言えば満足する?」
どこか得意げな表情に、軽い苛立ちを覚える。
「君がこうして迷い込んでしまったのは、君自身がそのことに意識を向けすぎたせいだ」
そのことと言われても、どのことだかがさっぱりだ。
「んー、あの自然な世界は自己防衛の結果なんだ、っていうので納得してね。時間もないし。自分で気付いちゃう人初めてなんだよ」
咄嗟に叫んだ。
「どうすれば、ここに居てもいい⁈」
「君だけのものを見つければ、かな。それだけ。じゃあね」
「ちょ、っと?」
瞬きをした瞬間には、いつもと変わらぬ自然に囲まれていた。この自然さが恋しいと思っていたはずなのに、あの不自然な世界が、去り際のあの言葉が、頭から離れなくなっていた。
『私は待ってる。君の生きるこの同じ世界で、この異世界から』
導入のようになりました。この枠内に収める内容ではなかったと、書き終わったあとで気づく始末