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立花麗4 敷嶋美咲1

「ふーん。可愛いじゃん」

 美咲がプニちゃんを撫でた。

「あ、また飲みたくなってきたかも」

「え?本当?麗なら別に飲んでもいいよ……」

 美咲は何故か頬を染めた。

「いやー、冗談冗談。さっきのでお腹いっぱい。また、飲みたくなったらよろしく」

「そう…」

 少し残念そうな美咲。今度もたっぷり飲ましてもらおう。

「てかさ、さっきプニちゃんが美咲の口に入ったんだけど」

「えっ?私もそれが頭から生えてくるってこと??」

「分からん。でも、目立たないし大丈夫っしょ…。あ、出た」

 美咲の頭から私と同じ茜色の角みたいなものが二つ出てきていた。

「嘘ぉ?」

 美咲は頭に手を当てて確認する。

「まじか…。てことは私も麗の血が飲みたくなったりするかも…」

 スマホのインカメラで頭を確認してから私の方をじっと見る。

「そのときはドンと来い!今日の恩は返す!」

 興味先に迷惑をかけたのだ。血ぐらいいくらでも飲ましてあげる。

「うん…期待しておく…」

 何か期待を込めた視線が私の方に向けられた。その時、部屋のドアが勢いよく開けられた。

「遅れてごめーん!ちょっと準備にてまどっちゃって…。ん…?二人とも何してるの?」

 扉が開き、荷物を持ったミヤが立っていた。肩から先の袖がない白いトップス、黒いショートパンツがミヤお気に入りの短いピンクブラウンの髪にマッチしている。

 勝手に人の家に入ってくるミヤに言いたいことがあったが、ベッドの上で向かい合って座ていた私と美咲は素早くベッドから降りた。

「別に何にもしてないけど…」

「ねー美咲」

 美咲は歯切れが悪い。ミヤの反応を見た。

「うーん…。あ、そうだ!これ、差し入れ!食べよー」

 ミヤは紙袋を差し出す。見たことがある高級お菓子の箱だ。

 ミヤは納得していないようだが、そんなにお菓子が食べたいのか。

「ありがとミヤ。でも、もう七時半だよ。ごはん食べないと。私が作ってもいいけど時間がかかるし、なんか頼む?」

部屋の時計は七時半を指していた。お菓子の前に、夕飯を食べておきたい。

「麗が作ったごはんが良い。世界一美味しいから」

 美咲は私の料理をご所望みたいだ。世界一とは言い過ぎ。

「私もー」

 ミヤが手を上にあげて美咲に続いた。

「じゃあ、残っているもので作るから、あんまり期待しないでね」

「わかった」

「あーい」

 私は二人を残し部屋を出た。

 

Day0 20:49 敷嶋美咲

(美味しいぃぃぃ)

 目をつぶり口の中に意識を集中させた。

 口の中の物を飲み込む前にまたオムライスをスプーンですくった。それを口に運ぶ。口の中でバターが入ったチキンライスと半熟の卵が混ざり合い絶妙な味になる。何度も噛んで、口の中でよく堪能した。

 麗はすごい。いつもは適当というかさばさばした性格だが、料理や裁縫が得意なので家庭な一面もある。この部屋にだって麗が自分で作った『クマゴロー』のぬいぐるみがたくさん置かれている。麗が持っている市販のクマゴローと変わりないできだ。

(麗大好き…)

 一日に何度も心の中でこうつぶやく。

 小さい頃から親から絶対に大学に行かなければいけないと言われていた。それも日本東京大学。日本で一番の大学だ。高校に入ってからも勉強に追われる毎日で友達が出来なかったのは必然だった。

そんな時、声をかけてくれたのが麗だ。私が休み時間も単語帳を開いているのを不思議に思って声をかけてくれたのだ。麗は誰とでも仲良くでき、ルックスも良い。クラスの中心人物だった。初めは、麗との距離を測る様に手探りの会話だったが徐々に打ち解けて、親友にまでなった。

 麗と一緒にいると本当に楽しい。普通に話したり、バカのことをしたりどの時間も一人でいた前までにない充実した時間。

 その理由は麗の人柄にあると思う。物事にこだわらない性格だが、人一倍正義感に強く、面倒見もいい。ああ見えてぬいぐるみとか可愛いものが好きだし、かけがえのない親友だ。

 麗を意識するようになったのは当然ともいえる。こちらの心までもぽかぽかとさせる笑顔、時折見せる物憂げな表情、眠っている時の顔すべてが好きだ。

 そんな麗が今日は朝から調子が悪そうだった。私はただ単純に心配していた。それがあんなことになるなんて。麗が私に飛びかかってきたときは驚きが強かったが、麗も同じだったとしれた嬉しさもあって黙ってその時が来るのを待った。でも、期待とは裏腹に血をも飲まれるなんて。首に噛まれた時から、ボーっと意識が遠のくような浮遊感に包まれ、全身が気持ちよくなった。音もなく私と麗だけの空間。嬉しさのあまり涙を流しながら気を失ってしまったが、最高の時間だった。

 目を覚ますと、泣きながら私に許しを請う麗がいるし。その顔に何かよくないものが目覚めてしまいそう。プニちゃんというものが頭に出来たが、美咲と私だけの秘密。麗のこの言葉が頭を回る。心地良い響き。

 なんて最高な日だ。オムライスを食べながら、私は満面の笑みを浮かべた。




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