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宮田ミヤ1 立花麗5

Day0 11:49宮田ミヤ

 現在、私は麗の部屋で寝転がっていた。麗が作ったすごくおいしいオムライスと私が持ってきたケーキを食べて、お腹いっぱい。お風呂も順番に入って、今日借りてきた映画を今から見る。

「で、何見るのー」

 私は麗の部屋にあったクマゴローのぬいぐるみを抱きながら寝転がり、スマホゲーム『どうぶつスターズ』をプレイ中。可愛いどうぶつを操り、敵を倒すオンラインゲーム。私はかなりはまっていてランキングにも入っているのだ。えっへん。

「うーんと…これにしよう」

 麗が袋を漁って、DVDを取り出した。ビデオデッキに入れるとテレビの画面が変わった。丁度、ゲームも一区切りついたので、スマホを消す。

「怖いやつ…?」

「はは、ちょっと麗?いきなりこれ?」

 美咲はDVDの箱を見ている。

「えー、だってミヤが見たそうなやつからでしょ!怖くない怖くない」

 麗がニヤニヤして言った。何か企んでいそう。レンタルショップでこそこそしていたけど関係あるのかな。

「まぁ、ミヤも見れるようなやつだよ。安心して」

 とりあえず、見てみよう。

 主人公は病院で働くナースのレイチェル。ある日、夜勤の時に急患の患者さんが来たのだが、その様子がおかしい。傷口がひどく、痛そうだ。

「どうしたんだろ…?大丈夫かな…」

 段々と音楽が低いものに変わっていく。怖くないよね?

「来るぞー」

 麗が笑みを必死に隠しながら画面を見ている。その横で美咲も微かに口が緩んでいる。今日の二人はいつもより距離が近い気がする。テレビに視線を戻すと、手術中の患者が突如として起き上がり、医者に噛みついた。

「へっぁ??ゾンビーー!!」

驚きのあまり大声を出してしまう。薄々気がついていたが、怖いものは怖い。驚いた私に美咲と麗は爆笑中。

「うー、ちょっと!!」

手をグーにして怒っているとアピールしたが、いつもから私をからかいなれている二人なので、起こっても怖くないことを分かっている。

「まぁまぁ、そんなに怒らないでさ、まだ途中だよ。一応最後まで見よう!」

 麗が笑いって気にも留めていない様子。言っても止めないので渋々見ることにした。勿論、手で目を覆い、その間から画面を見る。

 その後も映画は続き、ゾンビがいっぱいの病院から脱出しようと主人公たちは頑張った。途中、仲の悪い同僚が主人公を守ってゾンビになってしまったり、助けに来た警察官と主人公がいい感じになったりした。最後に、その警察官がゾンビになり、主人公も彼に噛まれるのならと目をつむって映画が終わった。エンドロールが流れ出した。

 怖かったが、最後のシーンとか泣いてしまった。まじ、感動だよ。

泣き声が出てしまう。映画に没頭してしまって一緒に見ている二人のことは忘れていた。

「いい映画だったね…」

 私は二人に聞いてみた。返事がない。おかしいなぁと思って、二人の方を見る。麗と美咲がこっちをじっと見ていた。その頭からは濃い赤色の角の様なものが二本ずつ出ている。ピンと来た。

「二人ともまた私を脅かそうとしてるでしょ!今度は引っかからないよ!」

 流石に見え透いたドッキリだ。

「ねぇ…麗。喉が渇かない…?」

「うん…。さっきの映画は良くなかった…」

 何かがおかしい。

「ごめんね、ミヤ。痛くはないと思うけど、先に謝っとく」

 麗はそう言うと立ち上がり、私に近寄ってきた。そのまま床に押し倒される。顔の横に手が置かれる。床ドンだ。

「っちょっと麗、絶対引っかからないよ!」

 もがいて抵抗するが、麗はびくともしない。凄い力だ。麗の顔が私の顔に下される。ちょっと恥ずかしいので、目をつぶった。首筋に麗の口が当たった。ガブッと噛みつかれた。

「痛い!」

 ジクリと痛みが首あたりに広がったが、それも一瞬。痛みが引き、気持ちよくなってきた。麗はチューチューと私の血を飲んでいる。でも、全身が気持ちよさに包まれ抵抗しようという気にはならなかった。

「麗っ!!!」

 ぼやけた視界の端に美咲が映った。美咲は私に乗っている美咲のうなじに噛みついたようだ。

(もう、どうでもいいや)

 異常な事態で考えることを放棄した私はなすがまま身を任せた。


Day1 2:35 立花麗

「てことなんだよねー。ミヤごめん」

 私はミヤにプニちゃんのことを説明して謝った。映画を見ていると血が出る描写が何度もあり、どうしてもミヤの血が飲みたくなってしまった。ミヤは怒っているのかこっちを見ていない。

 ミヤの血も美咲と同じくらい美味しかった。ミヤの方が甘く、どこかフルーティーな感じ。それも濃いめ。美咲のも甘かったが、適度に甘み控えめで、ジュースのパッケージみたいに一言添えるとしたら大人の味が合っていると思う。美咲の時と一緒で、長い間吸っていたので、ミヤがぐったりとなった。また、プニちゃんがミヤの中に入って、ミヤを『仲間』にしてくれた。頭から赤く小さい角がちょこんと出ている。

「本当にごめん…」

「もぅ、私にも先に教えてよ…。除け者にされてる感じでさぁ…なんか嫌…」

機嫌が悪いときのミヤだ。いたずらされた時と違い、顔が不機嫌で、声に棘がある。

「ごめんって。買ってあるどら焼き食べる?機嫌直してよー」

 ミヤはあんこが入っているものが大好物でよく食べる。機嫌が悪い時の対処法はミヤにあんこを食べさせることだ。

「食べる……」

 すぐに食いついてきた。物で釣っているみたいでミヤには申し訳ないがしょうがない。

 何とかこれでひと段落なのだが、美咲はと言うとベッドに安らかな表情で眠っている。さっき、私に噛みつきたらふく血を飲んだあと、幸せそうな表情で寝ると言って私のベッドで寝てしまった。私の血がそれほどまでによかったのか。私は首を傾げ、寝ている美咲を眺めた。


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