1.僕と先生
はじめまして、本嫌いな者です。
私の初めての小説になります。
字に誤りがあるかもしれませんが、最後まで読んでいただけたら嬉しいです(^^)
僕は、窓から外を眺めていた。
ただ一人、誰もいない化学室で染み付いた薬品の匂いを深く吸い込んでは、窓ガラスに吐き出す。あいつらの前では言えなかったことが、窓ガラスを白くして、外の様子を簿かしてしまう。僕はそこに絵を描いた。笑った顔の誰かさん。笑った顔の誰かさんはしばらくすると涙を流した。流れた涙のおかげで、やっと外の様子が見えてくる。適当に描いたはずの絵は、不思議と僕に似ていた。
「泣くなんて、男じゃないなぁ。」
やっと出てきた声は、化学室に小さく響いた。
僕は、窓を開けて身をのり出した。
近くなる木の葉に手を伸ばしてみると、冷たい風が手をなぞり、僕の白い息を運んでいく。どこまで運んで行くのだろう。どうせなら、『あの人』の元へ届いて欲しい。そして、『あの人』の顔に笑った顔を描いてやりたいのだ。
「泣くなんて、先生も、男じゃないなぁ。」
今の僕を見て『あの人』…先生は何と言うだろうか。今の僕だから…、先生の言葉が必要なのに。なぜ、少し前の僕は、先生がいるありがたさに気づけなかったんだろう。
白い息が消えていく、この静かで寂しい景色が今は僕の心の支えだ。
「なぁ、知ってっか?ほら、あの化学の。休職するって話だ。」
「あー、アイツ、うつ病なんだろ?だんだん元気なくなっていったもんな。」
「まじで?じゃあ、いつか自殺とかすんのかな?早く死なねぇかなぁ、俺はアイツ嫌いだったからさぁ。」
「もう死んでるかもよ?私も苦手だったぁ、先生かわいそー。」
僕が通らなきゃいけない廊下、僕が座らなきゃいけない教室には、あいつらが心無い、残酷な言葉を吐き捨てていく。それが僕には白い炎に見えてしまう。
この学校はあいつらの白い炎で、火事なのだ。その火事の中でも、化学室は唯一燃えずに残り続けている。
あいつらの炎は、休職している先生には届かないだろう。届かないで欲しい、だから、風が強くならないでくれ。そう願う僕を炎は狙っているのか、あいつらの言葉は自分に向けられているような感覚になる。
「先生が休職したのは、きっと…僕のせいだ。」
いつしか僕は自分を責めるようになっていた。心あたりがあるとしたら、間違いなく、先生が学校に来た最後の日に僕が言い放った「教師なんか辞めちまえ」という言葉だ。次の日から、先生は学校を休み始めた。
一年前、僕がこの学校に入学して初めての担任が先生だった。先生は明るく、元気で、ハキハキと喋る姿が印象的だったが、時々、ズバズバと尖った言葉を刺してくる人でもあった。その尖り具合は他人への遠慮を知らないものだから、生徒が先生を慕うことは大変珍しかった。きっと、僕は珍しい生徒の一人だったと思う。
「おぉ、おはよう。今日も背が小さいですね、いつになったら君は大人の男になるのかなぁ。まさか、これが最終形態…とか?足も短いし、女子にはモテないだろう。…今日もまさか一人かい?男にもモテないのかぁ。」
こんな感じで先生は通常運転なのだ。普通の人なら、カチンときて当然だろう。でも、僕には憧れだった。自分が思ったことを、思った通りに相手に言い放つことは、どれほどの快感なのか。敵を作ることを恐れない姿は、僕には、男の中の男だったのだ。
「先生、授業がなくても、たまに化学室に来てもいいですか?」
「ぼっちじゃ寂しいか。私はあいにくいつも忙しい、君の話し相手にはならないけれども。」
「別に先生と話したい訳じゃありません。ただ、化学室が気に入ったんです。」
「この薬品くさくて、薄暗い部屋が好きなのか?君は大変な変わり者だな。いいでしょう、静かにして、備品に触らないなら私が許可しましょう。」
僕と先生の距離が縮まった瞬間だった。あの時の先生の優しく暖かい顔を、僕は忘れられない。だから、今、余計に苦しいのかもしれない。
ありがとうございました!
初めての小説で、拙い作品になっているかもしれませんが…、自分の思いつくまま書いてみました。
感想やアドバイス等、よろしくお願いしますm(__)m
そして、次回も遊びに来てくださいね!